2025/06/03
/
セバスティアーノ デ コラート氏 Mr. Sebastiano de Corato
標高400mにも及ぶプーリアの丘陵地ムルジャ独自のエレガンス!プーリアワインの品質向上に大きく貢献したカステル デル モンテの名門「リヴェラ」

プーリアの高品質ワインを確立した第一人者
中部の丘陵地「ムルジャ」が生むフレッシュ&エレガンス
当時のプーリアでは、地元消費向けのカジュアルなワインが主流でしたが、私たちはいち早く高品質ワインの生産に乗り出しました。プーリアワインの品質向上に取り組み、高品質ワインをブランドとして確立した第一人者だと自負しています。

DOCカステル デル モンテ地区、標高400メートルに及ぶ畑
私たちの拠点は、カステル デル モンテ地区アンドリアにあります。ここは、世界有数のオリーブオイル産地として知られ、広大なオリーブ畑が広がる地域です。また、ブッラータ発祥の地としても知られています。この地に150ヘクタールの土地を所有しており、そのうち半分がブドウ畑です。畑は大きく2つのエリアに分かれています。
全体の3分の2を占めるのが「ムルジャ」と呼ばれる丘陵地にある畑です。ムルジャとは古代語で「石」を意味し、土壌は土がほとんどなく、岩や石が非常に多いのが特徴です。数千年前は島だったとされるこのエリアは、プーリアの中でも標高が高く、約400メートルに達します。ムルジャは北東向きで海に開けており、海風が吹き抜ける冷涼で風通しの良い環境が整っています。

フレッシュな酸とエレガンスが光る、プーリア中部独自の個性
私たちは、プーリア中部ならではのスタイルを反映した、フレッシュな酸とエレガンスを備えたワインを目指しています。南イタリアの凝縮感あふれるワインとは異なる、軽やかで洗練された味わいが特徴です。なかでも土着品種のボンビーノ ネーロは、美しい酸をもち、アルコール度数も控えめで、バランスに優れたワインが生まれます。
冷涼な環境を好むボンビーノ ネーロや、シャルドネ、ソーヴィニヨンといった国際品種は標高の高い畑に植えています。一方、標高の低い畑には、暑さに強いネーロ ディ トロイア、モンテプルチアーノ、アリアニコ、フィアーノ、ボンビーノ ビアンコなどのイタリアの品種を栽培しています。
プーリアでいち早く国際品種を導入した先駆者
リヴェラ社は、プーリアで初めて国際品種を導入したワイナリーだと考えています。最初のヴィンテージは1985年。1970年代に、南イタリアで国際品種を取り入れようという動きがあり、その研究を進めていた教授たちと父が連絡を取り、「プーリアでは私が試す」と申し出たことがきっかけでした。標高の高い畑に植えることで、土着品種と同様にフレッシュでエレガントなスタイルを追求しています。
畑上部に見えるカステル デル モンテ城
「ボンビーノ ネーロ」「ネーロ ディ トロイア」
2つの土着品種の個性が引き出されたプーリア随一のワイン
現在、リヴェラ社では赤、白、ロゼをそれぞれ3分の1ずつ生産していますが、歴史的にはロゼワインで成功を収めたワイナリーだと考えています。1950年代半ばにはその地位を確立し、イタリア国内でもロゼワインのスペシャリストとして知られるようになりました。日本においても、モンテ物産による輸入のおかげで、「日本に初めて紹介されたイタリアのロゼワインのひとつ」として認知されたのではないかと思います。
そのロゼワインに使用しているのが、土着品種ボンビーノ ネーロです。8月初旬に収穫されるプリミティーヴォがアルコール度数の高い、ボリューム感のある品種であるのに対し、ボンビーノ ネーロはまったく異なる性格を持っています。プリミティーヴォよりも標高の高い畑で栽培され、9月下旬から10月初旬にかけて栽培しますが、すべての実が完全に熟すわけではありません。アルコール度数は12度程度にとどまり、淡い色調と高い酸を備えた品種です。

「ロゼワインを造るために存在する」土着品種ボンビーノ ネーロ
イタリア初のロゼワインDOCG認定の立役者「プンジローザ」
ボンビーノ ネーロは、ロゼワインを造るために存在すると言っても過言ではない品種です。私たちはこの品種を100%使用したロゼワインを造り続けており、ロゼワインのワイナリーとしての名声を築いてきたリヴェラ社にとって、ボンビーノ ネーロは非常に重要な存在です。ドイツ誌『ファルスタッフ』の「イタリアンロゼトロフィ」特集では、過去5年間で1位、2位、3位のいずれかに必ず入賞しているほどです。
こうした評価が後押しとなり、「カステル デル モンテ ボンビーノ ネーロ」が、イタリアで初めてロゼワインのDOCGに認定されました。現在、そのDOCG全体の約60%を占めているのが、「プンジローザ」です。プロヴァンス風の淡いロゼワインがトレンドでしたが、私たちは一貫してボンビーノ ネーロ本来の淡い色調のフレッシュなスタイルを守り続けています。

誰よりも早く品質を追求して手がけた、
他のプーリアの土着品種とは一線を画す、ネーロ ディ トロイア
もう一つの重要な土着品種、ネーロ ディ トロイアを主体に造るフラッグシップワインが「イル ファルコーネ」です。ワイナリーにとって大黒柱のような存在であり、私たちの赤ワインのスタイルはこの1本に集約されていると考えています。ネーロ ディ トロイアは、まだ誰も本格的にクオリティを追求していなかった時代から、イタリアの著名な農学者アッティリオ・シェンツァ教授とともに研究を重ねてきた品種です。
プーリアの土着品種の中でも特に晩熟で、収穫は10月中旬から下旬にかけて行われます。プリミティーヴォよりも約2ヶ月遅く、ネッビオーロやネレッロ マスカレーゼといった品種にも通じるスタイルです。チェリーやブルーベリーなどの果実感、酸が特徴的です。ただしタンニンが強く、創業以前はシンプルな赤ワインしか造られていませんでした。そのタンニンを和らげる目的でモンテプルチアーノをブレンドし、現在のスタイルが完成しました。

「何度飲んでも異なる表情を見せてくれる」
リヴェラ社が誇るフラッグシップ「イル ファルコーネ」
イル ファルコーネは、まるでシャトーで造られたような赤ワインです。単一畑ではありませんが、所有する中でも特に優れた畑のブドウを選んで使用しています。ネーロ ディ トロイアは5つの畑から、モンテプルチアーノは3つの畑から。それぞれの畑の個性が異なることで、ワインに複雑さと重層的な表情が加わります。
時代に合わせて微調整を重ねてきましたが、飲んだ瞬間に「これはイル ファルコーネだ」と感じてもらえる個性は、今も大切に守り続けています。もちろん、これより有名で美味しいワインは世界にはたくさんあるでしょう。しかし、その多くは一口目で「美味しい」と思ったら、それで終わってしまう。2杯目を飲んでも印象が変わらないことが多いんです。
イル ファルコーネは、最後まで完全にその全貌を明かさない奥深さを備えています。何度飲んでも、飲むたびに違う表情を見せてくれる。そんな魅力を持ったワインなのです。
香り高さと複雑さを兼ね備えたソーヴィニヨン |
テッレ アル モンテ ソーヴィニヨン カステル デル モンテ 2023 |
| セバスティアーノ氏: 「プーリアではソーヴィニヨンは珍しく、暑さの影響でアロマを保つのが難しいため、栽培と醸造には技術が求められます。ブドウは約25年樹齢で、夜間の収穫を行い温度管理を徹底しています。ワイナリー到着後すぐに冷却し、酸化を防いでアロマを保つ工夫がされています。ステンレスタンクで15日間発酵、シュールリー熟成は4カ月間コンクリートタンクで行い、複雑さを引き出しています。トマトの葉や少しパイナップルの香りがあり、トロピカルで太陽を感じる味わいです。」 |
| 試飲コメント:淡い麦わら色。白い果実や黄色い果実、白い花の香りに加え、温度が上がると南国果実の濃密さも感じられます。口に含むとフレッシュな酸が広がり、華やかで柔らかい味わいです。果実の甘さとともにやや柑橘の印象もあります。 |
フレッシュさとまろやかさが調和する優美なシャルドネ |
ラーマ ディ コルヴィ シャルドネ カステル デル モンテ 2022 |
| セバスティアーノ氏: 「ラーマ ディ コルヴィはシャルドネで造るトップレンジの白ワインです。9ヘクタール中、1.5ヘクタールに長期熟成向きのトッツェルというクローンを植樹して造っています。ブルゴーニュの白のような複雑さを目指し、トノー樽で発酵、熟成しています。暑いプーリアで木樽を使うことはリスクもありますが、リッチすぎず木のニュアンスを抑えたエレガントなスタイルを実現しました。香りの段階からフレッシュさを感じ、骨格とドライなアフターテイストが特徴です。」 |
| 試飲コメント:黄金色。パイナップルや桃のヨーグルトの香り。味わいは香り同様の柔らかさがあり、フレッシュな酸とまろやかさが美しく調和しています。余韻も長く、それでいてエレガントです。密度はありつつもパワフルすぎず、飲みやすいシャルドネです。 |
果実味豊かで厚みを感じるフレッシュなロゼワイン |
カステル デル モンテ ロゼ 2023 |
| セバスティアーノ氏: 「プンジローザ同様にボンビーノ ネーロ100%で造るロゼワインです。スタイルはプンジローザと異なり、よりフルーティでチェリーのような香りに加え、少しバターのようなニュアンスもあります。柔らかな口当たりとフレッシュな後味が特徴的です。」 |
| 試飲コメント:やや濃いロゼ色。ベリー系果実の香りがフレッシュに立ち上がります。味わいも香り同様にフレッシュで、ベリー系果実のニュアンスが際立っています。 |
50年もの長期熟成に耐えうる、
|
イル ファルコーネ カステル デル モンテ ロッソ リゼルヴァ 2018 |
| セバスティアーノ氏: 「イル ファルコーネは、私たちの大黒柱となるフラッグシップワインです。主要品種はネーロ ディ トロイア。チェリーやブルーベリーに加え、スミレやハーブのような北イタリア的な香りがあります。タンニンが強いためモンテプルチアーノをブレンドしています。先日試飲した1950年ヴィンテージは、まだまだ生き生きとしていたほど長期熟成型のワインです。DOCG規定の2倍以上に相当する6年間の熟成を経てリリースしています。第3アロマや奥深さを持ち、力強さとエレガントさ、フルーティさと複雑さのバランスが取れたワインです。一口ごとに違った表情が感じられるのも特徴です。」 |
| 試飲コメント:深みのあるルビー色。力強く凝縮した黒い果実やスミレの香りがあり、熟成感があります。味わいも香りに沿っており、森の果実やフレッシュな果実の深みを感じます。エレガントながら適度な骨格と滑らかなタンニン。そのタンニンによって、果実感の長い余韻を演出しています。 |
インタビューを終えて
リヴェラ社の歴史を象徴するようなロゼワインも印象的でした。それぞれに果実感のニュアンスは異なるものの、ボンビーノ ネーロ種と標高の高いカステル デル モンテならではの、フレッシュで繊細な個性をしっかりと感じることができました。
そして最後に試飲した、ネーロ ディ トロイア主体のフラッグシップ「イル ファルコーネ」。香り、味わいともに奥行きがあり、ストラクチャーとエレガンスが見事に両立した素晴らしい赤ワインでした。リヴェラ社のワインは、暑い季節にも心地よく楽しめる味わいだと思います。ぜひご堪能ください。








Posted in
Tags: