2024/08/08
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ヨセフ ローメン氏 Mr. Josef Romen
アルト アディジェ最大のメトド クラシコ生産者!
計300区画の畑の個性を反映したバラエティ豊富なワイン
「ケットマイヤー」突撃インタビュー
1919年創業、アルト アディジェの歴史的名門
合計300区画の畑で生み出す幅広いラインナップ
ケットマイヤーは、第一次世界大戦後の1919年、ジュゼッペ ケットマイヤーが創業したワイナリーです。現在のカルダーロに拠点を移したのは1930年代のこと。ジュゼッペから息子のグイド、孫のフランコへと受け継がれてワイナリーは発展していきました。1970年代からは、それまで注力していた「量」から「質」へと転換し、畑の価値やワインの品質を重視するようになりました。
100年続く契約畑も!
標高は最高1000mにも及ぶ合計300区画の畑
私たちの畑は、アディジェ川を挟む丘陵地に点在しています。自社畑が10ha、契約畑が60haです。100年近く付き合いのある農家の畑もあります。区画の数は、およそ250~300ほど。標高1000mの畑もあります。アルト アディジェの標高は1500mまでありますが、ブドウ栽培に適しているのは200~1000mです。
1区画に1品種。標高の違いが生むバラエティ豊富なワイン
アルト アディジェは面積は広くないものの、標高も異なるためバラエティに富んだブドウ(ワイン)ができます。現在、アルト アディジェでは約25種のブドウが栽培されており、私たちは1区画に1品種という形で、その区画に最適なブドウを栽培しています。
200mの温暖な場所はメルローやラグレイン。500~600mの場所ではフレッシュさやアロマが引き出されるので、ピノ ビアンコやミュラー トゥルガウ。それ以上の高い場所では、主にスプマンテ用のブドウ(シャルドネ、ピノ ネロ、ピノ ビアンコ)を造っています。
ケットマイヤーの3つのライン
「メトドクラシコ」「クラシック」「セレクション」
それらのブドウやテロワールの個性を表現したラインが3つあります。メトド クラシコ、単一品種のクラシックライン(ラーゴ ディ カルダーロはブレンド)、特別なフィネスや深みを持つ上級のセレクションラインです。
左から2本ずつメトドクラシコ、クラシック、セレクション
アルト アディジェ最大のメトド クラシコ生産者
最優秀イタリアンスパークリングワイン受賞の実績
私たちは、1964年にシャルマ方式でのスプマンテを造り始めました。メトド クラシコの生産は1992年からです。近年は、よりメトド クラシコに力を入れていて、アルト アディジェで最も多く生産しています。アルト アディジェのメトド クラシコの年間生産本数は合計50万本で、私たちはその約半数の23万本です。
香り高くフレッシュな酸が生まれるスプマンテ産地アルト アディジェ
年間生産本数が2000万本のフランチャコルタや、1500万本のトレントDOCと比べると小規模ですが、アルト アディジェもスプマンテに適した産地であることをご存じでしょうか。酸を保つために早めに収穫する産地もあるなかで、ここではそういったことをする必要がありません。
500m超の標高で寒暖差が大きく、ブドウがしっかり成熟した状態でも香り高くフレッシュな酸が保持できます。アルト アディジェと言えばスティルワインが有名ですが、ケットマイヤーのワインは半分がスプマンテです。
ブドウ本来の酸が引き出されたフレッシュで心地よい味わい
私たちは、そのブドウ本来の酸をそのまま引き出すために、スプマンテ生産においてはマロラクティック発酵はおこなっていません。つまり、リンゴ酸の存在が重要だと考えています。それによって、ケットマイヤーのスプマンテはフレッシュで心地よい味わいに仕上がっています。
『シャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権』
最優秀イタリアンスパークリングワイン受賞
アルト アディジェの土地を本質的に表現するピノ ビアンコ
スティルワインとして造られるシャルドネ、ピノ ネロ、ピノ ビアンコは、スプマンテにとっても重要な品種です。私たちの栽培割合で言えばシャルドネ28%、(ピノ グリージョ25%)、ピノ ビアンコ15%、ピノ ネロ15%と多くを占めています。
特にピノ ビアンコは、私たちのテロワールを本質的に表現する上でも非常に重要です。アルト アディジェ特有のフレッシュさとミネラル感が特徴です。昨今、シャルドネを多用する産地が多いなか、これほどピノ ビアンコの使用割合が高いスプマンテ産地はありません。
地元アルト アディジェで愛される多種多様なブドウ品種
――そのピノ ビアンコをはじめ、多種多様な品種が造られるアルト アディジェで一番飲まれるワインは何ですか?
昼くらいまでなら白ワインも飲まれていますが、午後になったら赤ワインが多いと思います。特に多くの人が飲んでいるのは、あらゆるシチュエーションで楽しめるピノ ビアンコ、エレガントなピノ ネロ、軽やかなスキアーヴァです。若い人はスプマンテを良く飲んでいる印象です。昨今の暑さもありますしね。
ワインの重要性を示した鳥のラベルデザイン
――ラベルデザインの鳥について教えてください。ワイン(品種)によって色付きの鳥の位置が違います。
各ワインの試飲順や重要性を示したポジションを意味しています。クラシックラインでは、私たちのテロワールを表現する上で欠かせないピノ ビアンコが1番目。それからシャルドネ、ピノ グリージョなどの白ワインから赤ワインへと続いていきます。
繊細で丸みのある心地よい酸!
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ブリュット アテシス |
ヨセフ氏: 「ブリュット アテシスは約90%のシャルドネとピノビアンコに、ピノ ネロをブレンドしています。私たちは、ここの土地を最も本質的に表現できるピノ ビアンコを大切にしています。ピノビアンコは扱うのが難しい品種で、油断すると苦味のようなものが出てきてしまいます。正しい場所で栽培して、ソフトプレスなど適切な醸造をすることで、ケットマイヤーのスプマンテができます。2021年は涼しい年でフレッシュな味わいに仕上がっています。2020年は2021年に比べると暑い年でしたが、鮮やかで第一アロマがしっかり出てています」 |
試飲コメント:麦わら色。白い果実、トースト香、少しの柑橘系の香り。繊細でフレッシュな果実感が広がる味わい。丸みのある酸が心地よく、果実味とともに長く持続します。 |
エレガントなベリー系果実!
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ブリュット ロゼ アテシス |
ヨセフ氏: 「シャルドネとピノ ネロを半分ずつブレンドして造るスプマンテ ロゼです。法律的にロゼを造るにはピノ ネロは10%以上と決まっていますが、私たちは50%使用しています。少しだけマセラシオンをして色を抽出しています。シャルドネは通常の造りをしてワインにしてから第二次発酵をします。最終的にピノ ネロのモストを加えて色合いを調整しながら造っていきます」 |
試飲コメント:ピンク色。赤い果実とトースト香が広がるアロマ。香り同様の味わいで、ベリー系果実の甘みをわずかに感じます。フルーティな味わいにハーブや旨みのニュアンスもあります。 |
優美で濃縮した酸が際立つシャルドネ100%パドゼ |
メトド クラシコ パドゼ |
ヨセフ氏: 「パドゼは2015年に初めてリリースした、ケットマイヤー最新のワインです。2018年はシャルドネ100%で造った最初の年です。酵母とともに40ヶ月間寝かせて造っています。残糖値はゼロですが、シャルドネ自体の飲みやすさやストラクチャーが与えられています」 |
試飲コメント:黄金よりの麦わら色。トースト香、フレッシュ&フルーティながらも凝縮感のある香り。香り同様の味わいに、優美かつ濃縮した酸が特徴的です。 |
【クラシックライン】
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ピノ グリージョ アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「標高220m前後くらいの丘陵地で造るピノ グリージョです。ソフトプレスをしてからステンレスタンク100%で醸造させたフレッシュなワインです。アルコール度数は、毎年13から13.5%くらいはあります」 |
試飲コメント:黄金に近く輝く麦わら色。ブドウを丸ごとほお張ったようなフレッシュ&フルーティで華やかな香り。味わいは香り同様で新鮮で華やか。心地よい酸と若干の苦みが溶け合うバランスに優れた味わいです。 |
【クラシックライン】
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シャルドネ アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「標高220m前後くらいの丘陵地で造るシャルドネです。500mくらいの畑も使用しています。シャルドネらしいバナナの香り、黄色いリンゴのようなニュアンスがあります。自分たちのアルト アディジェのシャルドネらしいニュアンスが出ていますね。ステンレスタンクのみで造っています」 |
試飲コメント:黄金に近く輝く麦わら色。バナナやリンゴ、黄色い完熟果実の香り。柔らかい口当たりで、フルーティな味わいです。苦みと若干のスパイス感が後からやってきます。 |
【上級セレクションライン】
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マゾ ライナー シャルドネ アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「標高およそ400mにある単一畑で造る上級シャルドネです。マゾライナーの畑は5.8haあり、そのうちシャルドネは2haです。収量は低く、しっかり熟したブドウを使用しています。定期的にバトーナジュをしながら、木樽で11ヶ月熟成させています。ワインに複雑味と長期熟成ポテンシャルを与えるために木樽を使用しています。かつ、アルト アディジェのシャルドネ本来のフレッシュさも保つように仕上げています」 |
試飲コメント:黄金色。香りはパイナップルやバナナなどの南国果実、バニラや生姜などのスパイス、樽のニュアンス。柔らかい口当たりながら、力強く複雑な味わいで、しっかりとした味わいの余韻が長く持続します。 |
【クラシックライン】
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ゲヴュルツトラミネール アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「ゲヴュルツトラミネールは、このエリアの中で最もアロマティックな品種です。アルト アディジェを象徴するような品種でもあります。畑の標高は300~600m。香り高いアロマを引き出そうとすると、しっかりと成熟させる必要があるため、平均的に度数は14度前後と高めになります。ステンレスタンクで100%で醸造され、ボトリングするまで澱と一緒に寝かせています」 |
試飲コメント:濃い麦わら色。濃厚なハチミツ、ライチが香る華やかで甘やかな香り。香り同様のライチのニュアンスが口中に広がる豊かな味わい。 |
【クラシックライン】
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ピノ ネロ アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「ピノ ネロは、アルト アディジェで最も栽培されている黒ブドウ品種です。このピノ ネロの畑は、標高の低いところですが、寒暖差があるような場所です。品種由来の色合い、香り、エレガンスを表現することを意識しています。収穫したら、1日だけ部屋の中に保管して翌日除梗し、果皮と一緒に発酵させます。マセラシオンで色と香りを抽出したあと、20~25度くらいで発酵させます。マロラクティック発酵後、7~8ヶ月間、一部大樽、一部バリックで熟成させています」 |
試飲コメント:透明感のあるルビー色。ベリーなどの赤系果実やわずかにブルーベリーのようなニュアンスが香るエレガントな香り。口当たりは柔らかく、酸、果実味、わずかなタンニンが溶け合った優美な風味が長く持続します。 |
【上級セレクションライン】
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マゾ ライナー ピノ ネロ アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「単一畑で造る上級ピノ ネロです。マゾライナーの畑は5.8haあり、そのうちピノ ネロは1haです。標高380~400mで西向き、石灰と粘土が入り混じる根が深くまで根付く土壌です。バリックとトノーで18ヶ月間熟成させています。森の果実系の香りやエレガンスを持つ、長期熟成ポテンシャルを秘めたワインです」 |
試飲コメント:透明感のある淡いルビー色。赤い果実、バラが香る繊細なアロマ。徐々に完熟果実やスパイスのニュアンスが現れます。口当たりも繊細で、バランスに優れた果実と酸に加え、旨味を伴った味わいが染みわたります。 |
【クラシックライン】
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ラグレイン アルト アディジェ |
ヨセフ氏: 「ラグレインはアルト アディジェの典型的な土着品種です。標高200mの低い場所で造っています。スミレや果実香があり、ストラクチャーがありながらも、柔らかく滑らかなタンニンが特徴的です。醸造は、1週間くらいマセラシオンをし、発酵、マロラクティック発酵をしたあとに大樽で熟成させています。アルト アディジェの典型的な赤身肉と相性がいいです」 |
試飲コメント:紫色に近い濃いルビー色。ジャムや潰した花のような濃密な香り。スミレのニュアンスとスパイス感が口中に広がるなめらかな味わい。しっかりした骨格が心地よい余韻を演出します。 |
インタビューを終えて
「標高も異なるためバラエティに富んだワインができる。各区画に最適なブドウを1品種ずつ栽培している」とヨセフさんが話すように、10種のワインの個性を存分に堪能しながら飲み進めることができました。
品種の違いはさることながら、ラインの違いも最後まで堪能できた大きな要因です。シャルドネとピノ ネロの上級ライン「マゾ ライナー」は、クラシックラインと同じ方向性ながらも長期熟成力を感じる逸品でした。ぜひ2つのラインを飲み比べていただきたいです。