2024/11/19
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マリー チェリーニ氏 Ms. Mary Cerini
上品な優しさに溢れるエレガントなサンジョヴェーゼ!トスカーナの銘醸地ヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノの独自性を最大限に体現する「カンティーネ デイ」突撃インタビュー
5つの異なるテロワールを最大限に活かす
トスカーナ州モンテプルチアーノで3世代続く造り手
カテリーナの父である2代目のクラウコは、本格的にワインビジネスに着手し始めました。60年代後半から70年代にかけて、マルティエーナの畑を皮切りに、ワイナリーを囲うように畑を拡張していきました。カンティーナの建築にも本格的に取り掛かり、ワイナリーはトラバーチンの大理石を使った神殿風にデザインされています。
明確に異なる土壌の特性を最大限に表現
DOCGヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノに所有する5つの畑
私たちが拠点を置くモンテプルチアーノは、DOCGヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノ南部に位置しています。創業当初から、エリアの特性を最大限に生かすワイン造りを追求してきました。現在、所有する土地は120ha、そのうちブドウ畑は60haです。畑は5箇所に分かれており、それぞれ異なる土壌の特性を見極めながら、サンジョヴェーゼの多様性を引き出しています。同じサンジョヴェーゼでも区画ごとに異なる味わいを表現することに注力しています。
・マルティエーナ
生産ワイン:ビアンコ、ローザ、ロッソ ディ モンテプルチアーノ、ヴィンサント
カンティーナの周囲を囲む畑。標高200m-250m、砂質土壌。白ワイン、ロゼワイン、赤ワイン用の畑でフレッシュで際立った酸を与えます。
・ボッソーナ
生産ワイン:ノービレ リゼルヴァ
1964年に取得した最初の単一畑。広さは13ha。標高500mの丘陵地で化石土壌。豊富なミネラルを与えます。64年に植樹したブドウは現在も使用しています。1999年からはクリュとしてリゼルヴァを造っています。1haあたり1000本しか造られません。
・チャルリアーナ、チェルボニャーノ
生産ワイン:スタンダードのノービレ
土壌構成は似ており、凝灰土と粘土を含んだ土壌です。スタンダードのノービレ モンテプルチアーノに使われる畑で、収穫後は別々に醸造して、熟成段階でアッセンブラージュします。
・ピアッジャ
生産ワイン:マドンナ デッラ クエルチェ
2005年に植樹された1.5haの畑。クリュ ノービレ「マドンナ デッラ クエルチェ」を造っています。標高370m。土壌は非常に古く、鮮新世時代(約533万年前から約258万年前)の地質にあたり、砂、凝灰土、粘土が同じ割合でミックスされています。どの畑よりも、際立った酸とエレガンスを与えます。
2025年導入されるUGAで優良畑として認定予定の「ボッソーナ」「チャルリアーナ」
近年、畑の優位性を表現するために各地で導入されているUGAプロジェクト(Unita Geografiche Aggiuntive/追加地理的単位)が、DOCGヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノでも始まります。協会が主導してゾーニングを進めているところです。来年から正式に導入される予定で、ボッソーナとチャルリアーナがその対象になるでしょう。
チャルリアーナの畑
上品で優しく包み込むような味わいを見事に表現した
ヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノ
「ヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノ」
ヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアーノは「ノービレ(ノーブル/高貴な)」とあるように、もともとルネサンス期にメディチ家をはじめとした貴族が飲む高級な赤ワインとして嗜まれていました。この土地はエトルリア時代から何千年にもわたりワイン造りが行われていた歴史があるのです。
時代が進み、トスカーナには多くの赤ワイン産地が存在しますが、変わらずノービレはブルネッロなどとも肩を並べる独自の個性を持つワインとなっています。
時代が追い付き、注目を集めるノービレの独自性
「ハーモニーを奏でるような美しいワイン」
近年、ワインの嗜好は世界的に線の細い味わいになってきています。それに合わせる料理も味付けが繊細で軽やかです。そのため、造り手、売り手、飲み手は、そういったトレンドを日々の暮らしに落とし込む段階に来ていると思います。
そこでノービレの出番です。私たちのワイン造りのモットーは、自社畑の個性を最大限に表現することに加え、エレガントとバランスです。ハーモニーを奏でるような美しいワインとでも言いましょうか。トスカーナの他の銘柄にはないものをすべて持っているのがノービレです。
デイが掲げるノービレの三つの基本理念
「上品なエレガンス」「キリッとした酸」「優れたバランス」
特にスタンダードのノービレ(サンジョヴェーゼ)は、上品なエレガンス、キリッとした酸、優れたバランスがあります。これら3つの要素が基本です。また、リリース後すぐ飲めて、フレッシュで飲み心地が良く、タンニンはこなれているという特性もあります。トスカーナで有名なサングイネッラというブラッドオレンジのような風味も、この土地のサンジョヴェーゼの特徴です。
ノービレは、それら全ての長所がいい塩梅で整っています。もちろん銘柄ごとに特有のテロワールがあるわけですが、これらはノービレにしかできない表現です。
香り高くフレッシュでまろやかな味わい!
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マルティエーナ トスカーナ ビアンコ |
マリー氏: 「マルティエーナ ビアンコは、私たちが赤ワインと同じく自信を持っている白ワインです。品種はマルヴァジア アロマティカ、シャルドネ、グレケット、ソーヴィニヨンブランです。ヴィンテージによって割合が変わりますが、常にマルヴァジア アロマティカが主体です。ステンレスタンクで発酵、熟成を行い、品種のフレッシュさを損なわないよう樽は使いません。香りはアロマティックで、トロピカルフルーツ、バナナ、メロン、フローラル、そしてネクターのようなニュアンスが感じられます。味わいはフレッシュで酸が際立ち、骨格がしっかりして、食中酒にぴったりなスタイルです。私たちは食事との調和を第一に考えてワインを造っています。2021年ヴィンテージは特に素晴らしい年で、今後さらに花開いていくでしょう。生産本数は最大でも1万本と限定的です」 |
試飲コメント:麦わら色。注いだ瞬間に香りがグラスから広がりを見せます。白い果実と黄色い果実の香りが重なり、リンゴ、白桃、南国果実のフルーティなアロマが感じられます。蜜のようなニュアンスも。口に含むと、鋭い酸とまろやかさが一体となって広がり、香りで感じた果実の要素が口の中で調和します。充実感のある心地よい余韻。食事と一緒に味わいたい白ワインです。 |
華やかで心地よいフレッシュな酸のサンジョヴェーゼ100%ロゼ |
ローザ トスカーナ ロザート |
マリー氏: 「マルティエーナのサンジョヴェーゼ100%で造るロゼワインです。ロッソ ディ モンテプルチアーノ用の畑のサンジョヴェーゼを使用し、8月中旬から少し早めに選果して醸造します。マセレーションの時間は4~6時間、低温設定されたステンレスタンクで発酵させて引き締まった状態のワインに仕上げます。フレッシュな酸に加え、ストロベリーやキイチゴ、花のような華やかな香りが特徴的で、白ワインとは異なるフレッシュさを持ちながらも、香りに華やかさが加わっています。食事との汎用性が高く、日本食のような繊細な料理にもよく合います。私たちはロゼを白ワインとしての立ち位置で考えており、フレッシュな酸と心地よさ、一口飲むとまた飲みたくなるような仕上がりになるようにしています。モンテプルチアーノで合わせる料理としては、淡白な白身魚や生魚のタルタル、生ハムやサラミの盛り合わせ、季節の野菜スープなどが挙げられます。また、食前酒としても楽しめる、汎用性の高い幅広いスタイルのワインです」 |
試飲コメント:淡い玉ねぎの皮色。イチゴや森の小さな赤い果実が広がるほどよく力強くふくよかな香り。奥行きも感じます。味わいは軽やかで、香り同様にほどよくふくよかな風味が口の中に広がります。凝縮した果実味と酸が調和した美味しさがあります。 |
365日いつでも楽しめる汎用性の高さ!
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ロッソ ディ モンテプルチアーノ |
マリー氏: 「ノービレの弟的な存在として位置づけられるロッソ ディ モンテプルチアーノです。品種構成はサンジョヴェーゼ グロッソのクローン90%、カナイオーロ5%、メルロー5%。カナイオーロはフレッシュさやグリーンノートを加え、メルローはフルーツ感や果実味を加えています。非常にジューシーで、フレッシュさと若々しさが特徴的です。酸が際立ちながらも綺麗な仕上がりです。クラシックな味わいで、つい飲み過ぎてしまいそうな危ないワインですね(笑)。365日いつでも美味しく楽しめる幅広いスタイルのワインで、特に夏には温度を低めにするとフレッシュさがより際立ちます。発酵、熟成のほとんどはステンレスタンクで行いますが、最後にスラヴォニア産の大樽で4ヶ月間熟成させています」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。チェリーやベリーなど、明るく豊かな果実が広がる香り。奥行きも感じます。ほどよくフレッシュで、土のニュアンスもほんのりと感じられ、軽やかさの中に複雑さが見え隠れします。味わいは香り同様に豊かな果実味があり、後からタンニンとともに鉛筆のようなニュアンスが現れます。 |
「他のエリアでは表現できない」
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ヴィーノ ノビレ ディ モンテプルチアーノ |
マリー氏: 「私たちのフラッグシップワインである、スタンダードのノービレです。サンジョヴェーゼ90%、カナイオーロ10%です。チャルリアーナとチェルボニャーノの2つの畑のサンジョヴェーゼを用いています。スラヴォニア産の大樽で18ヶ月間熟成させることで、ロッソよりも複雑で骨格がしっかりとした仕上がりとなります。熟した森のベリー、プルーン、そして熟した赤い果実の香りが特徴です。さらに、トスカーナで有名なサングイネッラ(ブラッドオレンジ)の香りが奥のほうに感じられ、これがこの土地のサンジョヴェーゼの特徴を表しています。タンニン、骨格、ボディがふくよかでありながらエレガント。食中酒として肉料理はもちろん、脂の乗ったサーモンなどとも相性が良いです。ノービレの鍵となるのはエレガンスとバランスです。フレッシュで飲み心地が良く、すぐに楽しめ、全てが調和した完成度の高い状態です。このようなワインは、他のエリアでは表現できないものです」 |
試飲コメント:ガーネットに近い深みのあるルビー色。フレッシュかつ熟した黒系果実が溶け合う、気品のある華やかな香り。奥行きと複雑さも感じられます。味わいは香り同様に、フレッシュさと熟した果実が調和し、ほどよいタンニンが心地良い余韻を演出します。 |
ストラクチャー豊かで柔らかな味わいを表現!
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ボッソーナ ヴィーノ ノビレ ディ モンテプルチアーノ リゼルヴァ |
マリー氏: 「ボッソーナ リゼルヴァは私たちにとって重要なワインです。創業した1964年に植樹した単一畑ボッソーナのサンジョヴェーゼで造られています。植樹当時のものをいまだに使用しています。リゼルヴァとして造り始めたのは1999年。ボッソーナはサンジョヴェーゼの最大表現の一つであり、ストラクチャーやボディに至るまで、私たちのテロワールを象徴しています。ビロードのように柔らかく丸みのあるタンニンがワイン全体を豊かにし、非常に長いフィニッシュを生んでいます。口の中で広がりを見せます。フランス産の樽由来のチョコやカカオ、コーヒーのニュアンスを持ち非常に長い余韻があります。2016年は、最優良ヴィンテージの一つであり、今後の熟成ポテンシャルを秘めています。現時点でも楽しむことができますが、先日1999年の初ヴィンテージを飲んだところ、素晴らしさに驚かされました。このことからも、ボッソーナはスタンダードのノービレよりも広がりがあり長期熟成に耐えられるワインであることが証明されています」 |
試飲コメント:深みのあるガーネット色。力強く複雑でありながらエレガンスも兼ね備えた香り。フレッシュかつ熟した果実や黒系果実のドライフルーツ、チョコレート、カカオ、コーヒー、黒胡椒を感じます。口に含むとフレッシュで力強い風味が広がり、タンニンはしっかりと存在感を持ちながらもまろやかで優しさも感じられます。バランスに優れた余韻が長く持続します。 |
複雑味と綺麗な酸が溶け合うエレガントな余韻!
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マドンナ デッラ クエルチェ ヴィーノ ノビレ ディ モンテプルチアーノ |
マリー氏: 「マドンナ デッラ クエルチェは、単一畑ピアッジャのサンジョヴェーゼ100%で造るクリュワインです。畑は2005年に植樹した1.5haの小区画です。最初のボトリングは2015年。同じサンジョヴェーゼでも5つのエリアでこれほど違いがあるということを表現したいという思いがあり、試行錯誤を重ねて完成させました。アルコール漬けの果実、スパイシーさ、バルサミックなニュアンス、そしてフラワリーな香りが特徴です。酸やエレガンスが際立っています。直線的な味わいですね。ワイン名は、畑の目の前にある礼拝堂に由来しています。この礼拝堂は、初代当主の時代からお祝い事が行われる大切な場所であり、その思いが込められています。また、ラベルには“父へ”と書かれており、現当主のカテリーナの亡き父への思いも込められています」 |
試飲コメント:深みのあるガーネット色。香りはフレッシュで力強く、複雑でありながらエレガントさも感じられます。赤い果実と黒い果実が溶け合い、スパイシーさや華やかさも感じられ、時間が経つにつれて複雑性が増していきます。口に含むと、フレッシュかつ熟した果実が調和し、存在感がありながらも優しいタンニンが、果実味と酸の綺麗な余韻を演出します。エレガントでミネラル感のある余韻がじわじわと広がっていきます。後から、ハーブやチョコレートのニュアンスも現れます。 |
軽快で爽やか、優しさに満ちたヴィンサント |
ヴィン サント ディ モンテプルチアーノ |
マリー氏: 「マルヴァジア アロマティカ、トレッビアーノ、グレケットの3品種で造るヴィンサントです。どれもマルティエーナの畑で栽培したもので、砂質土壌由来の美しい酸があります。香りはアカシアのハチミツ、砂糖漬けのフルーツ、アーモンドのニュアンスが特徴です。香りが非常にアロマティックでありながら、私たちの白ワインのように軽快で爽やかです。早い段階で収穫を行い、約3ヶ月間陰干しし、小さい樽で4、5年熟成させています。少なくとも20年の熟成が可能です。チーズやゴルゴンゾーラ、フォアグラのパテなど、少し塩味のある食材との相性が抜群です」 |
試飲コメント:琥珀色。力強く複雑な香り。黄色い果実や杏などのドライフルーツ、柑橘類、ハチミツのニュアンス。口に含むと柔らかな口当たりが広がり、リッチでありながらソフトな印象です。香りで感じた要素に加えて、ハチミツのような甘さも現れ、優しさに満ちた味わいです。 |
インタビューを終えて
そんな独自の個性を持つノービレについて、生まれも育ちもトスカーナ州モンテプルチアーノだという輸出マネージャーのマリーさんは非常に誇りを持っていました。他の産地のワインにも敬意を払いながらも、「ノービレの鍵となるエレガンスとバランスは、ノービレにしか表現できない」と話しており、試飲しながら、その言葉通りの味わいを存分に堪能することができました。
ノービレの上品でエレガントな味わいが見事に表現された、デイのワインをぜひご堪能ください。