アブルッツォの造り手タラモンティ新進ブランド「ディヴェルシタス」突撃インタビュー

2024/07/23

2024/07/11

ロドリゴ レドモンド氏 Mr. Rodrigo Redmont
サルヴァトーレ カンピオーネ Mr. Salvatore Campione

潜在力抜群の産地アブルッツォ州ロレート アプルティーノ!
偉大な造り手の隣で造るタラモンティの新進ブランド「ディヴェルシタス」突撃インタビュー

2001年に創業したアブルッツォの造り手タラモンティ社。拠点を置くロレート アプルティーノは、優良生産者が軒を並べる潜在力を秘めたワイン産地で、タラモンティ社はあの偉大なヴァレンティーニの隣の畑でワインを生産しています。「ディヴェルシタス」は、そんな彼らが単一品種で造る、フレッシュで飲みやすい味わいのカジュアルブランド。アブルッツォに根付く動物がカラフルに描かれており、味わいともに親しみやすいワインです。今回は、タラモンティ社の当主ロドリゴ レドモンド氏(写真右)と、営業部長のサルヴァトーレ カンピオーネ氏(写真左)をお迎えしてお話を聞きました。

偉大な造り手ヴァレンティーニの畑に隣接!
潜在力を秘めた産地ロレート アプルティーノ

2001年創業、1代で100haもの畑を取得
――ボンジョルノ。まずはタラモンティ社について教えてください。

ボンジョルノ。タラモンティ社は、私と妻が2001年に創業したワイナリーです。ワイナリー名は、最初に15haの畑を譲ってくれたタラモンティ家に由来しています。妻の地元アブルッツォ州ロレート アプルティーノを本拠地とし、現在は合計100haにまで畑を広げることができました。

創業する前は、モンタルチーノのバンフィやマルケのファーツィ バッタリアで営業として働き、その後、妻と一緒にワイン輸出に携わる仕事をしていました。その時に絆を深めた人間が、エノロゴや会計担当などで活躍してくれています。

優良生産者が集まる、世界的産地へと飛躍する潜在力
私たちのワインを語る上で欠かせない重要な要素が、ロレート アプルティーノという土地です。あのヴァレンティーニの本拠地でもあり、モンタルチーノやポムロールと同等の価値があると私は信じています。

実は、私たちの畑はヴァレンティーニの隣にあります。何百年もの歴史を持つ世界的な造り手と同じ最高の条件を持った畑です。このエリアには、氷河期の雪が溶けてできた堆積土壌が密集していて、帯のようにまとまった地形となっています。川の両岸にブドウの生育に重要な土壌が堆積しているんです。特に白ワインの生産に適していて、アブルッツォを代表する優良生産者が軒を連ねています。

ヴァレンティーニらと一緒に偉大な産地確立のため活動
――その生産者たちとは?

ヴァレンティーニ、トッレ デイ ベアーティ、デ フェルモ、アモロッティ、チャボリッチです。彼らと協力して私たち6社は、ポテンシャルを秘めた産地を継承するために保護協会を設立しました。将来的に、ロレート アプルティーノだけの原産地呼称を作る活動をしています。

気軽に楽しめる飲みやすさ!
単一品種で造るカジュアルブランド「ディヴェルシタス」

――タラモンティ社から新登場のブランド、ディヴェルシタスについて教えてください。

ディヴェルシタスとは、ラテン語で多様性を意味しています。アブルッツォは温暖で水も豊富なので、他の州では育たない植物もよく育ちます。国立公園が州の35%を占め、欧州最大規模の面積を誇るエリアです。生息する動植物は8000種あると言われています。また、タラモンティ社の男女比率は50対50で、7か国の人種が働いています。私も生まれはアメリカです。そういった背景もあり、「多様性」に着目して名付けました。

普段飲みに最適!
土地と品種の個性を反映させたフレッシュな味わい

味わいとしては、若々しくて飲みやすさがあります。普段飲みや、カジュアルなワインバーで楽しめるワインです。それでいて、しっかりと土地と品種の個性を反映させています。決して尖っていないので、初めてイタリアワインを飲む人には最適だと思います。別ブランドの伝統的なコッレ コルヴィアーノとは対照的ですね。

アブルッツォを象徴する動物が描かれたカラフルラベル
――ラベルも綺麗で印象的です。

一部透明にしたり特殊な印刷を施しています。結構貼るのに苦労するんです(笑)。ラベルとワイン名は地域を象徴する動物を選んでいます。

・ピノ グリージョ「イル ポルポ」
タコ(ポルポ)は、アドリア海の象徴的な生物の一つ。ピノ グリージョと好相性で、アブルッツォでよく食べられます。

・ペコリーノ「ロルソ」
クマ(オルソ)はアブルッツォを代表する動物。同様にペコリーノもアブルッツォを代表することからクマが描かれています。

・チェラスオーロ「ラ ヴォルペ」
キツネ(ヴォルペ)は、畑やワイナリーの近くで何度も見かけるほどアブルッツォに多く生息。イタリア語でずる賢いという意味を持つキツネを、どんな料理にも合わせられるロゼのラベルに採用しています。

・サンジョヴェーゼ「イル ルーポ」
アブルッツォで最も象徴的な動物がオオカミ(ルーポ)です。イタリアのオオカミは大自然と1セットで考えられることが多く、よく取り上げられる動物です。

・モンテプルチアーノ「ラ レプレ」
野ウサギ(レプレ)は、普通のウサギとは違って逃げ足が速いです。モンテプルチアーノは最も消費されるワインなので、止まらないでほしいという願いが込められています。また、野ウサギは幸運をもたらすとも言われています。

フレッシュで瑞々しい果実感のピノ グリージョ

ピノ グリージョ コッリーネ ペスカレージ イル ポルポ

ピノ グリージョ コッリーネ ペスカレージ イル ポルポ

ロドリゴ氏:
「100%ピノ グリージョをステンレスで造る白ワインです。フレッシュでミネラルがしっかりある味わいです。2022年ヴィンテージは雨が少ない乾燥した年でした。夏でも昼夜の寒暖差がしっかりある畑で造っています。ラベルのタコは、アドリア海の象徴的な生物の一つで食用としても有名です。ピノ グリージョとも相性がいいです」
試飲コメント:麦わら色。フレッシュで瑞々しい果実感のある香り。味わいは香り同様にフレッシュで心地よい酸が持続します。飲み心地がよく、気軽に楽しめる味わいです。

長期熟成ポテンシャルを持ち、
複雑な風味が綺麗に溶け合う土着品種ペコリーノ

ペコリーノ アブルッツォ ロルソ

ペコリーノ アブルッツォ ロルソ

ロドリゴ氏:
「ペコリーノはセミアロマティックな品種です。ペコリーノは収量が低く、私たちは1haあたり約7tほどです。他の産地と比較すると、ブルネッロが1haあたり8.5t、ブルゴーニュは7tです。2023年は難しい年でしたが、最終的には素晴らしい出来となりました。一晩だけマセレーションをおこない、ボディと複雑さを引き出しています。熟成ポテンシャルもあり、4、5年は熟成させることができます。リースリングのようなふくよかなニュアンスも現れてきます。ラベルにはペコリーノ同様にアブルッツォを代表するクマが描かれています」
試飲コメント:やや濃い麦わら色。注いだ瞬間に香りが広がります。熟した黄色い果実、新鮮な白い果実、白い花、ハーブの香りが綺麗に溶け合っています。ほどよくフレッシュな酸と華やかさ、ミネラルを感じる複雑な味わい。それでいて柔らかくクリーンで飲みやすさがあります。

厚みとフレッシュさを併せ持つモンテプルチアーノ100%ロゼ

チェラスオーロ ダブルッツォ ラ ヴォルペ

チェラスオーロ ダブルッツォ ラ ヴォルペ

ロドリゴ氏:
「モンテプルチアーノ100%で造るロゼです。チェラスオーロはチェリーに由来する通り、色も味わいもチェリーを想起させます。アルコール度数がしっかりとありながら、ここまでフレッシュで飲みやすく仕上がるのがチェラスオーロです。地元ではラム肉を合わせることが多いですが、基本的には料理を選ばない汎用性の高いワインです。マセレーションは8時間おこなうだけで、この濃い色合いが出ます。色が濃いロザートのほうが、はっきりとしたニュアンスをワインに与えることができ、早飲みしすぎなくてもいいワインに仕上がると確信しています。ラベルのキツネは、畑やワイナリーの近くで何度も見かけるほど多く生息しています。チェラスオーロはどんな料理にも合わせられるので、イタリア語でずる賢いという意味を持つキツネをラベルに採用しています」
試飲コメント:明るいルビー色。赤系果実、ミネラル、若干甘やかな黒系果実やコンポートのニュアンスのある香り。柔らかい口当たり。フレッシュ&フルーティの心地良い味わいです。

完熟果実とフレッシュ果実が織りなす果実味豊かなサンジョヴェーゼ

サンジョヴェーゼ テッレディキエーティ イル ルーポ

サンジョヴェーゼ テッレディキエーティ イル ルーポ

ロドリゴ氏:
「サンジョヴェーゼ100%赤ワインです。トスカーナよりアブルッツォは気温も高く雨が少ないので、紫がかった色合いで果実味をより感じる味わいです。尖っていない味わいで、フランスのガメイやピノ ノワールとニュアンスが似ています。このサンジョヴェーゼもロゼと同様に料理を選びません。BBQなどのしっかりした肉料理にも負けません。日本の焼き鳥にもいいですね。尖ったタンニンをまろやかにするため、古い大樽で3ヶ月間熟成させています。イタリアでは、オオカミは大自然と1セットで考えられることが多く、よく取り上げられる最も象徴的な動物です」
試飲コメント:ルビーよりの紫色。熟した黒系果実やフレッシュな赤系果実が溶け合う果実味豊かな香り。口当たりは軽やかで、心地よい果実味と柔らかさに満たされます。

濃密な果実感とエレガントな風味に満たされるモンテプルチアーノ ダブルッツォ

モンテプルチアーノ ダブルッツォ ラ レプレ

モンテプルチアーノ ダブルッツォ ラ レプレ

ロドリゴ氏:
「アブルッツォの主要品種、モンテプルチアーノ ダブルッツォです。濃い色合いとタンニンが特徴的です。大樽で6ヶ月間熟成していて、チョコレートやコーヒーのような木樽のニュアンスを唯一感じるワインですね。アブルッツォの伝統料理だけでなく、ピッツァのフリットなど多種多様な料理と合わせることができます。野ウサギ逃げ足が速い動物で、商品として最も動くモンテプルチアーノが止まらないでほしいという願いを込めて、野ウサギをラベルに採用しました。また、野ウサギは幸運をもたらすとも言われています」
試飲コメント:ルビー色。濃密な黒系果実を感じるフレッシュかつエレガントな香り。リッチな果実味が口中に広がり、あとから少し黒コショウのようなスパイシーさが現れます。それらと一緒にタンニンが綺麗に溶け合い、心地よい余韻を演出します。

インタビューを終えて

2001年に創業し、わずか20年余りで畑を100haにまで広げたタラモンティ社。ロドリゴさんと奥様が1代でそこまで築き上げたと知り、大変驚きました。その背景には、ロレート アプルティーノへの可能性を信じて高品質ワインを生産するという強い思いがあるのだと実感しました。また、「ヴァレンティーニの隣」というお話があったように、今後さらに品質と評価を高めていくであろう、彼らのワインのこれからが非常に楽しみになりました。ロレート アプルティーノだけの原産地呼称も楽しみです。

ディヴェルシタスのワインは、まずカラフルな動物ラベルが目に留まります。実際に試飲すると、フレッシュで飲みやすい綺麗な味わいです。ラベル、味わいともに親しみやすさがありました。ロドリゴさんもおっしゃるように、普段ワインを飲まない方にも最適だと思いました。季節を問わず、ホームパーティなどに彩を与えてくれること間違いなしです。特に土着品種ペコリーノは、フレッシュさ、華やかさ、柔らかさ、クリーンな味わいが溶け合っていて素晴らしかったです。