トレントDOC屈指のコストパフォーマンスを誇る「ロータリ」

2025/07/24

2025/06/06

フランコ ペドローニ氏 Mr. Franco Pedroni

山のスプマンテ「トレントDOC」屈指のコストパフォーマンス!約1600人の農家が集う、イタリア最古の協同組合が手がける「ロータリ」

1904年創業、トレンティーノ地方を拠点とするイタリア最古の協同組合のひとつ、メッツァコロナ社。ロータリはその傘下にあるスプマンテブランドで、イタリア初の瓶内二次発酵による原産地呼称「トレントDOC」屈指の造り手です。畑が位置するのは、ドロミテ山塊が広がる一帯。標高700メートルの山岳地帯を含む約1600人の農家の畑から高品質なブドウを厳選し、圧倒的なコストパフォーマンスを誇るスプマンテを生み出しています。その個性は、山のテロワールがもたらす酸とミネラル感が際立つスタイルです。今回は、メッツァコロナ社の輸出マネージャー、フランコ・ペドローニ氏にお話を伺いました。

イタリアで最も古い協同組合のひとつ「メッツァコロナ」
トレントDOCの生産量トップ3を誇る「ロータリ」

農家1600人が加盟する、イタリア屈指の協同組合
――メッツァコロナ社が手がける、トレントDOCの造り手「ロータリ」についてお聞かせください。

まず、メッツァコロナ社についてご紹介します。メッツァコロナ社は、1904年、オーストリア=ハンガリー帝国領だった時代に、11人の農家が集まりトレンティーノに設立した協同組合です。イタリアで協同組合が生まれ始めたのは1950~1960年代のため、私たちはその先駆けとなる存在のひとつです。現在では1600人の農家が加盟し、1軒あたり平均1.6ヘクタールの土地を所有。イタリア国内でも12番目の売上規模を誇るワイナリーへと成長しています。
11人の発足メンバー

イタリアで初めてDOC認定を受けたメトド クラシコ「トレント」
――スプマンテを造るようになったきっかけは何だったのでしょうか?

創業当初は、この地域を代表する黒ブドウ品種、マルツェミーノやテロルデゴの赤ワインを海外へ桶売りしていました。しかし、トレントがイタリアへ割譲されると、その状況が一変しました。トスカーナやシチリアといった産地はより安価な桶売りの赤ワインが造られていたからです。こうした背景のもと、トレントは方向転換を強いられたという歴史的背景があります。

ナポレオンの時代からシャルドネが持ち込まれていましたが、当時はアルプス気候下で完熟することが困難でした。転機となったのは、カンティーナからほど近い場所にある、サン ミケーレ アッラーディジェの醸造研究所による研究です。オーストリア領時代に設立されたこの施設で、トレントの気候に適した2つのシャルドネのクローンが発見されたのです。この成果により、白ワイン、そしてスプマンテの生産が本格化していきました。

そして1994年、イタリア初のメトド クラシコによるDOCとして、トレントDOCが正式に認定されました。原産地呼称こそ比較的新しいものの、背景には長い研究と歴史を持つワインです。

約200万本のトレントDOCを生産する「ロータリ」
そうした研究と挑戦を経て、1960年代にメッツァコロナ社はスプマンテに特化した「ロータリ」を設立しました。トレントDOC全体の生産量は約900万本にのぼり、ロータリはそのうち約200万本を生産。同DOCでトップ3の生産量を占めています。限られたエリアながら、生産者の数は年々増え、現在は69社にのぼります。

トレント北部のシャルドネが育む、唯一無二の個性
抜群のコストパフォーマンスを体現する生産者哲学

標高700メートル、ドロミテ由来の鉱物土壌、渓谷の斜面地、寒暖差30度
実はトレントDOCは、造り手やエリアによって異なる個性を見せるワインです。トレンティーノは小さなエリアですが、南部はガルダ湖の影響を受ける地中海性気候、中央部は大陸性気候、そして北部に進むにつれてアルプスの気候になります。ロータリの畑は主に北部に位置しており、南部に畑を持つ大手生産者とは明確に異なる味わいが生まれます。

北部はユネスコ世界遺産にも認定されたドロミテ山塊が広がるエリアです。石灰分と多様な鉱物を豊富に含むミネラリーな土壌が特徴です。畑は渓谷に広がり、標高は500~700メートルに達します。ガルダ湖から吹き上がる風が渓谷に沿って通り抜け、日中は気温が45度まで上がる一方で、夜間は15度まで冷え込みます。

山のテロワールがもたらす、際立つ酸とミネラル
ラインナップの多くがシャルドネ100%で造られています。高地の強い日差しと冷涼な空気のもとで育まれるブドウからは、トレンティーノ独自のシャルドネが生まれます。とりわけ際立つのは、垂直に伸びるような「酸」と、ドロミテ由来の「ミネラル」です。

たとえば「エクストラ ブリュット ブラン ド ブラン」は、まさにそのテロワールを表現した山のスプマンテです。品種由来のフルーティ感と酸を感じていただけると思います。トレントDOCを楽しむ際には、そのエリアに注目してみてください。同じDOCでも、その味わいは土地によって大きく異なるのです。

究極のセレクションで造るトップキュヴェ「フラーヴィオ リゼルヴァ」
ロータリの大きな強みは、栽培農家のネットワークを生かした「セレクション」にあります。各農家は栽培チームの指導を受けながらブドウを育て、収穫後はすべてのブドウが厳しい品質チェックを経て、基準に達したものだけが使用されます。

その中でも特に厳選された畑とシャルドネだけで造られるのが「フラーヴィオ リゼルヴァ」です。今回の試飲ラインナップの中でもトップキュヴェに位置付けられ、シャンパーニュで言うところのプルミエ クリュに相当します。『ガンベロロッソ』でのトレビッキエリ受賞歴は12回。広がりと奥行きを備えたトレントDOCです。

圧倒的なコストパフォーマンスを実現する畑、醸造設備、組合員への投資
――山岳地帯で育てたシャルドネを瓶内二次発酵で造りながら、非常に手頃な価格を実現している理由を教えてください。

それは、ロータリが掲げる明確なコンセプトにあります。大手生産者がブランド構築に力を注ぐ一方で、私たちは「レストランで使いやすい価格帯で高品質なワインを届けること」を重視しています。とはいえ、トレントDOCという小さな産地で、プロセッコやシャンパーニュのような巨大な市場規模に対抗する難しさも理解しています。

そのため広告宣伝よりも、ブドウの品質向上、醸造設備への投資、そして組合員への公正な報酬に注力しています。こうした取り組みによって、高いコストパフォーマンスを可能にしているのです。ブランド価値よりもワインの中身を大切にし、市場の動向に左右されず、適正価格で優れた品質を提供し続けています。私もスプマンテを愛する1人ですが、この価格帯でこれほどの品質を持つワインは存在しないと思います。

フレッシュ&フルーティ、上品な味わいのエントリーキュヴェ

ロータリ ブリュット NV

ロータリ ブリュット NV

ロータリのエントリーキュヴェ。シャルドネ100%。瓶内二次発酵24カ月以上。黄色いフルーツやリンゴ、柑橘系のアロマ。トーストやナッツの香りがエレガントで複雑。フレッシュ&フルーティで、とても柔らかくよいミネラル感。ソフトな酸と上品に持続する泡です。
試飲コメント:麦わら色。リンゴなどの白や黄色の果実の香りがあります。グリーンアップルのニュアンスも。フルーティで豊かな果実味とフレッシュさが心地よい味わいです。

繊細かつ複雑味にあふれる、36ヶ月熟成の日本限定キュヴェ

ロータリ ブリュット プラチナ 2019

ロータリ ブリュット プラチナ 2019

シャルドネ80%、ピノ ノワール20%で造られる日本限定キュヴェ「プラチナ」。ステンレスタンクとフランス産オーク樽(新樽100%)で12カ月熟成、瓶内二次発酵24カ月。リンゴや柑橘系のアロマが豊かで、フレッシュ&フルーティなワインです。
試飲コメント:黄金色がかった麦わら色。白や黄色い果実の繊細な香りに、ミネラルやハーブのニュアンスが感じられます。ドライでクリーミー。柑橘や南国果実の風味も徐々に現れるフレッシュな味わいです。

48カ月の瓶内二次発酵
シャルドネの魅力を最大限に表現したエクストラブリュット

ロータリ エクストラ ブリュット ブラン ド ブラン 2019

ロータリ エクストラ ブリュット ブラン ド ブラン 2019

シャルドネ100%。ステンレスタンクで6カ月、フランス産オーク樽(新樽30%)で6カ月熟成。瓶内二次発酵48カ月。熟したリンゴやパイナップル、ブリオッシュの複雑なアロマ。フレッシュな酸とミネラル感がバランスがよく合わさり、シャルドネの魅力を最大限に表現しているエクストラブリュット。
試飲コメント:黄金色に近い麦わら色。リンゴなどの瑞々しくジューシーな白と黄色い果実の香り。熟した果実のニュアンスも感じます。ミネラル感と豊かな柑橘類が調和した、クリーンな味わいが広がります。

瓶内二次発酵5年以上の厳選シャルドネ
深く豊かな風味に満たされるトップキュヴェ

ロータリ ブリュット フラーヴィオ リゼルヴァ 2016

ロータリ ブリュット フラーヴィオ リゼルヴァ 2016

厳選を重ねたシャルドネを使用して造られるトップキュヴェです。ステンレスタンクで6カ月、フランス産オーク樽(新樽30%)で6カ月熟成。瓶内二次発酵60カ月。蜜がたっぷりのリンゴやナッツなどのリッチなアロマ。長期熟成によって実現された深いコクと端正な泡立ちが素晴らしいワインです。
試飲コメント:やや深みと濃さのある麦わら色。熟した果実の豊かな香りがあります。濃厚なニュアンスも感じます。口に含んだ瞬間、黄色い果実の風味が広がり、スパイスの印象もあります。奥行きと広がりのある味わいで、豊かで長く持続する余韻があります。

フレッシュな酸と豊かな果実味が持続するロゼ スプマンテ

ロータリ ブリュット ロゼ NV

ロータリ ブリュット ロゼ NV

ピノ ノワール75%、シャルドネ25%で造るロゼ スプマンテ。瓶内二次発酵24カ月以上。チェリーや、リンゴ等のチャーミングで新鮮なアロマと繊細な酵母香。フレッシュな酸味と豊かな果実味が長く続き、ボディがあります。綺麗な泡が持続し上品です。
試飲コメント:淡いピンク色。繊細で華やかな赤い果実の香り。香り同様の要素を持つ味わいで、フレッシュで華やか。そして綺麗な酸が印象的です。

インタビューを終えて

ロータリは、飲むたびにそのコストパフォーマンスの高さに驚かされます。それを実現する「広告宣伝よりも、ブドウの品質向上、醸造設備への投資、そして組合員への公正な報酬に注力する」という哲学の話が非常に印象的でした。また、なぜトレントDOCでスプマンテが生まれたのかという背景も興味深かったです。かつてオーストリア=ハンガリー帝国領だったこの地がイタリアに編入され、冷涼な気候を活かしたシャルドネの研究を開始。その歴史の積み重ねが、いまのスプマンテ産地としての確かな地位につながっているのだと実感しました。

シャルドネ100%で造られる「エクストラ ブリュット」は、まさに山のスプマンテが表現された1本。ミネラル感とクリーンな酸のバランスが美しく、そのテロワールを感じることができました。そして、約1600人もの農家が加盟する協同組合だからこそ実現できる厳格なセレクションを経て生まれるトップキュヴェ「フラーヴィオ リゼルヴァ」は、完熟した果実の厚みと奥行きのある味わいに満たされました。ぜひ、ロータリのトレントDOCのラインナップをお楽しみください。