2025/03/05
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クレメンテ ゼッカ氏 Mr. Clemente Zecca
驚愕のコストパフォーマンスで世界中で愛されるワインの数々!いち早くプーリアのポテンシャルを示し、世代を超えても躍進し続ける老舗「コンティ ゼッカ」

1580年創業、いち早くプーリアの潜在力を示した老舗
5代目当主クレメンテ氏が牽引する次世代のワイン造り
――改めて、ワイナリーについて教えてください。
コンティ ゼッカは、プーリア州で1580年に創業した家族経営ワイナリーです。プーリア最古のワイナリーの1つですね。その歴史は、もともとナポリ出身の家族が、農業に適したプーリアへ移住したことから始まりました。1884年には、当時のローマ教皇からゼッカ家に伯爵(コンテ)の称号を授かり、現在のワイナリー名の由来になっています。
本格的にワイン造りに取り組み始めたのは1935年。私の曽祖父のアルチビアーデ・ゼッカが、プーリアの土着品種ネグロ アマーロとプリミティーヴォを用いたワイン造りを始めました。その後、祖父の代からは自社ブランドでのボトリング販売を開始し、さらなる発展を遂げました。
1990年代に入ると、父と叔父の代から、木樽を使用したより洗練されたワイン造りに注力しました。その結果、バリック熟成を取り入れた「ネロ」をはじめ、プーリアのポテンシャルを示し、コンティ ゼッカを象徴するワインが誕生したのです。
持続可能な農業、最新設備の導入、オレンジワインの生産
世代交代を超えてもなお追求する革新的な造り
私は家族の5代目として、次世代へ向けた取り組みを進めています。持続可能な農業を重視し、新たな機械の導入や熟成方法としてテラコッタを採用するなど、革新的な取り組みを進めています。また、新世代の醸造家マッテオ・エスポージトを迎え、酸化を防ぐ機器を導入するなど技術面でも進化を図っています。
さらに、2020年には私の発案でオレンジワインのプロジェクトを立ち上げました。プーリアでは先駆的な試みと言えるでしょう。長い歴史を持つワイナリーでありながらも、常に革新を追求して、新たな挑戦を続けています。
プーリア州最南端、土壌特性の異なる3つのエリア
ワイナリーが拠点を置くのは、プーリア州の先端にあるサレント半島レッチェ県です。所有畑は合計約20haで、サリーチェ サレンティーノ、ヴェーリエ、レヴェラーノと3つのエリアに分かれています。いずれもほぼ同じくらいの広さです。サリーチェは深い粘土質土壌、ヴェーリエは石灰砂質土壌、レヴェラーノは石灰と粘土が混ざった赤土の土壌です。
この土壌の多様性が、ワインごとに異なる個性を生み出します。また、この恵まれた環境が、革新的な取り組みや新たな試みを可能にしていると考えています。
ワイナリーはヴェーリエに位置
5代目当主クレメンテ氏が解説
コンティ ゼッカの個性豊かなラインナップ
――ワインについて教えてください。
私たちのワインは、1950年代に誕生したロングセラー「ドンナ マルツィア」をはじめ、いくつかのシリーズに分かれています。
●カジュアルに味わう「ドンナ マルツィア」
イタリア政府が功績を讃える歴史的ブランド「マルキオ・ストーリコ」の認定を受けるシリーズ。イタリア国内はもちろん世界的にもコストパフォーマンスの高さが評価されています。
●堂々のフラッグシップ「アイコンワイン」
土着品種&国際品種のブレンド、木樽熟成シリーズ。90年代、4代目が世界市場を見据えて造った「ネロ」と「ルナ」などがラインナップ。
●土地の伝統と革新の融合「テロワールワイン」
サレントの土着品種のみで造り、土地の個性(テロワール)を重視したシリーズ。合計6種類造っていますが、日本に輸出されるのは「カラヴェント オレンジワイン」「リフージョ」の2種。
●家族の歴史とブドウへの愛を紡ぐ「カンタルピ」
20世紀初頭からボトリングを始めた長い歴史を持つワイン。カンタルピとは、私の母方の祖父が所有していた農園の名前で、両親が結婚した後、ゼッカ家の畑と隣接していたことから、「コンティ ゼッカ」がカンタルピを受け継ぎました。
●個性豊かな「オリジナルワイン」
幅広い方に楽しんでいただくために生まれたシリーズ。「トレ グラッポリ」も「パッショーネ オーロ」も、すぐに飲める親しみやすさのあるワインに仕上げています。
醸造と土壌の特性が一目でわかる新ラベルデザイン
最近、「ドンナ マルツィア」シリーズのラベルデザインを一新しました。木樽熟成のワインには木目調のデザインが施され、バリック熟成のものには樽のロゴを上部に配置しました。また、マルヴァジアなどには、土壌の質感が浮かび上がるような工夫もなされています。昔から前面に打ち出していたドンナ マルツィアの名前を残しながら、洗練されたスタイルにすることができたと思っています。
優しい酸が広がる優れた飲み心地
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ドンナ マルツィア マルヴァジア ビアンカ 2023 |
クレメンテ氏: 「このワインは、サレントの土着品種であるマルヴァジア ディ レッチェを使用しており、セミアロマティックな特徴を持っています。ソフトプレスの後、ステンレスタンクで発酵し、セメントタンクで熟成させています。2023年ヴィンテージなので、非常にフレッシュです。白い花や黄桃のニュアンスのクリーンな風味が特徴的なワインです」 |
試飲コメント:黄金に近い麦わら色。黄桃や白い果実のアロマティックな香りに、レモンの砂糖漬けやグレープフルーツのニュアンス。柔らかい口当たりで、徐々になめらかな酸が優しく広がります。飲み心地の良い果実味が感じられます。 |
濃密な果実と樽由来のまろやかさが際立つ樽熟成白ワイン |
ドンナ マルツィア シャルドネ オーク樽熟成 2023 |
クレメンテ氏: 「ドンナ マルツィアシリーズ、バリックラインの白ワインです。プーリアの土壌に適応したシャルドネを主体に、90年代に父がブルゴーニュスタイルを取り入れながらモダンなワインとして造り上げました。色合いはマルヴァジアよりも金色がかっており、木樽由来のハチミツやバニラの香りが感じられます。果実味とスパイスのバランスが良く、南のワインらしく酸は穏やかです。新樽のアメリカンバリックで約3ヶ月熟成しています」 |
試飲コメント:輝く黄金色。熟した黄色い果実にオレンジピールの砂糖漬けのニュアンスを感じる濃密な香り。バターやハチミツのような樽由来の要素が溶け合い、まろやかで心地よい余韻が続きます。温度が上がると、ふくよかさがより際立ちます。 |
バリック発酵・熟成で造る
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ルナ 2022 |
クレメンテ氏: 「私の父(4代目)が世界市場を見据えて造り上げたアイコンシリーズの白ワインです。50%マルヴァジア ビアンカと50%シャルドネを使用しています。レヴェラーノの畑で、選別したブドウのみを手摘みで収穫し、収穫後は8度の冷蔵庫で一晩保管します。その後、新樽のフレンチバリックで発酵し、6ヶ月熟成。バトナージュを施して複雑味を引き出しています」 |
試飲コメント:輝く黄金色。フレッシュかつ熟した黄色い果実が樽由来の香りに寄り添っています。樽由来のバターやオイリーな質感と、南国果実や柑橘類の柔らかい味わいが持続します。 |
奥深さとフレッシュさが共存
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カラヴェント オレンジ 2021 |
クレメンテ氏: 「新しく始めたテロワールプロジェクトで生まれたオレンジワインです。プーリア初のオレンジワインと言ってもいいでしょう。ドライアイスを使用して約マイナス80度の環境下で、テラコッタでマセラシオンを行っています。カモミールやリコリスのニュアンスが特徴的です。料理には肉や伊勢海老のようなしっかりした味付けのものが合います。ラベルにはオレンジと記載し、視覚的にもオレンジワインと分かるデザインに仕上げています」 |
試飲コメント:琥珀色。杏などのドライフルーツを感じる奥行きある香り。それにフレッシュさが共存しています。香り同様の果実感が、ほどよいタンニンと絡み合い、茶葉のようなニュアンスも加わった余韻が長く持続します。何か食事と合わせたくなる味わいです。 |
抜群のコストパフォーマンス
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カンタルピ リゼルヴァ コンティ ゼッカ 2021 |
クレメンテ氏: 「2年間大樽熟成させたネグロ アマーロ主体の赤ワインです。このエリアで造られるワインの中で、トレビッキエリを受賞し、この価格帯でリリースされるワインはありません。赤系果実やスパイスが感じられ、ストラクチャーと酸のバランスが取れた味わいです。タンニンはしっかりとしていますが、シルキーな質感でクリーンな赤ワインに仕上がっています。ジャミーなプーリアワインの特徴とは異なり、キャンティ クラシコやネッビオーロに近いエレガントな味わいですね」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。グラスに注いだ瞬間に甘やかな香りが広がります。凝縮したベリー系果実やイチゴのアルコール漬けなどのニュアンス。味わいは香り同様で、フレッシュかつ凝縮した果実感にスパイスの要素が加わります。軽やかさとバランスの良さが際立ち、後口には心地よいほろ苦さがやってきます。 |
12ヶ月以上の大樽熟成
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リフージョ プリミティーヴォ 2022 |
クレメンテ氏: 「2019年から開始したテロワールプロジェクトで生まれたワインです。もともとリフージョというワインは別ラインでありましたが、テロワールラインとして復活しました。ヴェーリエにある砂質土壌の単一畑のプリミティーヴォです。大樽で12~16ヶ月熟成。アパッシメントは行わず、ピュアな果実感を生かしています。プルーンやチェリーのニュアンスも特徴的。タンニンはしっかりしていますが、滑らかな口当たりが表現されています」 |
試飲コメント:ガーネットに近い深みのあるルビー色。香り味わいともに、濃縮した果実や甘やかさが感じられます。ほどよいタンニンが黒系果実に満ちた余韻を持続させます。 |
プリミティーヴォ、ネグロ アマーロ、カベルネ ソーヴィニヨン
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トレ グラッポリ ロッソ 2023 |
クレメンテ氏: 「プリミティーヴォ、ネグロ アマーロ、カベルネ ソーヴィニヨンの3品種で造られています。ブレンド比率は例年ほぼ変わらず、45%プリミティーヴォ、45%ネグロアマーロ、10%カベルネです。1990年代に国際品種を取り入れて造ったネロの新世代ワインとして誕生した1本です。香りはカベルネ由来のバルサミックなニュアンスとスパイシーさが特徴的で、ミントの香りも感じられます。味わいは、プリミティーヴォの柔らかさとまろやかさ、ネグロアマーロのしっかりとした骨格とタンニンが感じられます」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。赤系果実の熟した香りにフレッシュさが加わり、わずかに海を思わせる印象があります。味わいも同様にフレッシュでエレガント。果実感とタンニンが見事に調和しています。 |
フレッシュかつ凝縮感に溢れる樹上アパッシメントのプリミティーヴォ |
パッショーネ オーロ アパッシメント 2021 |
クレメンテ氏: 「樹上でアパッシメントして、より複雑味を引き出したプリミティーヴォです。エネルギッシュな印象を持つ完熟果実の香り。飲むと凝縮感があり、夏場のサレントのテロワールを感じることができます。リリース直後からスムーズに楽しめるスタイルです」 |
試飲コメント:深みのあるルビー色。凝縮した赤系果実と黒系果実と甘やかな香り。スパイスや土の要素、ドライフルーツのニュアンスも感じられます。口当たりは柔らかく、フレッシュなジャムのような果実感が印象的です。滑らかで甘やかな余韻が持続します。 |
多層的に広がる複雑味
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ネロ 2020 |
クレメンテ氏: 「ネロは、1998年に私の父がスーパープーリアとして造り上げたアイコンワインです。プーリアのデイリーワインとは異なる高級ワインを目指した1本です。ガンベロロッソやワインアドヴォケイトなどの評価誌で高評価を得ています。サリーチェ サレンティーノの2つの畑で栽培する土着品種ネグロ マーロ70%、国際品種カベルネソーヴィニヨン30%を使用しています。熟成はバリックで3年間と長期の瓶熟成を経ており、10年から20年の熟成が可能です。バルサミックやスパイスのニュアンス、品種由来のタンニンがしっかりと感じられます」 |
試飲コメント:ガーネット色。熟した赤系果実やレザー、スパイス、樽の要素が溶け合い、複雑で力強い香りが感じられます。味わいも同様に多層的で、黒胡椒のようなスパイスやバターのニュアンスが長く続き、熟した果実感とともに重厚な余韻が感じられます。 |
インタビューを終えて
「ドンナ マルツィア」は、デイリーやホームパーティにぴったりの気軽に楽しめる味わい。「アイコンワイン」は、高級感のある樽の風味に満たされます。「テロワールワイン」は、ブドウ本来の風味を感じ、食事のおともに最適。「カンタルピ」は、南国感をまといながらもエレガンスあふれる味わい。「オリジナルワイン」は、その名の通り独自の個性が光る仕上がりでした。
『ガンベロロッソ』『ベーレベーネ』だけでなく、『ルカマローニ』や『サクラアワード』など多くのガイド誌で、それぞれのワインが高く評価されています。ぜひ、驚愕のコストパフォーマンスを誇るコンティ ゼッカのワインをお楽しみください。
