2024/11/07
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キアラ ルンガロッティ氏 Ms. Chiara Lungarotti
イタリアワインNo.1として名高いルベスコ リゼルヴァ!世界にウンブリアの名を轟かせ、20年以上の長期熟成を経てもなお輝き続けるワインの造り手「ルンガロッティ」突撃インタビュー
ウンブリアのポテンシャルを世界に広めた第一人者
ルンガロッティ創業者ジョルジョ・ルンガロッティ氏
私たちルンガロッティは、自然豊かなイタリアの緑の心臓、ウンブリア州に根付く一家です。1950年に、私の父ジョルジョ・ルンガロッティが創業しました。彼は1960年代から品質重視のワインを造り始め、数多くの改革を行ったウンブリアにおけるパイオニア的存在です。
1970年代には、父ジョルジョについて、ワインジャーナリストのヒュー・ジョンソンは「ワインマップにウンブリアを刻んだ人物」と評し、その名を広めました。現在、私たちは3世代にわたり、畑からカンティーナに至るまでウンブリアという土地の特性を活かしたワイン造りをしています。
ウンブリアの銘醸ワインの礎を築いたジョルジョ氏
拠点を置くのは2つのDOCG、トルジャーノとモンテファルコです。トルジャーノは1968年に(イタリアで5番目の認定)、モンテファルコは1979年にDOC認定を受けました。これらはどちらも、父がその品質の高さを紹介、証明したことがきっかけとなりました。その後、次々とウンブリア中にDOCが誕生していきました。
父ジョルジョ氏と過ごした畑での原体験
父はオールドスタイルのイタリア男性で、とても保守的な人でした。非常に厳しく、私を1940〜1950年代の子のように教育していたと記憶しています(笑)。しかし、父は週末になると畑やカンティーナ、時には海外のワイナリーにも連れて行ってくれたんです。これが、私にとっての「畑を感じること」の土台や原体験となりました。
「ワインとは土地や畑の時間を表現したもの」
畑は時間の経過とともに姿を変えていきます。父と一緒にその変化を見届け続けたことで、畑への理解が深まりました。ワインとは土地や畑の時間を表現したものであり、将来を見据えるビジョンが非常に大切だと父から教わりました。そんな幼少期を過ごした私は、父を追うように大学で農学を学び、現在に至るまでワインを造り続けています。父はワインだけでなく、私に対しても先見性を持つ人だったのでしょうね(笑)。
創業者ジョルジョ氏の意志を受け継ぎ、困難を乗り越えたキアラ女史
父が亡くなり、私が事業を引き継いだ際、状況は非常に厳しいものでした。経験豊富で年齢層の高い従業員をどのように説得し、ワイン造りを進めるかが大きな課題だったのです。新しい技術を導入する際には、専門知識を持って提案し、その必要性を明確に伝えるよう努めました。さらに、プロフェッショナルとしての姿勢を示すだけでなく、自分自身のアイデンティティを確立することで、困難を乗り越えることができたと考えています。
イタリアNo.1ワインを生む単一畑「ヴィーニャ モンティッキオ」
突出した柔らかさを引き出す土壌の個性とワイン造り
私たちが畑を所有するトルジャーノとモンテファルコは、100万年ほど前にティベリーノという巨大な湖が存在し、それが乾燥して干上がって形成された場所です。その古い土壌によって、特にサンジョヴェーゼは、他の地域にはない柔らかさが生まれます。
異なる標高の土地が並び、独特の気候を形成する「トルジャーノ」
丸みを帯びた味わいが特徴のサンジョヴェーゼ
本拠地トルジャーノはアペニン山脈、標高約300mの丘、平野で構成される場所で、この標高の違いが独特の気候を形成し、テロワールに重要な影響を与えています。また、近くのペルージャから広がるスカイライン(山々の輪郭が織りなす線)が映し出す風景は、緩やかで丸みを帯びています。これはトルジャーノのサンジョヴェーゼにも表れている特徴です。
トルジャーノに所有する畑は230haあり、大きく分けて4つのエリアに点在しています。1996年から各畑に気候観測ステーションを設置し、降水量、太陽光、気温、風量、湿度、土壌の湿度といった異なるパラメータを観測しています。収集したデータをもとに収穫のタイミングなどの判断を適切にしています。
トルジャーノの畑「ヴィーニャ モンティッキオ」
突出した熟成ポテンシャルを秘める単一畑「ヴィーニャ モンティッキオ」
私たちのトップキュヴェ「ルベスコ リゼルヴァ」が生まれる畑がヴィーニャ モンティッキオです。ルベスコ リゼルヴァは、突出して熟成ポテンシャルが高いサンジョヴェーゼです。毎年高い評価を受けるワインで、『ジェントルマン』誌が各ワインガイドの点数を集計して発表する総合ランキングでは、常にトップ3以内にランクインしています。ヴィーニャ モンティッキオの畑は12ha。ブドウを厳選して、一定の基準を達した優良年のみルベスコ リゼルヴァを造っています。近年でいえば2012年や2014年は造っておらず、その場合はルベスコに使われます。
20年経てもなお生き生きとし、シルキーな質感の熟成2004年&1997年
今日は、3つのヴィンテージ2018年、2004年、1997年を試飲します。現行の2018年はサンジョヴェーゼ100%ですが、それ以外はまだカナイオーロが30%ブレンドされています。2つとも20年経ってもまだまだ生き生きとした味わいで、シルキーな質感を持つテクスチャーです。ブラッドオレンジのサングイネッロを思わせるフレーバーが感じられます。まるで、それまでの年月について語りかけてくるかのような個性を感じさせるワインです。
力強さと柔らかさを兼ね備えたサグランティーノを造る「モンテファルコ」
モンテファルコの畑は20haあります。畑を取得したのは1999年のことでした。当時は、トスカーナやプーリア、シチリアへ進出する生産者が多い中、私たちは土壌、気候、人間性をよく理解する地元ウンブリアの中で畑を広げることを決めました。主に生産するのは土着品種サグランティーノです。
サグランティーノは強烈なタンニンを持つ品種ですが、マセラシオンの期間などを工夫して柔らかさを抽出するようにしています。それでいて骨格や力強さもしっかりと保っています。モンテファルコの街の近くに畑があり、11月になるとサグランティーノの畑が真っ赤に染まるんですよ。
モンテファルコ
長期の瓶内熟成でも柔らかさを引き出す
ワインが持つ柔らかさはテロワールからだけでなく、瓶内熟成の影響も大きいです。私たちはボトリング熟成を非常に重視しており、瓶詰めしてから数年間寝かせてからリリースします。このプロセス、いわば「我慢、忍耐」がワインの柔らかさを引き出す重要な要素と考えています。時間をかけてじっくりと待つことで、ワインの尖った部分が丸くなり、全体的なバランスが生まれます。この特徴は、ルベスコ リゼルヴァに限らず全てのワインに備わっています。
凝縮した黄色い果実が香る心地よい酸のメトドクラシコ |
ブリュット ミレジマート |
キアラ: 「シャルドネと少量のピノ ネロで造るメトドクラシコです。収穫は8月中旬頃で、しっかりとした酸が特徴的です。4年間の瓶内熟成を経た後、2018年ヴィンテージとして澱抜きをして、さらに休ませてからリリースされます。アペリティーボに最適な1本ですね。長期間澱とともに寝かせることでしっかりとしたストラクチャーがあるため、食中酒としても適しています」 |
試飲コメント:黄金色。黄色い果実の凝縮した香りがエレガントに広がります。ふくよかな骨格があり、柑橘の風味と心地よい酸の余韻が持続します。 |
70年代から造られる複雑で華やかな香りが広がる白ワイン |
トッレ ディ ジャーノ ヴィーニャ イル ピノ |
キアラ: 「1970年代から造る歴史的な白ワインです。ヴィーニャ イル ピノという単一畑の、ヴェルメンティーノ50%、グレケット30%、トレビアーノ20%で造っています。優れたストラクチャーを持ち、非常に複雑な香りと味わいが特徴です。3分の1は新樽20%のバリックで発酵し、残りの3分の2はステンレスで発酵しています。バリックに使用する樽は、新樽が20%、1年目が40%、2年目が40%です。バトナージュを行いながら6ヶ月間熟成させてボトリングします。瓶内熟成を2年間行ってからリリース。ワインはしっかりとした黄色を呈し、複雑で華やかな香りを持ちます。口に含むとハチミツのニュアンスが感じられ、奥には黄色い花の風味が広がります。木樽のニュアンスは果実味を引き立てる役割を果たしています」 |
試飲コメント:黄金色。白い花、白桃、黄桃などのフレッシュな香りが広がり、後から濃密なアロマがやってきます。ソフトでまろやかな果実味があり、ミネラル感のある余韻が持続します。 |
繊細かつリッチな風味のバリック熟成シャルドネ |
オウレンテ |
キアラ: 「オウレンテは、イル ピノ同様にしっかりとしたボディを持つ白ワインです。使用するブドウは100%シャルドネで、トルジャーノDOCです。70年代に私の父がウンブリアに持ち込んだシャルドネです。発酵は100%木樽で行い、バリックの比率はイル ピノと同じく新樽が20%、1年目が40%、2年目が40%です。6ヶ月ほどシュールリー、熟成させた後、ボトリングします。さらに1年から2年の瓶内熟成を経てリリースされます。このワインには偉大なエレガントさがあり、木樽がシャルドネの特性を際立たせています。ニュアンスは控えめながら、非常に個性的で印象的な仕上がりです。この季節(秋)にはトリュフとのペアリングが特におすすめです」 |
試飲コメント:黄金色。熟した黄色い果実やバナナ、樽のニュアンスが溶け合う香り。繊細な口当たりながら、ふくよかな果実味も広がる味わい。まろやかでエレガントな余韻に満たされます。 |
熟した果実とまろやかな味わいのサンジョヴェーゼ主体赤 |
ルベスコ |
キアラ: 「ルベスコはルンガロッティを象徴するワインです。品種構成はサンジョヴェーゼ90%、コロリーノ10%で、ミディアムボディの仕上がりとなっています。ブドウはブルーファという丘の畑で栽培されており、1本あたり約2kgの収穫量となる計算です。発酵後は温度管理を行いながら2週間マセラシオンをします。その後、1年間の木樽熟成を経てボトリングし、さらに瓶内で熟成させてからリリース。この品種構成はキャンティクラシコでも見られますが、ルベスコはキャンティクラシコに比べて、より丸みのある味わいが特徴です。理由はトルジャーノの古い土壌の違いにあり、よりまろやかなサンジョヴェーゼの味わいが生まれます」 |
試飲コメント:ルビー色。黒系果実、森の果実、熟した果実、黒胡椒のようなスパイスの香りが広がります。ほどよい骨格の上に香り同様の味わいの余韻が乗り、タンニンととともに持続します。 |
力強さと柔らかさが絶妙に調和する偉大なフラッグシップ |
ルベスコ リゼルヴァ ヴィーニャ モンティッキオ |
キアラ: 「ルベスコは、ラテン語のルベッシーレに由来し、頬が赤くなるという意味を持ちます。このワインは、モンティッキオの畑のセレクションされたブドウから造られます。初ヴィンテージは1964年。今年で60周年を迎えます。モンティッキオの畑を一貫して使用しており、2009年以降はサンジョヴェーゼ100%に移行しました。通常のルベスコで1本の樹から2kgの収穫量に対し、リゼルヴァは1kgで、さらに凝縮感があります。畑ごとにブドウの房を選別し、収穫したブドウはカンティーナに運ばれ、20~25日間のマセラシオンが行われます。その後、大樽とバリックで熟成させます。 2018年頃から、大樽の割合を50%から80%に増加させました。新樽が20%、1年目が40%、2年目が40%です。1年間木樽で熟成させた後、ボトリングしてさらに約3年半寝かせてからリリースされます。しっかりとした香りが特徴で、味わいは特に余韻にタバコや赤い果実のジャム、繊細なタンニンが感じられます。柔らかさの中に偉大なエレガントさがあり、力強さとバランスが両立しています。口に含むと、ウンブリアのなだらかな丘をイメージさせるようなまろやかさや丸みが広がり、そのキャラクターがこのワインの魅力を際立たせています」 |
試飲コメント:やや淡いガーネット色。赤と黒の果実やバニラが溶け合う香り。濃密なニュアンスもあります。繊細でありながら力強さもあり、香り同様の果実や黒胡椒などのスパイス、タンニンが調和しています。余韻が長く持続します。 |
上質な熟成感とフレッシュさが溶け合う極上のバランス!
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ルベスコ リゼルヴァ ヴィーニャ モンティッキオ |
キアラ: 「2004年のルベスコ リゼルヴァです。まだカナイオーロがブレンドされているヴィンテージですね。当時は70%サンジョヴェーゼ、30%カナイオーロの割合でした。20年経ってもまだまだ生き生きとしています。柔らかでしなやかなシルクのような質感を持つテクスチャーで、ブラッドオレンジのサングイネッロを思わせるフレーバーが感じられますね。このサンジョヴェーゼは、まるで語りかけてくるかのような個性を感じさせます。新樽25%、1年目25%、2年目25%、3年目25%という比率のバリックで熟成しています。その後、ボトリング後に3年間熟成させてからリリースされました」 |
試飲コメント:深みのあるガーネット色。熟した果実や腐葉土の香り。フレッシュさも感じられます。口に含むとエレガントな味わいに満たされ、柔らかな印象ながら生き生きとしたタンニンがエレガントな余韻を演出します。 |
27年の熟成を経て際立つ優雅さ!
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ルベスコ リゼルヴァ ヴィーニャ モンティッキオ |
キアラ: 「父ジョルジョが造った最後のヴィンテージ1997年です。サンジョヴェーゼとカナイオーロのブレンドで造られています。非常に熟成能力の高さを見せるワインです。バリックで熟成を行い、その後数年間の瓶内熟成後リリースされました。複雑でふくよか、そしてエレガントな香り。ブラックチェリー、チェリー、スパイス、爽やかなバルサミコ、ハーブのニュアンス。滑らかでシルキーな口当たりがあり、フレッシュかつ凝縮感のある味わいが持続します」 |
試飲コメント:深みのあるガーネット色。凝縮した熟した果実やハーブなどを感じる奥行きのある香り。香り同様に凝縮感のある味わいで、長く持続する余韻。 |
カベルネ&サンジョヴェーゼを50%ずつで造るスーパーウンブリア |
サン ジョルジョ |
キアラ: 「サン ジョルジョは、スーパーウンブリアと呼ばれるワインで、50%カベルネ ソーヴィニョンと50%サンジョヴェーゼのブレンドです。サンジョヴェーゼはモンティッキオの畑、カベルネ ソーヴィニョンはサンジョルジョの畑で栽培されています。ファーストヴィンテージは1977年で、当初はカベルネ・ソーヴィニョンが20%でしたが、徐々に比率が増え、現在は半分となっています。新樽が20%、1年目が40%、2年目が40%のバリックで1年間熟成させます。その後、ボトル熟成を2年半から3年行いリリース。 カベルネ ソーヴィニョンはトルジャーノの特徴である、サンジョヴェーゼを引き立てる役割を担っており、決して覆い隠すことはありません。むしろ、バランスを保ちながらサンジョヴェーゼの良さを引き出します。まるで嫁姑の関係のように、最初はサンジョヴェーゼ(姑)が強く主張しますが、年月が経つにつれてカベルネ(嫁)がその存在感を増していくようなワインです。これらの特徴がスーパーウンブリアを表しています」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。赤系果実や黒系果実、ミントなどを感じる香り。しっかりとしたタンニンと凝縮感のある果実味が調和した味わい。長い余韻が持続します。 |
力強いタンニンと柔らかさが調和するフレッシュなモンテファルコ サグランティーノ |
モンテファルコ サグランティーノ |
キアラ: 「サグランティーノはポリフェノールが最も多く含まれる品種で、野生馬を思わせるような特徴を持っています。タンニンが豊富なブドウで、葉っぱの量と房の割合を適切に管理しなければ、タンニンが強すぎるワインになってしまいます。サンジョヴェーゼ以上にポリフェノールの量を重視する品種であり、年間を通して糖度、アルコール、フェノールの量を継続的に観察する必要があります。このバランス管理が、サグランティーノ特有の野性的なタンニンを制御する鍵です。 低温で短期間のマセラシオン(20~25日間)を行い、その年の気候によて果皮からの抽出量を調整します。バリック50%、30hlの大樽50%で1年間の熟成を行います。バリックの内訳は、新樽が20%、1年目が40%、2年目が40%です。香りはブラックチェリー、カカオ、甘いスパイスが調和し、サグランティーノの個性を存分に感じられます。非常に優れた骨格と力強いタンニンがありながら、果実のフレッシュさと柔らかさとのバランスが良く取れています」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。熟した果実、黒胡椒のスパイス、鉛筆の芯のようなニュアンスが複雑に絡み合うフレッシュな味わい。抜栓直後は閉じていましたが、時間が経つと黒系果実やスパイスの風味がより開いていきます。タンニンは力強いながらも柔らかく心地よい余韻が持続します。 |
インタビューを終えて
ワインは、何と言ってもイタリア最高峰ワイン「ルベスコ リゼルヴァ」です。力強さ、繊細さ、柔らかさ、複雑さが見事に調和したエレガントな味わいで素晴らしかったです。そして、バックヴィンテージの2004年、1997年も試飲させていただきました。20年以上も経っているとは思えないくらい生き生きとしていて感動しました。最後に試飲したモンテファルコ サグランティーノは屈強なワインでありながらも、注力されているという柔らかさが引き出されていて驚きました。
ぜひ、イタリアNo.1ワインとして名高いルベスコ リゼルヴァの造り手「ルンガロッティ」のワインをお楽しみください。