銘醸白ルガーナ&ヴァルポリチェッラの歴史的名門「ゼナート」突撃インタビュー

2025/03/19

2025/02/26

マルコ ミラーニ氏 Mr. Marco Milani

時代を超えて愛される極上のクラシック アマローネ!白ワイン銘醸地ルガーナ&ヴァルポリチェッラを切り拓いた歴史的名門「ゼナート」

ゼナートは、1960年にガルダ湖南部の白ワイン産地ルガーナで創業した名門ワイナリーです。創業当初はあまり注目されていなかった土着品種トゥルビアーナ(トレッビアーノ ディ ルガーナ)の可能性をいち早く見出し、世界に認められる高品質なワインを生み出しました。その功績によりDOCルガーナの設立にも大きく貢献し、現在ルガーナは白ワインの銘醸地として大きな注目を集めています。1970年代にはヴァルポリチェッラに畑を取得し、従来の生産規定の模範となった元祖リパッソや、極上のクラシック アマローネを生産。世界に誇るワインを造り続けています。今回は、セールスマネージャーのマルコ・ミラーニ氏にお話を伺いました。

脚光を浴びる白ワイン産地「ルガーナ」の先駆者

1960年創業、ルガーナDOC設立に大きく貢献
ゼナートは、1960年にセルジオ・ゼナートがイタリア最大の湖、ガルダ湖南部で創業したワイナリーです。拠点を置くのはサン・ベネデット村。創業当初、周囲ではシャルドネやガルガネガが植えられる中、セルジオは誰よりもトゥルビアーナの可能性を信じていました。そして、栽培を続けた結果、現在のルガーナDOCの設立に大きく貢献しました。ルガーナの畑を取得したのは1960年代、ヴァルポリチェッラは1970年代です。

際立つ酸が特徴の注目産地「ルガーナ」の最も古い畑を所有
ルガーナは近年、品質の高さが評価される注目産地ですが、最近では土地単価も上昇しており新規参入が難しくなっている状況です。栽培するトゥルビアーナは、トレッビアーノ ディ ルガーナとも呼ばれますが、一般的なトレッビアーノとは異なり、DNA的にはヴェルディッキオに近い品種です。砂利を含むモレーン堆積土壌で、際立った酸が特徴的です。また、私たちはルガーナで最も古い畑を所有しています。

ヴァルポリチェッラと同じ構成品種の軽やかな味わい「バルドリーノ」
バルドリーノは、ガルダ湖東部に位置するエリアです。ルガーナの北、ヴァルポリチェッラへ向かう途中にある村です。土壌はルガーナとほぼ同じですが、ヴァルポリチェッラに近づくにつれて変化していきます。ヴァルポリチェッラとのつながりが深く、栽培されるブドウ品種もほぼ共通していますが、軽やかな味わいが特徴です。

ブドウ栽培に適した環境を維持させるガルダ湖
ルガーナとバルドリーノは、ガルダ湖の気候調整効果を大きく受けるエリアです。湖が気候・気温を安定させる役割を持ち、冬は極端な冷え込みや乾燥を防ぎ、夏は過度な高温を抑えます。そのため、年間を通じて温暖な気候が維持されています。

本拠地があるガルダ湖南部のワイナリーと畑

ヴァルポリチェッラの「極上のクラシック」を追求した偉大な逸品

ヴァルポリチェッラ クラシコ地区最西端、標高の高いサンタンブロージョ
ルガーナとバルドリーノの次は、丘陵地のヴァルポリチェッラです。ここでは、ヴァルポリチェッラ、リパッソ(リパッサ)、アマローネが造られています。長男のアマローネ、次男のリパッソ、三男のヴァルポリチェッラといった具合ですね。

所有する畑は、クラシコ地区の最西端にある小さな村サンタンブロージョにあり、赤土の石灰岩土壌のコスタルンガという畑です。丘陵地帯の標高の高い場所にあります。バルドリーノ同様にガルダ湖の影響を受け、同じブドウ品種を使用しながらも、ワインのスタイルは大きく異なります。
ヴァルポリチェッラの畑

長年愛されるゼナートを代表するスタンダード アマローネ
総生産量の0.6%、こだわりが詰まったトップキュヴェ「アマローネ リゼルヴァ」

――スタンダードのアマローネとリゼルヴァの違いを教えてください。

どちらもコスタルンガの畑から造られますが、ブドウのセレクト、熟成期間、樽の種類、生産量が違います。スタンダードは、容量の異なる複数のフレンチオーク樽で3年間熟成。一方、リゼルヴァは厳選されたブドウのみを使用し、75hlのスラヴォニアンオーク樽で4年間熟成した後、さらに1年間の瓶内熟成を経ます。

スタンダードは長年愛されるアマローネで、年間生産量は約10万本。リゼルヴァは優良年のみに生産されるトップワインで、約3万本に限られます。ゼナート全体の年間総生産量は500万本ですので、リゼルヴァはそのわずか0.6%に過ぎません。

ゼナートが追求する、時代を超えて愛されるアマローネ
――実際に試飲すると、アルコール度数を感じさせない素晴らしいバランスがあります。

気品あふれるアマローネに仕上げています。アルコールの強さを感じさせずに、この味わいを表現できる造り手はそう多くないでしょう。近年、低アルコールのアマローネを造る動きも見られますが、ゼナートはあくまで本来のスタイルを大切にしています。アマローネは、その力強さと奥深さこそが魅力であり、私たちはこのクラシックなスタイルを守り続けることにこだわっています。

まるでファッションブランドのアルマーニのように、時代を超えて愛される「極上のクラシック」です。その味わいを愛してくださる多くの方々の存在こそが、私たちの誇りです。

しっかりとした酸が際立つルガーナのメトド クラシコ

ルガーナ メトド クラッシコ ブリュット 2020

ルガーナ メトド クラッシコ ブリュット 2020

マルコ氏:
「トゥルビアーナで造るメトド クラシコです。品種由来のしっかりした酸があり、綺麗なスプマンテに仕上がっています。きめ細かい泡も特徴的です。ルガーナの特徴である桃や白い花、南国果実の香りが感じられます。長期熟成にも耐えられます。ルガーナ自体がまだ広く認知されておらず、ニッチな存在ですが、日本のみなさんにも気に入っていただけるスパークリングだと思います」
試飲コメント:淡い透明感のある麦わら色。黄桃などの凝縮した黄色い果実のような香りに、酵母のニュアンス。しっかりとした酸が際立ち、ぎゅっと詰まった果実味が感じられます。

軽やかで上品な果実感の大注目白ワイン「ルガーナ」

ルガーナ サン ベネデット 2023

ルガーナ サン ベネデット 2023

マルコ氏:
「サンベネデットはゼナートのワイナリーがある村の名前です。トゥルビアーナをステンレスタンクのみで発酵、熟成した白ワインです。ルガーナらしいシンプルな造りが特徴です。白桃の香りがあり、非常に飲みやすく、通年楽しめるワインに仕上がっています。2023年は雨が少なく、過度な気温だったため、フレッシュでクリーンな味わいが現れています。ルガーナはドイツで非常に人気のあるワインで、ソアーヴェに代わる新たな選択肢となれると考えています」
試飲コメント:輝く麦わら色。白い果実や桃を感じさせる上品でフルーティな香り。広がりを見せる華やかなニュアンスも。香り同様の統一感のある味わいで、フレッシュ&フルーティ。軽やかさがありながら、エレガントかつ凝縮した果実味を感じます。

長期熟成ポテンシャルを秘める
優良年のみ生産の上級ルガーナ リゼルヴァ

ルガーナ セルジオ ゼナート リゼルヴァ 2020

ルガーナ セルジオ ゼナート リゼルヴァ 2020

マルコ氏:
「一部をトノーで発酵させ、ステンレスタンクで熟成したルガーナです。マロラクティック発酵をしているので、通常のルガーナと比べ、柔らかさや丸みがあります。黄桃やバターのニュアンスが特徴的です。アマローネ リゼルヴァと同じ立ち位置で、生産量は年によって異なります。2023年は約3万5000本でした。長期熟成のポテンシャルがあり、先日、1980年のルガーナを試飲しましたが、まだ生き生きとしたフレッシュさが感じられました。ブドウ由来の酸が熟成を支えているのです」
試飲コメント:やや淡く透明感のある黄金色。黄色い果実にヨーグルトやバターを感じさせるクリーミーさが溶け合う香り。味わいは香り同様で、柔らかい酸と果実感があります。後口に、ほのかな苦味と柑橘の皮のニュアンスが現れます。

夏に最適なフレッシュ&フルーティなロゼ

バルドリーノ キアレット 2023

バルドリーノ キアレット 2023

マルコ氏:
「バルドリーノはガルダ湖東部にある村です。ヴァルポリチェッラとのつながりが深く、栽培されるブドウ品種もほぼ共通していますが、軽やかなスタイルが特徴です。ロゼはコルヴィーナを主体としていますが、私たちのワインの中で唯一モリナーラを使用しています。フレッシュで夏のアペリティフに最適で、白身魚などと好相性です」
試飲コメント:淡いサーモンピンク。赤い果実や、わずかにブルーベリー、スパイスのニュアンスを感じるエレガントな香り。全体的にフレッシュ&フルーティで、シナモンのようなスパイスの要素が溶け込む余韻が感じられます。

深みとエレガンスが溶け合う複雑で心地よいヴァルポリチェッラ

ヴァルポリチェッラ スーペリオーレ 2021

ヴァルポリチェッラ スーペリオーレ 2021

マルコ氏:
「ゼナートのヴァルポリチェッラは、クラシコ地区の最西端、丘陵地帯にあるサンタンブロージョに位置しています。ガルダ湖周辺とはテロワールが大きく異なり、赤土の石灰岩土壌が特徴です。ヴァルポリチェッラは、アマローネやリパッソとほぼ同じ品種構成で、85%がコルヴィーナです。12ヶ月オーク樽で熟成しています。鶏肉や豚肉、豆のスープなどと相性が良いです」
試飲コメント:ガーネットを帯びた深いルビー色。フレッシュや完熟した赤系果実と黒系果実、ドライフラワー、革のニュアンスを感じる香り。柔らかく軽やかな口当たりながら、芯のある果実味が広がり、深みとエレガントさが共存した味わいです。

ゼナートを象徴するベストセラーワイン
ほどよい凝縮感あふれる果実味のヴァルポリチェッラ リパッソ

リパッサ ヴァルポリチェッラ リパッソ スーペリオーレ 2020

リパッサ ヴァルポリチェッラ リパッソ スーペリオーレ 2020

マルコ氏:
「リパッサはゼナートを象徴するベストセラーワインです。アマローネに使用した、3ヶ月乾燥させて80%の水分を飛ばしたブドウの搾りかすを、ヴァルポリチェッラに加えて再発酵させて造られています。そのため、アマローネとヴァルポリチェッラの要素を掛け合わせたワインと言えます。オーク樽で1年以上熟成させています」
試飲コメント:深いガーネット色。熟した黒系果実やアルコール漬けの果実の香りが広がります。わずかに赤系果実の要素も感じられます。味わいや甘やかな果実感や潰した花のようなニュアンス。ほどよいタンニンが心地よい余韻を演出しています。

複雑に絡み合う風味が綺麗に調和するエレガントなアマローネ

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ 2018

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ 2018

マルコ氏:
「3ヶ月間乾燥させたブドウを、容量の異なるフレンチオーク樽で3年間熟成した造っています。年間生産量は約10万本です。熟したプルーンやチェリー、タバコの香りがあり、しっかりとしたボディと長い余韻が特徴です。アルコール度数は16.5ですが、バランスが取れており、アルコールの強さを感じさせないエレガントな仕上がりになっています。長期熟成チーズやジビエなどと合わせるのに最適です」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。赤系果実のドライフルーツや完熟果実を感じる気品が漂う香り。チョコレートのニュアンスも感じます。味わいは香り同様に複雑でエレガントです。フレッシュな酸、果実味、苦味、スパイスなどそれぞれの要素が見事に調和した優美な余韻が長く持続します。

優良年のみ生産
重厚さとエレガンスが共存した上級アマローネ リゼルヴァ

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ セルジオ ゼナート リゼルヴァ 2017

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ セルジオ ゼナート リゼルヴァ 2017

マルコ氏:
「アマローネ リゼルヴァは優良年のみ生産するゼナートのトップワインです。スタンダード アマローネよりも厳選したブドウを使用し、4年間の樽熟成と1年間の瓶内熟成を経て造られます。熟成に使う樽は75ヘクトリットルのスラヴォニアンオーク樽。年間生産量は約3万本程度で、ゼナートの年間総生産量が500万本なので、リゼルヴァはわずか0.6%の生産量に過ぎません」
試飲コメント:ガーネットを帯びたルビー色。グラスに注いだ直後は軽やかな印象も、徐々にふくよかさが現れる複雑でエレガントな香り。重厚さとエレガンスが共存した味わいで、香り同様にじわじわと優れたボディが現れ、非常に長い余韻が持続します。

インタビューを終えて

ルガーナとヴァルポリチェッラの歴史を築いてきたゼナート。彼らのワインを試飲し、その偉大さを改めて実感しました。フレッシュで親しみやすいながら、エレガントで凝縮した果実味を持つルガーナ「サン ベネデット」。力強さがありつつも、アルコール度数を感じさせない絶妙なバランスのアマローネ。そして、重厚さと優美さが見事に調和した、圧倒的な存在感を放つアマローネ リゼルヴァ。

最初に試飲したメトド クラシコから、最後のリゼルヴァまで、食前酒、食中酒、食後酒と、多彩な楽しみ方がゼナートのワインを通じて堪能できると感じました。終盤にマルコさんが語った「時代を超えて愛される極上のクラシックを表現」という言葉も印象深かったです。伝統ある土地や自らの哲学を貫き続けてきたからこそ、今のルガーナとヴァルポリチェッラ、そしてゼナートの確固たる地位が築かれているのだと実感しました。