偉大なクリュ バローロ「ブルナーテ」の最大所有者チェレット

2025/08/04

2025/06/09

マッティア パリアッソ氏 Mr. Mattia Pagliasso

5つの村にクリュ バローロを所有し、偉大な「ブルナーテ」の最大所有者!世界的名声を誇るピエモンテ最上の造り手「チェレット」

3世代にわたり、ピエモンテを代表する名門として知られる「チェレット」。「最上の畑で最上のワインを造る」というポリシーのもと、バローロ、バルバレスコ、アスティに醸造所を構え、各地で高品質なワインを生み出しています。1970年代から造り続ける偉大なクリュ バローロ「ブルナーテ」、そしてエレガントなスタイルへと進化した人気ワイン「モンソルド」。伝統と革新の双方を追求しながら、ピエモンテ屈指の造り手として世界的な評価を築いてきました。今回は、そんな伝統を受け継ぎ進化を遂げたワインを試飲しながら、輸出マネージャーのマッティア・パリアッソ氏にお話を伺いました。

チェレットの伝統を支える象徴的存在
「アルネイス」「バローロ ブルナーテ」

いち早く造り始め、
40年間同じスタイルを貫くアルネイス

チェレットは、ピエモンテを代表するワインを数多く造っています。バローロの畑は、地区の約半数にあたる5つのコムーネを所有するまでになりました。また現在では、星付きレストランの経営を含む多角的な事業も展開しています。その中でも、チェレットの歩みを支えてきたのがアルネイスです。

チェレットのアルネイスは1985年に誕生し、今年で40周年を迎えました。今ではピエモンテを代表する品種のひとつですが、造り始めた当時は、まだ広く知られた存在ではありませんでした。80年代当時のチェレットは、他の生産者とは異なる発想を持ち、主流となっていたバローロやバルバレスコではなく、アルネイスの栽培に取り組んだのです。

このスタイルにたどり着くまでには約5年を要し、完成以来、スタイルもラベルデザインも一切変えていません。

イタリアで年間50万本が消費される、圧倒的な支持
現在、アルネイスの畑は100ヘクタールにおよび、チェレットの象徴的存在となっています。年間の生産本数は60~70万本。そのうち約50万本はイタリア国内で消費されており、地元の人々に深く親しまれています。海外への輸出においても重要な役割を果たし、国際的な評価を確立しています。

1970年代に生産開始
偉大なクリュ「ブルナーテ」の最大所有者

アルネイスよりも長い歴史を持つのが、私たちが1970年代から手がけているクリュ バローロ「ブルナーテ」です。バローロの中でも特に名高いこの畑は、合計で約30ヘクタールの広さがあり、現在は17の生産者が畑を所有しています。それだけ多くの造り手が欲しがり、造りたいと思う畑であることの証でもあります。

私たちチェレットは、幸運にもそのブルナーテで最大の所有者となっています。「チェレットのバローロといえばブルナーテ」と言われるように、ブルナーテも私たちのバローロにおいて象徴的な存在です。クリュ内において、私たちのブルナーテはトップ3に入ると自負しています。

丘の頂上一帯に畑を所有
味わいに奥行きを生む、変化に富む地形

ブルナーテは最も低い地点と高い地点で標高差が200メートルもあるダイナミックな地形です。畑に向かう道はなだらかではなく、ずっと上り坂が続きます。道は低いところからぐっと上がり、さらにその先へと続いていきます。所有区画は、丘の頂上に位置する一帯にあります。地形の変化に富んだこの畑こそが、ブルナーテの複雑で奥行きのある味わいを育んでいるのです。

伝統に根ざした革新で、さらに高まる品質

自社畑100%に移行して品質が急上昇
クリュの畑で造る日本限定バローロ

——バローロ コンテ デル ウニタが、以前よりもっと美味しくなったと思います。

実は、2018年以降は100%自社畑のブドウに切り替わりました。もともとは、買いブドウも使いながら造っていましたが、次第に自分たちの畑でまかなえるようになりました。

——ブドウはどこの畑のものを使用しているのですか?

主にはラ モッラ村のブルナーテ、セッラルンガ ダルバ村のプラポといったクリュ。もう一つは、カスティリオーネ ファッレットの小さな畑です。その畑だけはMGAに入っていません。だいたいこれら3つの畑のブレンドで造っています。

実はこのバローロ、日本限定のキュヴェなんです。チェレットの他のワインとはスタイルが異なります。15年~20年ほどの若い樹のブドウを用い、木樽での熟成期間も短めにしており、すぐに飲める味わいに仕上げています。

——このクオリティで、この価格は素晴らしいです。

それはよく理解しています(笑)。

エレガントに進化を遂げた大人気キュヴェ「モンソルド」
——モンソルド ランゲ ロッソも、スタイルが変わったように感じます。

ブレンド比率は毎年異なりますが、ここ2年ほどはカベルネの比率を減らし、メルローを増やしています。また、新樽の使用比率も見直し、以前は50%だったものを現在は15~20%にまで抑えています。これはチェレット全体のトレンドでもあり、ピエモンテ全体としても同様の流れがありますよね。

スタイルは変わりながらも、ワインの魅力は変わりません。フランスの品種で造りながらも、そこにピエモンテのキャラクターがしっかりと感じられます。そして、誰にでも受け入れられる個性があります。現在も、日本市場をはじめ、レストランや個人のお客様に広く親しまれており、認知度の高いワインであり続けています。
本拠地モンソルドの丘

「気軽に楽しめるネッビオーロ」を目指す新モンソルド プロジェクト
——以前伺った、「100年前はバローロと名乗れたモンソルドで、新しく取り組むプロジェクト」について、現在の進捗を教えてください。

現在、モンソルドの丘に植えられているカベルネ ソーヴィニヨンから、ネッビオーロへの植え替えを進めているところです。以前お伝えしたように、この場所はかつてバローロの範囲内でしたが、現在はエリア外となっており、ネッビオーロ ダルバとしてしか造ることができません。

そのネッビオーロを今のモンソルドにブレンドする予定はありません。あくまでも新プロジェクトのワインは、レストランや消費者のみなさんに、気軽に楽しんでいただけるスタイルに仕上げようと考えています。このプロジェクトは、10年後の実現を目指しています。

「夏にぴったりの味わい」
豊富なミネラルと、わずかな微発泡感が心地よいアルネイス

アルネイス ブランジェ 2024

アルネイス ブランジェ 2024

マッティア氏:
「アルネイス ブランジェは、砂質土壌を主体とする畑から豊富なミネラルが感じられる味わいです。果実味もありますが、前面には出すぎず、あくまでミネラルを活かしたワインで、夏にぴったりの味わいです。非常に飲みやすく、飲み心地も良いため、レストランで大変重宝されています。造り始めた1985年から醸造方法とスタイルは変わっていません。ステンレスタンクで醸造し、最終段階で若干の炭酸ガスを残すことで微発泡のプチプチとした飲み口を演出しています。これがフレッシュさを引き立てています。もう一杯飲みたくなるような仕上がりです。」
試飲コメント:淡い麦わら色。洋梨や桃などの白い果実に加え、熟した印象や白い花のような華やかさがあります。香りはフレッシュでフルーティー、そこに綺麗なミネラルも感じられます。口に含むと微発泡のようなピリッとした感触があり、香りと共通する果実の風味が広がります。ふくよかさがありつつ、非常にフレッシュな酸が舌の上を駆け上がります。

エレガントスタイルに進化
国際品種、バリック熟成で仕上げられた大人気キュヴェ

モンソルド ランゲ ロッソ 2022

モンソルド ランゲ ロッソ 2022

マッティア氏:
「チェレットの中で唯一、イタリアを語らないワインがモンソルドです。カベルネ、メルロー、シラーといったフランス系の品種で造られています。このワインが生まれた当時、バローロやバルバレスコには大きな革命が起きており、外部から造り手が集まり始めた時期でした。1990年代には、現在のチェレットの経営を担う世代が加わり、新たな試みとしてこのモンソルドのプロジェクトが始まりました。国際品種とバリックを使い、ランゲの土地でモダンなスタイルを表現する試みで、各品種を個別にバリックで醸造し、約1年半後に味を見て最終的にブレンドしています。ブレンド比率は毎年変わり、ここ2年はカベルネを減らし、メルローを増加。また、新樽の比率も以前の50%から15〜20%に抑えています。」
試飲コメント:綺麗に輝くルビー色。チェリーや黒系果実、ベリー系の果実に樽由来のニュアンスが溶け合い、スパイスの香りが感じられます。黒い果実の印象ながらも、全体として洗練された印象があり、ボリューム感も程よく整っています。口に含むと黒系果実とスパイスの柔らかな風味が広がり、骨格のあるボディとともに長い余韻が続きます。余韻には木樽由来と思われるバターやバニラのニュアンスがあり、エレガントに広がっていきます。過去のヴィンテージとは明確な違いを感じます。

2つのクリュ「ブルナーテ」「プラポ」で造る日本限定バローロ

バローロ コンテ デル ウニタ 2019

バローロ コンテ デル ウニタ 2019

マッティア氏:
「バローロ コンテ デル ウニタは、日本市場向けにスタイルもラベルも異なる仕様で造られたワインです。若い樹齢のネッビオーロで、木樽熟成期間を短めに設定し、すぐに飲めるスタイルに仕上げています。以前は買いブドウも使用していましたが、自社畑比率を上げて、2018年以降は100%自社畑のブドウを使用するようになりました。主にラ モッラのブルナーテ、セッラルンガ ダルバのプラポといったクリュに加えて、カスティリオーネ ファッレットの小規模な区画もブレンドしています。」
試飲コメント:淡いガーネット。ドライフラワーや繊細な赤系果実の香りに加え、枯葉や繊細なスパイスの香り。味わいはエレガントな果実味が印象的です。細かいタンニンが感じられ、穏やかでありながら優れた骨格を持ち、長く美しい余韻が続きます。

豊かながら上品な果実味が広がるエレガンス

バルバレスコ 2021

バルバレスコ 2021

マッティア氏:
「バルバレスコは、アジリとベルナドットという歴史ある2つの畑に、2018年から加わったガッリーナの畑を含む3つの所有畑のブレンドで造られています。温度管理されたステンレスタンクで発酵後、旧樽バリックでマロラクティック発酵を行い、最終的にスラヴォニア産とフランス産の非常に古い大樽で熟成します。2009年に完全にビオディナミへと移行し、ブドウの本質を保つことを重視しています。2010〜2011年は新樽使用でモダンな印象でしたが、2012年以降は現在のスタイルに移行しました。繊細でタンニンが溶け込んだ、若いうちから飲めるワインです。」
試飲コメント:ふちがガーネットよりで輝くルビー色。やや凝縮感のある赤系果実やドライフラワー、白胡椒、そしてミネラル感が感じられる香り。全体的にエレガントな印象です。口に含むと、豊かでありながらも上品な果実味が広がります。非常に長く続くエレガントな余韻。

バローロエリア、5つ村の個性が溶け合うクラシック バローロ

バローロ 2020

バローロ 2020

マッティア氏:
「このバローロは6つの畑のブレンドで造られています。私たちはバローロの11コムーネ中、5つに畑を所有しています。つまり、このワインにはエリア全体の半分が詰め込まれているんです。近年の暑さが続くため冷涼さがワイン造りにおいて重要になりますが、チェレットの畑は標高350〜400メートルと高いため高品質なワインが生まれます。2020年ヴィンテージはエレガントで、早くから飲めるヴィンテージに仕上がっています。」
試飲コメント:淡いガーネット色。華やかで力強く、複雑な香りです。チェリー系の赤系果実や花、枯葉のニュアンス。口に含むとフレッシュな酸とともに奥行きと凝縮感のある果実味が広がり、旨みも感じられます。優美さと充実感を兼ね備えた余韻が持続します。

深みと力強さを備えたクリュ バルバレスコ

バルバレスコ ベルナドット 2021

バルバレスコ ベルナドット 2021

マッティア氏:
「バルバレスコ ベルナドット2021年は、クラシック バルバレスコと同様の醸造過程を経ています。温度管理されたステンレスタンクで発酵後、旧樽バリックでマロラクティック発酵を行い、最終的にスラヴォニア産とフランス産の非常に古い大樽で熟成します。畑は冷涼なトレイゾの南側に位置しています。標高が高く急斜面。ミクロクリマ的にも収穫が遅くなるエリアです。粘土質土壌が多いのが特徴ですが、タンニンは柔らかいです。私たちが重視する酸がワインに溶け込み、暑い年でも酸がきちんと保たれています。」
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。注いだ瞬間から熟した果実と深みのある香りが立ち、潰した花ややや甘い果実のニュアンスも広がります。力強さも感じます。味わいも同様に力強さと深みがあります。全体的にバランスに優れており、柔らかい果実味と凝縮感が綺麗に調和しています。

1970年代から造り、最大面積を所有
チェレットを象徴するクリュ バローロ

バローロ ブルナーテ 2020

バローロ ブルナーテ 2020

マッティア氏:
「ブルナーテは、私たちが1970年代から造るクリュ バローロです。全体で30ヘクタールある中、17の生産者がひしめき合う存在感のある畑です。その中でチェレットは最大面積を所有しています。ブルナーテはチェレットを象徴するバローロとも言えますね。2020年ヴィンテージは繊細で、香りは熟した果実というよりフローラルな印象。すぐに飲めますが、長期熟成にも耐えるワインです。香りはすでに熟成が進み、発展した印象を持ちますが、口に含むと非常にフレッシュさがあり、食事と合わせても高い満足感が得られるガストロノミックなワインです。」
試飲コメント:ガーネット色。赤系果実のエレガントな香りに加えて、黒く熟した果実や、黒胡椒のニュアンスも感じられます。口に含むと香りで感じた要素がそのまま広がり、フレッシュでスパイシーな印象です。余韻には、グリップ感のあるタンニンとわずかなバターのニュアンスが持続します。

スカヴィーノ家と50年造り続けるモスカート ダスティ

モスカート ダスティ 2024

モスカート ダスティ 2024

マッティア氏:
「このモスカートは、表ラベルにも裏ラベルにもチェレットの名前はありません。それは、栽培農家としてスカヴィーノ家とチェレット家が共同で造るワインだからです。もともとは、最高品質のモスカートを造ることを目的として、モスカート生産地域の複数の農家が集まって始まったプロジェクトでした。現在は2つの家族のみで50年にわたって続いています。

最も重視しているのはワインのパーソナリティで、そのための畑選びがなされています。糖分も重要ですが、酸がしっかりあることが鍵です。チェレットは国内外での運送や販売を、スカヴィーノは畑の管理を担当しています。そしてワイン造りは両家の醸造家が協力して行い、設備面はスカヴィーノ側にあります。スカヴィーノ家はまさに最高のパートナーです。50年にわたる協働はまるで結婚生活のようで、仕事であると同時に人生そのものでもありますね。」

試飲コメント:淡い麦わら色。華やかで白い果実やマスカット、やや柑橘系の香りが立ち上ります。味わいには白い果実の要素があり、後からレモンのような柑橘系のフレッシュな酸が一気に広がっていきます。

インタビューを終えて

美味しさに磨きがかかるチェレットのワイン。今回試飲して、彼らが一貫する「伝統」と品質を追求する「革新」の融合を一つひとつのワインに感じました。

なかでも印象的だったのが、「バローロ コンテ デル ウニタ」と「モンソルド ランゲ ロッソ」です。コンテ デル ウニタは、100%自社畑のブドウに切り替わり、使用するのはラ モッラのブルナーテやセッラルンガ ダルバのプラポといったMGAの畑。さらに美味しくなった味わいと、そのコストパフォーマンスにも驚かされました。一方、モンソルドは、従来のモダンなスタイルを継承しながらも、より洗練されたエレガンスをまとっていました。果実味、スパイス感、樽のニュアンスが調和し、一体感のある仕上がりが印象的でした。

そのほかのワインも素晴らしい仕上がりで、とりわけクラシック バローロは圧巻でした。バローロ地区の約半数となる5つの村の畑からなる構成により、力強さと華やかさ、そして旨みや優美さが見事に同居した、複雑で充実感あふれる味わいでした。ピエモンテを代表する名門チェレットのワインを、ぜひご堪能ください!