2024/10/25
/
サヴェリオ デ ルカ氏 Mr. Saverio De Luca
アレグリーニ元当主マリリーザ・アレグリーニ女史が銘醸地で手がける偉大なトスカーナワイン!ボルゲリTOP5の所有面積を誇る「ポッジョ アル テゾーロ」&標高450mのエレガンスを追求するモンタルチーノ「サン ポーロ」突撃インタビュー
マリリーザ・アレグリーニ女史がトスカーナで
築き上げてきた2つのワイナリー
——お久しぶりです。本日はよろしくお願いいたします。
前回の訪問は2018年でしたね。本日は、私たち「マリリーザ・アレグリーニ グループ」が所有するワイナリーを紹介したいと思います。その前に一つ重要なことをお伝えします。マリリーザは、アマローネの造り手「アレグリーニ」の所有権を甥たちに譲り、アレグリーニを離れています。
そのため、現在、トスカーナでは2つのワイナリーを手掛けています。2001年創業のボルゲリ「ポッジョ アル テゾーロ」、2007年創業のモンタルチーノ「サン ポーロ」です。また、新しいプロジェクトとして、ヴァルポリチェッラの「ヴィッラ デッラ トッレ」が始まろうとしています。
最高権威マスター・オブ・ワインのアンドレア・ロナルディ氏が参画
マリリーザ・アレグリーニ グループは家族で運営しています。マリリーザがオーナー、夫ジャンカルロはディレクター、二人娘のカルロッタとカテリーナはバイスプレジデントです。そして、イタリアで3人しかいないマスター・オブ・ワインの資格を持つアンドレア・ロナルディが今年5月から加わりました。みなさんもアンドレアのことをよく知っていると思います。彼にトスカニーに行く話をしたら「よろしく伝えておいて」と言伝をもらってきましたよ(笑)。
ボルゲリTOP5を誇る畑の所有面積
革新的で最高品質のワインを生み出す「ポッジョ アル テゾーロ」
ゼロからの植樹でスタートしたワイン造り
マリリーザと兄ヴァルテルは「いつかゼロからワイナリーを始めたい」という共通の思いを持っており、二人はヴァルポリチェッラ出身ながらもトスカーナに大変魅了されていました。すると、ちょうどその頃、アンジェロ・ガヤがカマルカンダを取得したことを知り、自分たちもボルゲリで小さな土地から始めようということで進出を果たしたのです。
しかし、ヴァルテルは2003年にこの世を去ってしまいます。アグロノモだった彼は、「どこにヴェルメンティーノを植えようか」「どこにカベルネ ソーヴィニヨンを植えようか」と思いを巡らしていましたが、一度もポッジョ アル テゾーロのワインを飲むことなく、その生涯を終えてしまいました。マリリーザはそのヴァルテルの記憶を胸に、現在に至るまで最高品質のワインを造り続けています。
アンティノリやサッシカイア、オルネッライアなどに次ぐ規模感
ゼロからの植樹で始まったポッジョ アル テゾーロは拡大を続け、100haの規模に達しています。現在、ボルゲリには73の生産者がいますが、その中で8社が全体の85%の畑を所有しており、私たちはアンティノリ、サッシカイア、オルネッライア、アルジェンティエラに次ぐ5番目の規模を誇っています。
偉大な造り手と並び合う丘側と海側の畑を所有
畑は4箇所あり、丘側の畑と海側の畑に分けることができます。丘側(1番、2番)は石が多い土壌でカベルネ ソーヴィニヨンに最適です。このエリアは、サッシカイアやオルネッライア、マッセートに近い位置でもあり、ボルゲリの中でも優れた場所として知られています。フラッグシップの「ソンドライア」は、そのオルネッライアの近くで造っています。海側(3番、4番)は粘土と砂質土壌でヴェルメンティーノやメルローに最適です。
トスカーナの偉大な白ワインの先駆け
ボルゲリNo.1の座に輝いた「ソロソーレ」
私たちがボルゲリに進出した時は、すでにボルゲリは偉大な赤ワイン産地として知られていました。そのため、マリリーザは、赤ワインは既存の造り手から学びを得ようとした一方で、「これまでにない偉大な白ワインを造ること」も心に決めました。すると、彼女はエノロゴとともに、「フルーティで優れた骨格と酸、長期熟成力を持つ白ワイン」の生産に取り掛かり、コルシカ島のヴェルメンティーノクローンをボルゲリに植えました。
そこで生まれたのが「ソロソーレ」でした。ソロソーレは、ステンレスタンクのみで造る、長期熟成ポテンシャルを持つワインです。ファーストヴィンテージの2007年は今でも飲むことができ、リースリングのような味わいに変貌を遂げています。そして、マリリーザの方針通り、ソロソーレはトスカーナで最初の偉大な白ワインの1つとされるまでになりました。『ジェームズサックリング』が2024年に評価したボルゲリの白ワインの中で、最も高い評価を得ています。
いち早く造り始めたカベルネ フラン100%赤ワイン
実は私たちは、カベルネ フラン100%を先駆けて造ったワイナリーの1つです。マリリーザは、ヴァルテルに捧げるワインとしてカベルネフラン100%の「デディカート ア ヴァルテル」を2003年に造りました。これは、レ マッキオーレのパレオ ロッソ(2001年からカベルネフラン100%)に次ぐワインです。レ マッキオーレで活躍した醸造家ルカ・ダットーマとともに造り上げました。彼は現在も私たちのコンサルタントを担っています。
サンジョヴェーゼのエレガンスを追求
モンタルチーノの美しい景観が広がる「サン ポーロ」
太陽の光をたくさん浴びる標高450mの畑
カンティーナ一帯に根付くバラエティ豊富な土壌
モンタルチーノは、北西、北東、南東、南西と4つのエリアに分けることができます。エリアごとに異なる特性を持ちますが、私たちは南東エリアに位置しています。この地域は日照量が豊富です。と同時に、サン ポーロの畑は標高450mにあり、ブドウの成熟に理想的な昼夜の寒暖差があります。
また、畑は8つの区画に分かれていて個性は様々です。全て同じ丘にありますが、土壌や斜面が異なります。その特性を活かすために、各畑のブドウは別々に醸造しています。
サンジョヴェーゼ本来のエレガンスを表現
「もはやクリュとも言える」ロッソ ディ モンタルチーノ
サンポーロのワインは、全てサンジョヴェーゼ100%で造られています。IGTのルビオ、ロッソ ディ モンタルチーノ、アンフォラ熟成のヴィーニャ マッソ、そして4つのブルネッロ ディ モンタルチーノ(アンナータ、リゼルヴァ、クリュ2種)です。今回は、特にロッソ ディ モンタルチーノについて考えてみたいと思います。
例えば、(産地としての)ヴァルポリチェッラでは、生産量の少ないアマローネを頂点にしてピラミッドが形成されます。アマローネを支えるのは生産量の多いヴァルポリチェッラDOCです。そして、一般的にはアマローネのほうが評価が高いですよね。しかし、モンタルチーノの場合、ブルネッロのほうが生産量が多いため、逆ピラミッドが形成されます。モンタルチーノ全体で2000haの畑がありますが、そのうち1200haがブルネッロです。
サン ポーロでは、ブルネッロ同様にロッソ ディ モンタルチーノも特別に重点を置いています。もはやクリュとも言えるような形でヴィーニャ ロッサとヴィーニャ ドリエンテを専用の畑として3ha所有しています。サンジョヴェーゼ本来の素晴らしいエレガントさが表現されます。マリリーザも大好きなワインの一つで、ビジネスランチではよく、ボルゲリのソロソーレと一緒に提供している一本です。
『ワインスペクテーター』TOP 100に選出のロッソ ディ モンタルチーノ
昨年、私は「読み間違えかもしれないですが、ロッソ ディ モンタルチーノが『ワインスペクテーター』のTOP 100に入っています」とマリリーザとエノロゴに連絡したんです。すると、マリリーザはすぐに確認して、本当にTOP 100の72位にランクインしていることがわかりました。『ワインスペクテーター』は、バローロやブルネッロ、アマローネなどの高級銘柄を評価するので、いわゆる2番手のワインは選ばれません。しかし、ロッソ ディ モンタルチーノがブラインドテイスティングでトップ100に選ばれるという偉業を成し遂げたのです。
ボルゲリ最高評価を受ける偉大な白ワイン |
ソロソーレ |
サヴェリオ氏: 「ソロソーレは太陽だけという意味を持つ白ワインです。ソロソーレはステンレスタンクで造られていますが、熟成ポテンシャルは非常に高く、2007年ヴィンテージもいまだに楽しめるほどです。夜に収穫したブドウを冷蔵庫で冷やし、5度になったタイミングで醸造を始めます。この工程がアロマを長期間保つことを可能にしています。マリリーザが大好きな一本でもあり、彼女は私たちスタッフに“売れ残っても心配しないで。私が飲むから(笑)”と冗談を言うほどです」 |
試飲コメント:麦わら色。注いだ瞬間に、黄色い果実や熟した果実のジューシーな香りが広がります。スワリングすると、桃や南国果実のニュアンスが現れ、ミネラル感もあります。口中にフレッシュで鋭い酸が広がり、同時にミネラルと塩味がやってきます。フレッシュな黄色い果実とレモンなどの柑橘系と溶け合う酸が最後まで持続します。後味には若干の苦味があります。 |
ファーストリリース直後から『デカンター』98点獲得
|
イル セッジオ |
サヴェリオ氏: 「セッジオは、フラッグシップのソンドライアが難しかった2014年に新たなセカンドワインとして生まれたワインです。そのファーストヴィンテージの2014年は、リリース後わずか2ヶ月で『デカンター』で98点を獲得しました。セッジオという名前は、丘から海に向かって流れる小さな川に由来していて、エチケットにはその川の流れが描かれています。品種構成は、メルロー50%、カベルネ ソーヴィニヨン20%、カベルネ フラン20%、プティ ヴェルド10%です。メルローは海側の畑、カベルネは丘側の畑です。ボルゲリらしい果実味に加えて骨格と力強さを備えています。非常にコストパフォーマンスにも優れているワインです」 |
試飲コメント:濃いルビー色。熟した赤い果実と甘さを伴ったスパイスと黒胡椒などを感じる香り。味わいは香り同様で統一感があります。柔らかく甘さのあるタンニンが、深みと持続性のある豊かな果実味を引き立てています。力強さ、複雑さが同程度で非常に優れたバランスがあります。 |
全ての要素が調和した複雑性とエレガンス
|
ソンドライア |
サヴェリオ氏: 「ソンドライアはフラッグシップワインで、カベルネ ソーヴィニヨン65%、メルロー25%、カベルネ フラン10%のボルドーブレンドです。畑はオルネッライアに近い丘に位置しています。セカンドワインのセッジオがフルーティさを特徴とする一方で、ソンドライアはバルサミックでハーブ、ベジタブル感を感じられる複雑で洗練されたスタイルです。非常にバランスに優れていて、ボルゲリ スペリオーレらしい力強さとエレガンスを兼ね備えています。評価も高く、『ジェームズサックリング』で97点を獲得し、トレビッキエリ受賞歴は7回あります。醸造はフレンチバリックで18ヶ月間熟成させ、半分が新樽、残りが2年目の樽を使用しますが、木のニュアンスを強調しすぎないようにしています。バニラやタバコ、コーヒーの要素は控えめで、目指すのは全ての要素が調和した完成度の高いワインです」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。力強く複雑な香り。フレッシュな果実、バルサミコのニュアンスと爽やかなグリーンノートも感じられます。味わいは香り同様の要素を持ち、後味にはバターのニュアンスが現れます。綺麗にまとまったスパイスとタンニンの余韻が持続します。 |
フルーティでエレガンス!
|
ロッソ ディ モンタルチーノ |
サヴェリオ氏: 「ロッソ ディ モンタルチーノは、当主マリリーザが愛するワインの一つです。トスカーナのサンジョヴェーゼの個性が見事に表れています。フルーティでスパイシー、そして何よりエレガントです。私自身、フィレンツェで生まれ育った経験から、このワインこそが伝統的なトスカーナのサンジョヴェーゼを体現していると思っています。熟成は大樽で1年間。木のニュアンスを控えめにし、果実味の生き生きとした特徴とエレガントさを際立たせています。もはやクリュとも言えるようなワインで、隣り合ったヴィーニャ ロッサとヴィーニャ ドリエンテの2つの畑でできています」 |
試飲コメント:淡いガーネット色。香りは赤い果実と黒い果実が入り混じり、凝縮感もあり爽やかで華やかさも感じられます。非常に広がるアロマがあります。口に含むと、果実味とフレッシュな酸が感じられ、その果実感が繊細なタンニンと黒系果実が一緒に持続します。全体的に非常に優れたバランスがあります。 |
エレガントさと伝統的なトスカーナの魅力を表現
|
ブルネッロ ディ モンタルチーノ |
サヴェリオ氏: 「ブルネッロ ディ モンタルチーノは、最も熟成期間が義務付けられているワインの一つです。標高450mに位置する畑で造られており、フルーティな果実味に加え、第三のアロマはもちろん、エレガントさと伝統的なトスカーナの魅力が完璧に表現されています。トノーや10hl、20hlなどの、3種類の異なるサイズの木樽で熟成し、木のニュアンスを抑えて、果実のエレガントさを引き立てています。2年間の樽熟成と2年間のボトル熟成を経て、収穫から5年後の1月にリリースされます。収穫後にブドウの特性を見極めるので、ヴィンテージによって樽の比率は異なります。暑い年はトノーを増やし、涼しい年は大樽を増やします。2019年は、偉大なヴィンテージでした。夏は適度に暑く、春には雨が生育を助け、収穫期の9月末から10月には涼しく乾燥した気候が続きました。その結果、非常に良質なブドウが収穫され、2016年や2015年と並ぶ素晴らしい年となりました」 |
試飲コメント:美しく輝くガーネット色。香りは力強く複雑ながらも上品です。スミレ、赤い果実、黒い果実の豊かなアロマが広がります。味わいは香り同様に力強さと複雑さがあり、とりわけ優美な果実味が印象的です。タンニンはしっかりしていますが、滑らかさもあり、心地良い余韻が長く持続します。香り味わいともにエレガントで深みがあります。 |
インタビューを終えて
マリリーザ女史は、アレグリーニを離れ、トスカーナのワイナリーに加えて新たに「ヴィッラ デッラ トッレ」のプロジェクトに注力しています。そのような中、マスター・オブ・ワインのアンドレア・ロナルディ氏を迎えたことで、彼女たちのワインにどのような良い影響がもたらされるのか非常に楽しみです。