イタリア白ワインの宝庫フリウリで最も歴史あるワイナリー「アテムス」突撃インタビュー

2024/12/03

2024/10/15

アルベルト オレンジャ氏 Mr. Alberto Orengia
ヴァン ホン ドアン氏 Ms. Van Hong Doan

イタリア白ワインの宝庫フリウリで最も歴史あるワイナリー!コッリオ、イゾンツォのエリアを見事に表現する、洗練されたワインを生み出す「アテムス」突撃インタビュー

フリウリで最も長い歴史を持つアテムス家を起源とする造り手「アテムス」。創業者のドグラス アテムス伯爵はイタリアの白ワインの素晴らしさを世界へ広めた人物です。2002年からはフレスコバルディ グループに加わり、今なおフリウリで高品質な白ワインを造り続けています。今回はマルケージ フレスコバルディ社から太平洋アジア担当輸出部長のアルベルト オレンジャ氏、デジタル マネージャーのヴァン ホン ドアン氏にお越しいただき、アテムスの位置するコッリオDOC、イゾンツォDOCについて、またそこでできるワインの個性についてお話を伺いました。

アテムスとフレスコバルディの関係

アテムスは1106年から続く長い歴史のある家系で、1960年代には本格的にワインを造っていた古いブランドです。創業者のドグラス アテムス伯爵はコッリオの生産者組合の創設メンバーで、代表も務めた人物です。コッリオDOCの認定に貢献したことからも、アテムスはイタリアワインの白ワインは素晴らしいということを世界に知らしめたワイナリーのひとつと言えます。

1970年代、アテムス家の子息がフィレンツェでブドウ栽培について勉強していた時にフレスコバルディ家にお世話になっていた、というのがアテムスとフレスコバルディの関係の始まりです。

その後、彼はフィレンツェからワイナリーに戻りアテムスをより大きくしようとしていたのですが、時が流れ90年代頃になると「自分だけでの力では限界がある」と思うようになりました。彼の子どもはワイン造りに関心がなかったので、そのタイミングでフレスコバルディー家がワイナリーを引き継ぐこととなり、2002年にフレスコバルディ グループに加わりました。

プレステージなワインを生む「コッリオ」と肥沃な「イゾンツォ」

場所はフリウリのコッリオDOC、イタリア白ワインの重要な産地に位置しています。畑はコッリオDOC以外にイゾンツォDOCにもあります。この二つのDOCはとても近いのですが、全く異なる土壌です。アテムスの畑は二つのDOCをあわせて40~45ヘクタールほどあり、コッリオが60%、イゾンツォが40%という割合になります。
コッリオとイゾンツォのマップ

イゾンツォの方が肥沃なのでブドウはたくさん造れます。コッリオの方はよりプレステージなワイン用のブドウが出来上がります。土壌のタイプも違っていて、イゾンツォは丸い石と砂利が混ざる土壌、コッリオは「ポンカ」と呼ばれる砂と粘土の混ざったような土壌です。
※コッリオ地区は丘が多く、5千年前の海底隆起による砂や石灰を含み「ポンカ土壌」と呼ばれています。泥灰土と砂利が混じってミルフィーユ上になった柔らかい土壌は、水はけがよく、保水性もあり、ブドウの生育にいい影響を与えています。
ポンカ土壌
(画像:コッリオのポンカ土壌)

ワイン造りに影響を与える3つの要素

このエリアを説明する上で重要な要素が3つあります。

一つ目は背後にそびえるアルプス山脈。このおかげで暑い夏でも涼しい風が吹き、昼夜の寒暖差が生まれます。

二つ目はイゾンツォ川。この川のおかげで涼しい空気が保たれます。土壌は先ほど説明した通り丸い石と砂利といった水はけのいい構成で、ワインはスレンダーで涼やかな雰囲気をまとうことになり、がっしりした一般的なコッリオのワインとは異なるタイプのワインが生まれます。

三つ目は海に近いことです。地中海性の気候で、直射日光に加え、海に反射した日光が十分すぎるほどの日照を畑に与えます。その結果、しっかりと成熟し、凝縮感のあるブドウが育ちます。
山脈川海

ヴァカンスを過ごすように気軽に飲んでもらいたい「ラマート ピノ グリージョ」

本日1本目に飲んでいただく「ラマート ピノ グリージョ」は、白ワインの製法で造ってはいますが、果皮からの色、いわゆる「ラマート=銅色」がしっかり出てきます。普通の白ワインに比べると色味が少し強くなります。

これはコッリオDOCとイゾンツォDOCのブドウをブレンドしているのでフリウリDOCになります。

ラベルにはヴェネツィアでヴァカンスを楽しむ女性の絵が描かれています。「気軽に飲んでね」というメッセージを込めています。ヴェネツィアをテーマに毎年変わるこのアートラベルはイギリスの現代アーティストに描いてもらっています。今回試飲いただいている2022年ヴィンテージでこの手のシリーズ(ヴェネツィアを回ろう)は終わりになり、2023年からはクラシックな印象のラベルに変わります。いつまでもヴァカンスはやっていられないというのもあります(笑)。アテムスのブランドイメージに寄せていくことになります。
ラマートとヴェネツィア

アテムスの最高峰クリュ「チチニス」

ラマートがアテムスのワインの導入だとすると、次に飲むチチニスは頂点に位置するワインになります。チチムスとはコッリオDOCにあるクリュの名前で、その畑は100%ソーヴィニヨンブランが植えられています。

一部大樽を使っているのですが、卵型のセメントタンクで熟成をさせていきます。収量も非常に抑えて、厳選したブドウから造っています。
卵型セメントタンク

アテムスは今日試飲する2本以外にも白ワインを造っていて、クラシックシリーズのピノ グリージョ単一、ソーヴィニヨン ブラン単一のワイン。コッリオDOCでリボッラ ジャッラから造る「トレベス」。この「トレベス」は特にソムリエさんたちから好評です。それらのワインも手に取っていただけたら嬉しいです。

ではテイスティングしていきましょう。

白桃やメロンの香り
伝統的製法で造る美しい銅色(ラマート)のピノグリージョ!

ピノ グリージョ ラマート 2022

ピノ グリージョ ラマート 2022

アルベルト氏:このワインは、フルーティーさ、花のフローラルなアロマを保つためにステンレスタンクで醸造しています。典型的なピノグリの香りがします。成熟した果実、例えばグレープフルーツやしっかり熟したリンゴ、トロピカルフルーツなど。

ピノグリ自体の酸は中~高程度で、さわやかさ、フレッシュさが印象的です。お隣のヴェネトのピノグリに比べると、より味わいがはっきりしています。口に含むとまろやかで、香りの通りグレープフルーツのニュアンス。後味にはアーモンドやクルミなど、ナッツ系の苦味もあります。

試飲コメント:玉ねぎの皮のような美しい銅色を帯びた外観、しっかりとした複雑味のある香りは白桃やメロン、桑の実、スミノミザクラなどに加え、ほんのりとバニラやトーストしたパンのニュアンスが感じられます。バランスのとれた包み込まれるような味わいで心地よい酸があります。ミネラルを感じる長い余韻へと続いていきます。デリケートなサラミや生ハム、魚介類と合わせてお楽しみください。

凝縮した風味にシャープな酸とミネラルが調和
フラッグシップのコッリオ単一畑ソーヴィニョン

チチニス 2022

チチニス 2022

アルベルト氏:ソーヴィニヨン ブランなので当然アロマティックではあるのですが、例えばニュージーランドのソーヴィニヨン ブランのように「青々しさ」があるものでも、酸があり過ぎて少し飲み疲れてしまうようなものでもなく、中間的なソーヴィニヨンを目指して造っています。

飲むとまず柑橘系のニュアンスが感じられますね。ライムの皮やアスパラガス。もちろんこのようにワイン単体で飲んでいただいてもいいのですが、酸もしっかりしているので、食事とぜひあわせて楽しんでもらいたいです。日本食もいいと思います。

試飲コメント:酸度と糖度のバランスが良く、ミネラル感あふれるワインです。外観は輝いた麦わら色を呈し、初めにソーヴィニヨンブラン品種の誘うようなアロマを感じます。そして桃やパイナップルが香り、火打石やスパイス、白コショウなどが続きます。口当りは柔らかく、エレガントで余韻が長く続きます。

インタビューを終えて

イタリア白ワインの銘醸地フリウリ。その中のコッリオDOC、イゾンツォDOCという隣接したエリアのそれぞれの個性のお話はとても興味深く、試飲した「ラマート ピノグリージョ」の親しみやすさ、「チチニス」のソーヴィニヨン ブランの華やかさと複雑さにもその土地の個性を感じることができました。特に「ラマート」は、注がれたときはロゼワインかと見間違うほどの色合いで、実際に飲むと厚みのある果実味と酸のバランスがとても心地よく、季節を選ばず飲みたくなるそんな味わいでした。今回紹介した2商品以外にも上質な白ワインを揃えているアテムス、ぜひ皆さんもお試しください!