2024/11/06
/
マルツィア ヴァルヴァリオーネ氏 Ms. Marzia Varvaglione
プーリアの偉大なポテンシャルを引き出す唯一無二の上級ライン!ターラントで100年続くプーリア最大級の家族経営ワイナリー「ヴァルヴァリオーネ」突撃インタビュー
年間生産量500万本を超える
プーリア州ターラントに根付く家族経営ワイナリー
――2年ぶりのインタビューです。まずは近況について教えてください。
最近、私の妹が醸造学校を卒業し、ワイナリーの仕事を家族5人そろって行うようになりました。彼女は、父と一緒に醸造チームで働いています。母は財務担当、弟は畑管理、私は営業責任者です。生産量は500万本で横ばいですが、輸出国は70カ国弱に増え、従業員も60人ほどに増えました。
2027年リリース予定、メトドクラシコの生産を開始
もう1つのニュースは、今年5月にメトドクラシコの瓶内二次発酵が始まったことです。だいぶ先になりますが、2027年にリリース予定です。マッセリア ピッツァリエッロという、私たちの伝統的なエステート(農場)近くのフィアーノ100%で造られています。ヴァルヴァリオーネのワインは、家族へのオマージュがなされるものが多いのですが、このメトドクラシコには、私の娘に関する名前にすることはすでに決めています。
北、南、西と3つの海に囲まれる本拠地ターラント
私たちが拠点を置くのは、プーリア州ターラントです。イタリア半島のもう一つの半島のような場所で、北南西の三方の海に囲まれています。また、マーレピッコロ(小さい海)とマーレグランデ(大きい海)にも挟まれているので、「海の街」という別名もあるようなエリアです。そして、海・太陽・風というキーワードも、サレントエリアを形容する大きな要素ですね。それでは、そんな私たちのワインの紹介をしていきましょう。
プーリアの真価を最大限に引き出した上級ライン
私たちのワインは、いくつかのラインに分けることができます。ベースラインの「12.5」、クラシックでワイナリーを代表する「パパーレ」、優良年のみ造る「ラグジュアリー」、土地や土着品種に根差した「テッラ」などです。すべてのワインに共通して言えることは、しっかりとした濃厚かつエレガントな味わい、そして飲みやすさがあるということです。
ヴァルヴァリオーネの多種多様なライン
プーリアの偉大なポテンシャルを証明する唯一無二の個性
ワイナリー100周年記念ワイン「マッセリア ピッツァリエッロ」
マッセリア ピッツァリエッロは17世紀末に建てられた歴史的な邸宅で、私たちヴァルヴァリオーネの拠点(農場)でもあります。このエステートの名を冠した最上級のワインを、1921年に創業したワイナリー100年を記念して2021年にリリースしました。みんな家に隔離されていた2020年(ヴィンテージ)から手掛け始めたワインで、「扉を開こうよ」という思いを込めて造りました。それはラベルにも表しています。
マッセリア ピッツァリエッロのすぐ隣にある所有畑の、ネグロアマーロ、プリミティーヴォ、アリアニコの3品種で構成されています。価格的にも最上に位置し、「プーリアはプリミティーヴォだけではない」と土地のポテンシャルを証明する唯一無二のワインです。フローラルなブーケに加えて、際立つスパイシーさと酸が調和したグランヴァンのような風格があります。時間とともに変わる表情も楽しめます。優良年のみ1万本限定でリリースしています。
マッセリア ピッツァリエッロ農場
優良年のみ造る3代目当主の名を冠した上級プリミティーヴォ
「コジモ ヴァルヴァリオーネ」
私の父であり3代目のコジモの名を冠した「コジモ ヴァルヴァリオーネ」も、マッセリア ピッツァリエッロ同様に優良年のみ造るワインです。『ガンベロロッソ2023』で最高賞トレビッキエリを獲得し、そこから3年連続受賞しています。ファーストヴィンテージは2017年です。私が初めて収穫を経験した2013年が素晴らしいヴィンテージだったことから、「ぜひ特別なワインを造りたい」という想いで誕生しました。
G7プーリア・サミットで提供された「コジモ ヴァルヴァリオーネ」
――2024年6月に行われたG7プーリアでは、ヴァルヴァリオーネのワインは使われたのですか?
提供されたようです。というのも、G7が終わった後にメインソムリエを務めた方から「コジモ ヴァルヴァリオーネを使わせていただきました」という連絡があったからです。ニュースなどでは情報が出てないと思いますが、連絡が来たのは事実です。「“ヴァルヴァリオーネのワインを使ってくれ”とプレッシャーをかけないでくれて、ありがとう」と逆にお礼を言われたくらいです(笑)。
海の要素を感じさせるフィアーノ デル サレント種100%白 |
マルグランデ フィアーノ デル サレント |
マルツィア氏: 「マルグランデは、フィアーノ100%で造る白ワインです。オリジナルはカンパーニャですが、フィアーノ デル サレントと呼ばれるブドウを使用しています。カンパーニャ州のフィアーノは土壌のミネラル感が特徴ですが、サレントでは海に近い畑の影響で塩気など海の要素が感じられます。塩味に加え、黄色い果実や黄桃、ネクター、パッションフルーツのニュアンスがあり、味わいはフレッシュで綺麗な酸が特徴です。かぼちゃのスープ、サラダ、魚介の香草グラタンと相性が良いです」 |
試飲コメント:輝く麦わら色。桃などの白い果実の香り。甘やかさも感じられます。ネクターを思わせる親しみやすく柔らかな味わい。穏やかな酸が果実味とともに心地よく広がります。 |
エレガントな赤系果実の余韻のススマニエッロ ロゼ |
ススマニエッロ ロゼ |
マルツィア氏: 「ススマニエッロで造るロゼワインです。近年、この土着品種ススマニエッロを造る動きが出てきましたが、まだまだ造り手も畑も少なく希少価値の高いブドウです。赤い果実の香り、味わいには海風による塩味と酸が感じられます。ラベルにはプーリアを象徴する、ターラントで有名なムール貝、サボテン、タコ、イチジク、農地を走る車が描かれています」 |
試飲コメント:淡い玉ねぎの皮色。香りはイチゴなどの赤系果実にほんのりシナモンが感じられ、クリーンでミネラルを感じます。口に含むと酸と塩味が広がり、エレガントな果実感が余韻として長く続きます。若干の酸と苦味も現れます。 |
ヴァルヴァリオーネ定番ワイン
|
プリミティーヴォ デル サレント パッショーネ |
マルツィア氏: 「パッショーネは長年親しまれる、正統派のプリミティーヴォを体現する定番ワインです。サレントで造られるプリミティーヴォをフランスのトノーとアメリカのバリックで3ヶ月熟成して造っています。情熱をテーマに掲げ、その想いをワイン名とエチケットに込めました。赤いバラが情熱を象徴していますが、エレガントさを追求するために黒を基調とし、オレンジ色でパッショーネと記載しています。素晴らしい酸、タンニン、そして心地よい余韻が特徴的です。近年、プリミティーヴォは、より丸みのあるスタイルが流行していますが、この酸とタンニンをしっかりと残したスタイルを愛し続けているお客様も多くいます。私自身も、このバランスの取れた味わいがとても気に入っています。肉などの重要な料理と相性抜群の一本です」 |
試飲コメント:ルビー色。赤系果実と黒系果実が溶け合い、フレッシュさと熟した果実感が感じらる香り。スパイス感もあります。口当たりは柔らかく、香り同様の複雑な風味と程よいタンニンが調和した心地よい味わいです。 |
「グランヴァンのような洗練された風味」
|
マッセリア ピッツァリエッロ |
マルツィア氏: 「マッセリア ピッツァリエッロは、単一畑のネグロアマーロ、プリミティーヴォ、アリアニコをブレンドしたワインです。優良年のみ造ります。しっかり完熟したプリミティーヴォとは異なり、エレガントさやユニークな個性が堪能できる1本です。ミディアムフルボディで、スパイシーさが際立ち、タンニンと酸のバランスが絶妙で、非常に複雑かつ優美な仕上がりとなっています。グランヴァンのような洗練された風味を楽しむことができます」 |
試飲コメント:ガーネットに近いルビー色。華やかで、濃密かつフレッシュな果実が感じられる香り。ジャミーでありながらエレガントで、香り同様にフレッシュな果実と華やかさのある味わいです。 |
約20日間の樹上アパッシメント
|
パラルーピ |
マルツィア氏: 「パラルーピは、ネグロアマーロ、プリミティーヴォ、マルヴァジアネーラをブレンドし、樹上乾燥によるプーリア独自のアパッシメントで造られるワインです。約20日間の樹上乾燥が独特の風味を生み出しています。6ヶ月の大樽熟成で造られ、削ったコーヒー豆のような香りやほのかな苦味が特徴的です。包み込むようなラウンド感のある味わいが楽しめます。ワイン名は狼避けの柵を意味し、古くからプーリアの農場に設置されていたものに由来しています。これはプーリアの伝統や風景に根ざした名前であり、パラルーピはプーリアの土地の個性や歴史を表現しています」 |
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。香りは濃密で力強く、熟した黒い果実やコンポートのニュアンスが感じられ、黒胡椒のようなスパイスやコーヒーのようなニュアンスもあります。濃密で甘やかな味わい。余韻にはバターや、ふくよかな蜜のような風味が長く長く持続します。 |
10ヶ月間バリック熟成で造る
|
サリーチェ サレンティーノ |
マルツィア氏: 「多くのサリーチェ サレンティーノは、ネグロアマーロとマルヴァジアネーラのブレンドであることが多いです。一方で私たちは、ネグロアマーロ100%で造っています。これは、ネグロアマーロのポテンシャルを信じ、その個性を最大限に引き出すという想いから来ています。10ヶ月間アメリカンバリックで熟成させ、バニラやカカオ、チョコレートのニュアンスを感じられるワインに仕上げています。パワフルで長期熟成に耐えうる骨格を持ち、時間とともに複雑性が増していきます。その力強さを支える、しっかりとした酸も特徴の一つです」 |
試飲コメント:深いルビー色。チョコレートやカカオを感じる濃密で力強い香り。果実のコンポートや黒胡椒のニュアンスも感じられます。味わいは香り同様に力強く、タンニンと酸もしっかりと感じられ、濃密な味わいが終始満たされます。 |
14ヶ月間バリック熟成で造る
|
コジモ ヴァルヴァリオーネ プリミティーヴォ |
マルツィア氏: 「コジモ ヴァルヴァリオーネは、3代目当主コジモの名を冠した上級プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアです。2019年ヴィンテージは、2023年のガンベロロッソでトレビッキエリを獲得し、そこから3年連続で受賞しているところです。最初のヴィンテージは2017年で、品質を重視するため2018年は生産していません。長時間のスキンコンタクトを行い、アメリカンバリックで14ヶ月熟成させています。色合いは濃く、濃厚なフルボディでタンニンが豊かで、この土地の特性を的確に表現したワインです。それでいてエレガントな仕上がりです。濃さと飲みやすさを両立させた味わいは、私たちのワイン全体に共通しており、このワインにもその魅力が表れています」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。香りは力強く複雑で、それでいてエレガントです。黒い果実を基調とし果実を感じます。口に含むとパワフルでしっかりとしたタンニンが際立ちます。果実味や黒胡椒、バニラのニュアンスのふくよかな味わいを感じる一方で、どこか繊細さや優しさも感じさせる余韻が持続します。 |
インタビューを終えて
定番ワインであるプリミティーヴォ「パッショーネ」も素晴らしく、複雑に絡み合う豊かな果実味とスパイス、フレッシュな酸が見事に調和した心地よい味わいでした。「正統派」と言われるように、プリミティーヴォの特徴である、親しみやすさとスパイシーで複雑な味わいを堪能することができました。
ヴァルヴァリオーネのワインはラインナップ豊富です。今回試飲した上級ラインに加えて、「12.5」や「パパーレ」といったワインを造っているので、カジュアルから重要なディナーまでさまざまなシーンで楽しむことができると感じました。