2024/11/25
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ルカ マッローネ氏 Mr. Luca Marrone、ダヴィデ トルキオ氏 Mr. Davide Torchio、マルテン リールヴェルド氏 Mr. Maarten Leereveld
ボルゲリの歴史を象徴し、時代の最前線をゆく偉大な造り手!鮮やかな酸と凝縮感が際立つ唯一無二のテロワールを表現する三大ボルゲリのひとつ「グラッタマッコ」突撃インタビュー
サッシカイアに次ぐボルゲリで2番目に創業した歴史的生産者
――前回のインタビューから8年が経過しました。改めて、ワイナリーについて簡単にご紹介いただけますでしょうか。
ルカ グラッタマッコは、ボルゲリの歴史そのものを表しています。1977年に創業したボルゲリで2番目のワイナリーで、40年以上にわたりワインを造り続けてきました。今回、垂直試飲をする代表作グラッタマッコ ロッソもまた、40年以上の歴史を持つワインです。
グラッタマッコのアイデンティティとして5つの重要な点があります。1つ目はテロワール。各畑の特徴を純粋に反映して、テロワールを最大限に表現したワインを造っています。2つ目は有機栽培。ワイン造り全体を通じて、ビオのアプローチを実践しています。
3つ目は、アルティジャナーレ。職人的であるということです。たとえば、開放型の発酵樽「ティネッロ」を用いるなど、昔ながらの製法を取り入れています。4つ目は、サンジョヴェーゼです。ボルゲリでは珍しいサンジョヴェーゼを栽培できているのは、他の生産者との差別化を図る大きな要素です。
ボルゲリの未来を切り拓く革新的な取り組み
ルカ そして、5つ目のアイデンティティは、常に一歩先を見据えた取り組みを行ってきた点です。例えば、ボルゲリエリアで初めてヴェルメンティーノ100%の白ワインを生産したこと、ボルゲリロッソがDOCに認定された最初の年に早速生産を開始したこと、そしてボルゲリで初めてアルベレッロ仕立てを採用したことが挙げられます。こうした哲学や実績がグラッタマッコのアイデンティティを形成しています。
いち早く気候変動に対応し導入したアルベレッロ仕立て
ルカ アルベレッロを例にとると、単に他と違うことをしたいからと始めたわけではありません。導入のきっかけとなったのは、2003年の異常気象です。その対策としていち早くブドウ樹を守る方法を模索して採用に至り、そのアルベレッロ仕立ての畑で造る「ラルベレッロ」というワインも造り始めました。
その後、他の生産者たちも追随し、アルベレッロ仕立てはボルゲリエリアを代表する伝統的なものとなりました。近年、ボルゲリエリア全体ではより暑さが増しているため、さらに多くのワイナリーがアルベレッロを採用する流れがあります。
近年、新たな畑を4haほど取得
ルカ 2021年から2023年にかけて、新しい畑の植樹を行いました。丘陵地のヴィニェート グラッタマッコの畑に、カベルネ ソーヴィニヨンとカベルネ フランとメルローを3ha、ヴェルメンティーノを1ha植えました。土壌は白い粘土質です。数年後には新しいワインに使う予定です。
トップキュヴェ「グラッタマッコ ロッソ」垂直試飲!
醸造家ルカ氏&ダヴィデ氏に聞くワイン&ヴィンテージ解説
テロワールの特性を見事に映し出すフラッグシップ「グラッタマッコ ロッソ」
ダヴィデ グラッタマッコ ロッソは、カベルネ ソーヴィニヨン、メルロー、サンジョヴェーゼからなるボルゲリ スペリオーレです。カベルネ ソーヴィニヨン由来のしっかりとした酸に、サンジョヴェーゼが加わることで、その酸がより鮮やかに引き立ちます。また、土壌は白い粘土質で、森やハーブ、青草を感じさせる香りが生まれます。これは、カベルネ ソーヴィニヨンやサンジョヴェーゼがテロワールの特性をいかに的確に反映するかを示しています。それを見事に体現している点こそ、グラッタマッコの魅力なのです。
「グラッタマッコ ロッソ」2019年、2020年、2021年垂直試飲
・2019年/理想的なブドウ成熟を迎えたクラシックな年
2019年はクラシックな年でした。夏は適度に気温が上がり、必要な時期に適切な雨が降り、理想的なブドウ成熟条件が整いました。しっかりとしながらも甘みのある柔らかなタンニンがあり、酸も十分に感じられるフレッシュな味わいに仕上がりました。
・2020年/凝縮感が高まり、すでに飲み頃のヴィンテージ
2020年もクラシックな年ですが、すでに飲み頃を迎えているヴィンテージです。2019年とは異なり、全体的に暑い気候で夏には雨がほとんど降りませんでした。その結果、ブドウの成熟が進んでワインの凝縮感が高まりました。
・2021年/バランスよくじっくりと成熟した2019年と似た年
2021年は、2019年と似ているヴィンテージです。春の理想的な時期に降った雨と、夏の十分な気温上昇により、ブドウは酸、糖分、タンニンがバランス良くゆっくり成熟しました。
きめの細かい味わいを引き出すために優良年のみ取り入れる
700Lの樽ティネッロで行う伝統製法ピエモンテジーナ
ダヴィデ 2019年や2021年のように、ブドウがゆっくりと熟してバランスの良いタンニンに仕上がると、ピエモンテジーナという手法で長期間のマセラシオンを行います。これは、ティネッロという開放型の木樽(700L)に皮ごとブドウを入れる、もともとはネッビオーロで伝統的に行われていた手法です。
本来は皮から抽出が起きますが、一定期間置くと逆に皮が雑味などを吸収するようになります。これにより、エレガントな酸などが残り、きめの細かい味わいに仕上がります。また、 樽が小さいので少量ロットでの管理ができる点や、温度上昇が抑えられることでゆっくりと自然な発酵が促されるという利点があります。
伝統製法ピエモンテジーナ
一貫した職人的手法でボルゲリの歴史をけん引してきたグラッタマッコ
マルテン ルカが冒頭で話したように、グラッタマッコは今日のボルゲリワインを築き上げてきたワイナリーの1つです。そんなボルゲリの歴史と伝統を体現するグラッタマッコの紹介ができて本当に幸せです。機械化が進むボルゲリにおいて、私たちは畑作業からボトリングまで一貫して職人的な手法(手作業)でワインを造り続けています。これがグラッタマッコのアイデンティティでもあり、唯一無二の存在である理由だと考えています。
サッシカイアというボルゲリを象徴するワインの影に隠れがちな私たちですが、グラッタマッコをコレクションしているお客様には「正しい道を進んでいますよ」と伝えたいですね(笑)。そして、私たちにはグラッタマッコで20年以上の経験を持つ偉大な醸造家ルカ・マッローネがいます。彼のもとで、グラッタマッコは革新を続け、進化し続けると確信しています。
ワイン造りを支えるチーム全員で導くグラッタマッコの未来
ルカ 20年熟成ですね(笑)。ここで働き始めて22年が経とうとしています。私はグラッタマッコの哲学と結婚をしているんです。冒頭で5つのアイデンティティについて触れましたが、もう1つ付け加えさせてください。それは「人」です。畑やワイナリーで働く人々、一人ひとりが仕事に誇りを持ちチーム一丸となってワインを造ることが、グラッタマッコを唯一無二のワイナリーへと導いているのだと思います。今後もその哲学を大切にし、全員が力を合わせて、未来のグラッタマッコを創り上げていきます。
――これまで何度もインタビューをさせていただきましたが、前回のインタビューから8年が経っています。次回は、来年か再来年にまたお話を聞かせてください。
マルテン ぜひ!
ルカ・マッローネ氏(統括エノロゴ/左)
ダヴィデ・トルキオ氏(エノロゴ兼ワイナリー責任者/右)
グラッタマッコの全ての黒ブドウで造るエントリーボルゲリロッソ |
ボルゲリ ロッソ |
ダヴィデ氏: 「ボルゲリロッソは、私たちが造る赤ワイン用のブドウすべてが使われています。カベルネ ソーヴィニヨン、カベルネ フラン、メルロー、サンジョヴェーゼ、そしてごく少量のプティ・ヴェルドです。2022年は全体的に暑い年で、特に夏は6月から暑く乾燥していました。8月2週目に雨が降ったおかげでブドウが成熟しました。収穫は8月末から9月初めに行われ、メルローは早く成熟が進み、糖分がしっかりと凝縮され、高い品質で収穫されました。香りは非常にアロマティックで凝縮されています。カベルネ フランは以前よりも増えて25%までになりました。理由は、樹齢が上がり高品質のものが取れるようになったからです。その分カベル ソーヴィニヨンが減りました。 口に含むと力強い味わいが広がり、フレッシュさが感じられます。若いうちに飲んでも良いですし、数年間寝かせてもポテンシャルを楽しめるワインです。イタリアワインとして食事との相性が大切だと考えていて、フレッシュな酸味が食事に寄り添う重要な要素になっています」 |
試飲コメント:生き生きとしていて、フルボディでタンニンのバランスがよい味わい。複雑なアロマで穏やかな余韻に満たされます。 |
ボルゲリで初めて導入したアルベレッロ仕立てで造る歴史的キュヴェ |
ラルベレッロ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ |
ダヴィデ氏: 「ボルゲリで初めて導入したアルベレッロ仕立てのブドウで造ることから、ラルベレッロと名付けられています。カベルネ ソーヴィニヨン70%、カベルネ フラン30%のブレンドです。このワインの特徴としては、それらの2つの品種を一気に収穫してすぐに混醸するという点です。カベルネ ソーヴィニヨン由来のフレッシュ感に、カベルネ フランのバルサミックなニュアンスが引き出されています。 2020年は乾燥した冬から始まり、春には多くの雨が降り、そのおかげで芽がしっかりと育ち、ブドウの生育を助けました。9月2週目に収穫が行われ、マセラシオンは2週間行いました。アルコール発酵後、バリックでマロラクティック発酵を行い、その後、木樽で18ヶ月熟成させます。木樽は半分が新樽、半分が2~3回使用されたものです。無理なく自然なバランスで調和の取れた味わいに仕上がっています」 |
試飲コメント:濃密でアロマティックな構成があり、果実味とバルサムの風味が感じられます。生き生きとした酸に、深みのある余韻が持続します。 |
理想的なブドウ成熟を遂げたトップキュヴェ2019年 |
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ |
ダヴィデ氏: 「カベルネ ソーヴィニヨン、メルロー、サンジョヴェーゼからなるボルゲリ スペリオーレです。カベルネ ソーヴィニヨン由来のしっかりとした酸に、サンジョヴェーゼが加わることで、その酸がより鮮やかに引き立ちます。森やハーブ、青草を感じさせる香りはテロワールから来るものです。2019年は冬が寒く、春の5月には雨が降り、ブドウの芽がしっかり育ちました。6月半ばから7月にかけて温度が上がり、ブドウが熟しました。8月末から9月初めにかけて収穫。サンジョヴェーゼから始まり、メルロー、カベルネ ソーヴィニヨンと収穫されました。メルローは2週間マセラシオンを行い、カベルネ ソーヴィニヨンは20日間のマセラシオン。2019年はクラシックな年で、特に理想的なブドウ成熟がなされました。このような年にできたワインは、しっかりとしながらも甘みを感じる柔らかなタンニンで、酸もしっかりとしていて、フレッシュ感のある味わいに仕上がります」 |
試飲コメント:フルーティでバルサムのニュアンスに芳醇で凝縮感のある味わいです。生き生きとした酸と旨味が余韻に広がります。 |
飲み頃を向けた凝縮感のあるトップキュヴェ2020年 |
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ |
ダヴィデ氏: 「2020年は、2019年とは全く異なる年でした。春の時点でかなり暑く、雨も少なく乾燥していました。夏も気温が高かったですが、8月半ばから9月にかけて何日か雨が降り、ブドウが健康的に育ち、熟したタイミングで収穫ができました。収穫は8月20日頃にスタート。マセラシオンは通常に比べてかなり短期間でした。気温が徐々に下がり始めたので、カベルネ ソーヴィニヨンとサンジョヴェーゼは成熟を待って収穫することができました。2020年はすでに飲み頃を迎え始めているヴィンテージで、凝縮感のあるワインに仕上がっています」 |
試飲コメント:凝縮感のある果実味、スパイス、ハーブのニュアンスなどが全体的にまとまったスムーズな味わいです。 |
タンニン、酸、ミネラルが調和するトップキュヴェ2021年 |
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ |
ダヴィデ氏: 「今回特別にご案内する2021年ヴィンテージです。先日のジェームズサックリングのイベントでは出展していましたが、まだ市場には出ていません。2021年は春に多くの雨が降り、4月から5月にかけて湿度が高く、病害が流行りました。特にヴェルメンティーノやカベルネ ソーヴィニヨンで影響があり、最終的な収量は少なくなりました。夏は気温が上がり、ブドウがしっかり熟しました。9月3日からメルローを収穫し、サンジョヴェーゼやカベルネ ソーヴィニヨンも続けて収穫しました。2021年は2019年と非常に似た年でした。7月末から8月にかけて、ブドウの実が色づく時期に適量の雨が降ったことにより、ブドウの成熟がバランスよく進みました。酸、糖、タンニンのバランスが良く、ゆっくりと熟成が進みました。こうして、ブドウがゆっくり熟しバランスの取れた状態で成熟し、タンニンも重要な要素となりました。リリースされる頃には調和の取れたタンニン、酸、ミネラルが感じられるものとなっています」 |
試飲コメント:2019年、2020年ヴィンテージより厳格で濃密さもあり複雑のある味わい。酸が際立ち、スパイスやミネラルの余韻が持続します。 |
力強さ、ミネラル、フレッシュさが際立つ
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グラッタマッコ ビアンコ ボルゲリ ヴェルメンティーノ |
ダヴィデ氏: 「グラッタマッコ ビアンコは、グラッタマッコがボルゲリで初めて造った歴史的なヴェルメンティーノです。1986年に植えられた樹齢約40年の畑で、その後に植えられたブドウ樹も接ぎ木されたものなので生物学的には同じクローンです。グラッタマッコが持つボルゲリの丘陵地帯の畑の土壌の特徴をよく表しているワインで、ミネラル感やフレッシュ感、塩味のような特徴があります。それでいて、非常に力強いです。これは、他の造り手では見られないユニークなヴェルメンティーノの特徴が表れています。2022年はパワフルなヴィンテージで、暑い年でした。春から夏にかけて気温が高く、収穫は8月末から9月初めにかけて行われました。2020年ヴィンテージから木樽の使用を減らしました。現在はバリックとトノーが3分の1、ステンレスが3分の2です。これにより、フレッシュさに磨きがかかったと思います」 |
試飲コメント:複雑で爽やかな要素がが綺麗に層をなす香り。豊かでありながらも上品で慎ましやかな印象です。充実した果実の厚み、塩味を感じる心地よいミネラルとエレガントな酸味が調和した味わいです。 |
インタビューを終えて
その揺るぎないビジョンが、テロワールを忠実に表現したワインを生み出しているのだと思います。垂直試飲で味わったトップキュヴェ「グラッタマッコ ロッソ」は、そのテロワールが見事に体現されていました。偉大な風格を持ちながらも、鮮やかな酸、豊かな果実味、さらにミネラルやハーブのニュアンスが絶妙に調和しています。まだ市場にリリースされていない2021年ヴィンテージは、やや硬さが残るものの、非常にバランスが良く複雑な味わいを備えており、今後の熟成がますます楽しみです。