バローロ最高標高の畑ラ モッラ村クリュ「セッラデナーリ」最大所有「ドージオ」突撃インタビュー

2024/12/06

2024/10/31

アンドレア アウティーノ氏 Mr. Andrea Autino

標高500mを超えるバローロ最高標高のラ モッラ村クリュ「セッラデナーリ」最大所有!4つの単一畑の個性と凝縮感&フレッシュさを体現する「ドージオ」突撃インタビュー

ドージオは、1974年にジュゼッペ・ドージオ氏がラ モッラ村のクリュ「セッラデナーリ」で創業したワイナリーです。バローロ地区で最も標高の高い畑セッラデナーリ最大所有の造り手です。セッラデナーリをはじめ、フォッサーティ、ブッシア、メリアーメの4つの単一畑を所有。醸造家のアンドレア・アウティーノ氏が「各畑の特徴を最大限に引き出して、いかにテロワールが異なるかを飲み比べて感じていただきたい」と話すように、個性が際立つワインを造っています。価格帯も魅力的で、特別な時だけでなく年間通して飲みやすいバローロを目指しています。今回は、そのアンドレア氏をお迎えしてワイナリーや畑などについて、お話を聞きました。

1974年、ラ モッラ村のクリュ「セッラデナーリ」で創業

――まずは、ワイナリーの紹介からお願いいたします。

ドージオはジュゼッペ・ドージオが1974年に創業したワイナリーです。拠点を置くのはラ モッラ村のクリュ「セッラデナーリ」、標高500mを超えるバローロで最も高い場所です。もともとジュゼッペはセーターの販売事業を行っていましたが、ワインへの情熱があったため農園の取得に至りました。

レノヴォ社で10年間社長を務めたジャンフランコ・ランチ氏一家が継承
2010年にはドージオ社の所有権が、ジャンフランコ・ランチに渡りました。彼はレノヴォ社で10年間社長を務めた人物です。幼少期からラ モッラ村を訪れ、ジュゼッペ同様にワインへの情熱を持つようになりワイナリーの取得を決めました。現在は、彼の娘のキアラと息子マッシモが経営を引き継いでいます。キアラは毎日ワイナリー業務を行い、マッシモは自身のレストラン経営も行っています。

GIVの醸造家としてイタリア各地で活躍し、
ドージオからスカウトされ参画したアンドレア・アウティーノ氏

――アンドレアさんご自身についても教えてください。いつからドージオにいらっしゃるんですか?

私は2021年からドージオの専属エノロゴとして働いており、畑から醸造まで全てを担当しています。また、今回のように、イタリア国外のみなさんにワインについて説明する仕事も担っています。エノロゴとしてワインを管理しないといけないので時間は限られますが、話すことが大好きな私にとっては楽しい仕事ですね(笑)。

ドージオに来る以前は、GIV(※)で8年間働き、ピエモンテのカ ビアンカやバジリカータのレ マンフレディで経験を積みました。ジャンフランコから「ワイナリーを成長させたい」と誘われてドージオへの参画を決断しました。各地のワイン造りの経験を生かして、現在はバローロ造りに専念しています。
※Gruppo Italiano Vini:イタリア最大手のワイナリーグループ
ドージオの本拠地セッラデナーリの畑

標高の高いセッラデナーリの重要性を見抜いた歴代オーナーの先見性
――今でこそ高い標高のエリアは脚光を浴びていますが、創業当初、標高500mでバローロを造る生産者はいなかったですよね?

創業当時、セッラデナーリは標高が高すぎてバローロ造りに適さないと考えられていました。ネッビオーロは成熟しないので、ドルチェットの畑しかありませんでした。ネッビオーロが植えられ始めたのは、1980年代の終わりです。そのため、ドージオの発展は、創業者のジュゼッペと、彼を継いだジャンフランコの先見性なしには語れません。

特にジャンフランコは、将来の温暖化を見越して標高の高い畑を重要視し、ワイナリーの成長に大きく寄与しました。また、標高が高いことはネッビオーロだけでなく、白ブドウにも好影響をもたらします。しっかりとした酸が保たれた高品質な白ワインが生まれます。白ブドウは所有する最も標高の高い畑で栽培しています。
ラ モッラ村

偉大な生産者が集う「セッラデナーリ」最大面積を所有
各クリュの個性を最大限に引き出すワイン造り哲学

年間通して飲みやすく、各畑の個性が映し出されたバローロ
私がエノロゴとして目指すバローロは、特別な時だけでなく年間通して飲みやすいものです。重すぎるワインではありません。また、各バローロの畑が持つ独自の個性を味わってほしいと考えています。そのため、バローロは全て同じ醸造方法で、各畑の特徴が明確に出るようにしています。

26、27度に温度管理された円錐形の樽で発酵をし、25hlのフレンチオーク樽で2年間熟成させます。その後、ステンレスタンクでブレンドしてからボトリング。カンティーナで1年半から2年間寝かせてからリリースします。つまり、収穫年から4年後に市場に出ることになります。

初ヴィンテージ1982年のフォッサーティを含む
4箇所のクリュからバローロを生産

合計14haの畑を所有しており、年間生産本数は9万本。そのうち半分がバローロです。クリュの畑はセッラデナーリ、フォッサーティ、ブッシアに加え、今年取得したセッラルンガ ダルバにあるメリアーメです。ラ モッラ村の様々な場所にも畑(コムーネ ディ ラ モッラ)を所有しています。本拠地のセッラデナーリから少し低い場所にあるフォッサーティは、1982年に取得した畑で、自社ブドウで初めて造りリリースしたバローロです。

【バローロの所有畑】
●ラ モッラ村
セッラデナーリ:1~1.5ha
ラ モッラ(≠クリュ):4.5~5ha
●バローロ村
フォッサーティ:1ha
●モンフォルテ ダルバ村
ブッシア:0.2~0.3ha
●セッラルンガ ダルバ村
メリアーメ:0.8ha

目指すは「バローロ地区全ての村の重要なクリュの取得」
今後の目標として、少しずつ畑を広げて、最終的にはバローロ地区全ての村の重要なクリュの取得を目指しています。各畑の特徴を最大限に引き出して、いかにテロワールが異なるかを飲み比べて感じていただきたいです。畑の取得には費用がかかるだけでなく、最適な土地を見つけることは至難の業です。目標実現に向けて、来年もまた新たな畑を取得していきたいです。

将来性溢れる今後大注目のクリュ「セッラデナーリ」
その中でも、クリュ「セッラ デ ナーリ」は、私たちにとって最も重要なワインの1つです。本拠地でもあり、標高の高い美しい場所です。この畑を所有するのはドージオを含む4社、マルヴィラ、レナート ラッティ、ジューリア ネグリです。私たちが最も広く所有しています。現在、温暖化の影響もあり涼しい場所を求めて、多くの生産者がここに進出しようとしています。将来的にはさらに「セッラ デ ナーリ」とクリュ名をつけたバローロがリリースされることでしょう。

クリュバローロ「セッラデナーリ」

最も標高の高い所有畑で造られる
長熟ポテンシャルを秘めたリースリング

リースリング

リースリング

アンドレア氏:
「所有する最も標高の高い畑のリースリングです。2022年は、畑と品種の個性がしっかりと反映されたフレッシュな酸が特徴です。ステンレスタンクで発酵・熟成を行い、瓶内熟成期間は1年半から2年ほどでリリースされます。生産量は年間2000~3000本。以前は白ブドウを全て混ぜて造っていましたが、私が醸造家に着任してからは全ての品種を単一で造る方針に切り替えました。ピエモンテでリースリングを造る生産者は増えていますが、高い標高の畑が必要です。リースリングは酸が重要であり、それが長期熟成可能なワインを支えています」
試飲コメント:輝く麦わら色。白や黄色の果実、華やかでミネラルを感じる気品のある香り。フレッシュで綺麗な酸と果実味が調和し、余韻が長く持続する親しみやすい味わい。

年間生産量2000~3000本の土着品種フレイザで造るロゼ

ペル ティ ヴィーノ ロザート

ペル ティ ヴィーノ ロザート

アンドレア氏:
「ピエモンテの土着品種フレイザで造られた珍しいロゼワインです。年間生産量は2000~3000本。フレイザは赤ワイン用ブドウであるため、少し変わった挑戦的なスタイルといえます。数年前から造り始めたもので、カテゴリー上はVdTのためヴィンテージ表記はありませんが、今回のワインは2022年のものです。ワイン名のペルティはピエモンテの方言で“君に”という意味で、前オーナーのジュゼッペが奥さんのために造ったワインです」
試飲コメント:鮮やかなピンク色。フレッシュな柑橘やベリー系の魅惑的な香り。口当たりはなめらかで、香り同様のフレッシュな果実と酸が調和しています。ミネラルの要素もあり、それらの要素が酸とともに持続します。

フレッシュとアロマを最大限に引き出したランゲ ネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ

アンドレア氏:
「ランゲ ネッビオーロは、香り高くフレッシュな味わいに仕上げました。低温発酵でアロマを保ち、発酵の途中で果皮と果汁を分けることで、過剰なタンニンを抑え、チェリーやイチゴの香りが際立つアロマティックなスタイルにしています。ステンレスタンクのみを使用し、フレッシュで気軽に楽しめる夏でも飲めるワインです。ピッツァなどと相性が良い気軽な一杯ですね。ブドウはすべてセッラデナーリの畑からで、バローロを名乗れない場所や、樹齢が若くバローロにならないネッビオーロから造られています」
試飲コメント:淡いルビー色。赤と黒の果実が調和し、エレガントでありながらボディもしっかり感じられる香り。口に含むと凝縮したベリー果実と華やかさが広がります。柔らかなタンニンと新鮮ななチェリーの心地よい余韻があります。

上品でエレガント、心地よい余韻のバルバレスコ

バルバレスコ

バルバレスコ

アンドレア氏:
「2018年頃に取得したアルバ村のモンテルシーノ地区に位置するバルバレスコです。生産量は3,000~4,000本程度。重くなりすぎないよう木樽の熟成期間を短くし、気軽に飲みやすいバルバレスコを目指しています。ヴィンテージによって異なりますが、14~15ヶ月ほど大樽で熟成しています」
試飲コメント:ガーネットよりのルビー色。バラと新鮮な枯れ葉のニュアンスを持つ上品でエレガントな香り。赤い果実と花を感じる奥行きのある味わいで、柔らかなタンニンも相まった心地よい余韻があります。

ラ モッラ村のテロワールを表現する旨み溢れるバローロ

バローロ ラ モッラ

バローロ ラ モッラ

アンドレア氏:
「ラ モッラ村に所有する畑のネッビオーロで造るバローロです。広さは4.5~5haほどです。クリュのセッラデナーリよりも標高の低い場所にあります。若いうちから心地よい味わいでありながら、熟成するにしたがって複雑味を増すワインです」
試飲コメント:輝きを持つガーネット色。凝縮感とフレッシュ感が共存し、複雑で力強い魅惑的な香り。しっかりとした骨格ながら、エレガントで奥行きのある味わいです。旨み、熟した赤系果実、バラのような風味がタンニンとともに持続します。

シルキーなタンニンが魅惑的な余韻を生むクリュバローロ「ブッシア」

バローロ ブッシア

バローロ ブッシア

アンドレア氏:
「クリュバローロのブッシアは、タンニンの印象が独特です。他のバローロ(ラ モッラ、セッラデナーリ)と違い、土壌由来の絹のようなタンニンが感じられます。畑の広さは、0.2~0.3haで、生産本数が約2000本と少量です。2017年は比較的涼しい年で、酸と神経質さを伴いながら、クリュの個性を明確に表現したヴィンテージとなっています」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。バラなどの華やかで凝縮感のある香り。力強さがありながら、旨みと華やかさが広がるエレガントな味わいです。しっかりかつ滑らかなタンニンが魅惑的で充実感のある余韻を演出します。

複雑でフレッシュ、華やかな余韻に満たされる
バローロで最も標高の高いクリュバローロ「セッラデナーリ」

バローロ セッラデナーリ

バローロ セッラデナーリ

アンドレア氏:
「セッラデナーリは、バローロの中で最も標高の高い畑で造られる特別なワインです。カンティーナの周辺に位置する畑のうち、最も高い1~1.5haの区画のブドウを使用しています。はつらつとしたタンニンと、しっかりとした酸が特徴的です。この標高の高さが酸の際立つ個性と、長期熟成力を生み出します。年間生産量は約5000本です。2017年は比較的涼しい年で、酸と神経質さを伴いながら、クリュの個性を明確に表現したヴィンテージとなっています」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。熟した果実や潰した花、黒胡椒を感じる華やかで複雑な香り。フレッシュな酸と柔らかさが共存する口当たり。香りで感じた複雑な風味の余韻が長く長く持続します。

インタビューを終えて

ドージオが造り上げるワインは、どれも力強さと繊細さが絶妙に調和していて、フレッシュかつ深みのある味わいで素晴らしかったです。コストパフォーマンスも優れていると感じました。クリュバローロは、旨味が染み渡るエレガントな味わいでした。フレイザのロゼとバルバレスコも非常にクオリティが高く、上品でバランスが良く、いつまでも飲んでいられるワインでした。

ラ モッラ村にある撮影スポット(展望台)から見下ろす畑は絶景です。少し恐怖すら感じるほどの高さだったことを覚えています。そんなバローロで最も標高の高いラ モッラ村のクリュ「セッラデナーリ」に、多くの生産者が進出を目指しているそうです。セッラデナーリを最も広く所有し、同クリュを代表する造り手「ドージオ」のワインを、ぜひご堪能ください。