シチリア西部トラーパニのオーガニック生産者「フナロ」

2025/09/09

2025/06/18

クレメンテ フナロ氏 Mr. Clemente Funaro

猫ラベルで人気、超コスパのオーガニック生産者!シチリアの豊かな自然と無農薬ブドウから生まれる高品質ワイン「フナロ」

シチリア西部トラーパニ県に根ざす家族経営ワイナリー「フナロ」。三世代にわたりブドウ栽培を続けてきた家業を継ぎ、2003年から本格的にワイン造りをスタートさせた生産者です。ワイナリーを率いるのはフナロ家の三兄妹。「その土地のブドウの特徴を最大限に映す」という哲学のもと、自然豊かな環境で無農薬で健全なブドウを育て、多彩で高品質、そしてコストパフォーマンスに優れたワインを生み出しています。今回は、2年ぶりにクレメンテ・フナロ氏にお話を伺いました。

シチリア西部トラーパニに根ざすオーガニック生産者
豊かな自然で育まれた高品質な土着&国際品種

――2年ぶりのインタビューとなります。東京は猛暑が続いていますが、シチリアと比べていかがですか?

東京のほうが暑いですね(笑)。シチリアも暑いですが、1日中その暑さが続くわけではありません。日中は気温が上がっても、夜にはぐっと下がります。この昼夜の寒暖差が、ブドウの成熟において重要な役割を果たしています。

フナロが拠点を置くのは、シチリア西部トラーパニ県です。トラーパニは、古代セリヌンテの遺跡やジンガロ自然保護区などがあり、観光地としても非常に魅力的な場所です。この美しい自然に囲まれたトラーパニでワインを造れることに誇りを感じています。ワイナリーは標高450メートルに位置し、空気が澄み渡る晴れた日には、トラーパニ沖に浮かぶ島々まで見渡すことができます。

60年以上にわたり育まれてきた多彩なブドウ畑
1960年に現在の畑の土地を取得して以来、徐々に規模を拡大し、2つのエリアに畑を所有しています。標高450メートルに位置するサンタ ニンファと、標高200メートルのサレーミです。総面積は約60ヘクタール。カタラット、インツォリア、ネロ ダーヴォラなどの土着品種に加え、シャルドネやシラーといった国際品種も栽培しています。

ワイナリーは3人兄妹で運営しています。ジャコモが醸造を担当し、ティツィアーナがカンティーナでのホスピタリティや経営を担っています。そして、私は海外セールス担当です。2003年にジャコモが醸造を担うようになってからは、特に土着品種に力を入れたワイン造りも進めてきました。

「美味しいワインは健全なブドウから」
無農薬栽培、フレッシュなブドウを収穫

2011年にビオロジック認証を取得し、現在も無農薬で畑作業を行っています。美味しい料理が優れた素材からできるのと同じで、美味しいワインは健全なブドウからできます。だからこそ畑の管理を徹底し、品質とフレッシュさを最優先にしています。

収穫は早朝5時から始め、すぐに選果。その後は破砕してタンクに入れ、速やかに発酵へと移します。可能な限り人の手を介在させず、常に健全なブドウを用いることを意識しています。また、品質管理が行き届く範囲を守るため、数百万本といった大量生産は行っていません。

「シチリアの風景が浮かび上がる」
品種や土地の特性を最大限に映し出すワイン造り

畑から醸造まで細部を徹底して生まれるエレガンス
かつてのシチリアを象徴していたのは、重く力強いスタイルのワインでした。しかし現在は、より親しみやすく、飲み疲れしない味わいが求められています。その実現には、酸がきちんと残り、糖度が高すぎないブドウを厳選することが不可欠です。

私たちのモットーは「細部へのこだわり」です。ステンレスタンクで造るネロ ダーヴォラは、お客様から「エレガントで美味しい」と評価されています。木樽とは異なり、ステンレスタンクはワインの欠点を覆い隠せません。だからこそ、細部まで目を配り、ブドウ本来の個性を引き出すことで、エレガンスが表現できているのです。

――ワインのスタイルは、兄妹3人で話し合って決めるのですか?

造る前に3人で意見を出し合います。不思議なことに、いつも考えが合致します(笑)。醸造を担うのはジャコモですが、完成したワインについては3人で意見を交わしながら方向性を確認しています。

猫ラベルに込められた思い
シチリアらしさを映すユニークな存在

ガット ビアンコやガット ネロについては「なぜ猫のラベルなのか」とよく聞かれます。私たちはもともと猫が好きで、家でも飼っていますし、カンティーナにも居ついた猫がいます。個人的な意見ですが、猫は個性の強い動物だと思っていて、その特徴をワインに重ねているんです。

例えば、ガット ビアンコに使用する土着品種ジビッボは、独特の香りがあり、好みが分かれることもありますが、その魅力に惹かれる人も多い品種です。そのはっきりとした個性こそ、猫ラベルに込めた理由です。ジビッボの香りを感じると、強い太陽と乾いた大地が広がるシチリアの風景が自然と浮かび上がります。

ブドウの特徴を最大限に表現するクリュ シリーズ
「ピンツェーリ」「モンドゥーラ」「ヴェルデリチャ」

――ピンツェーリをはじめ、ラベルに品種名を入れていない理由は?

これらのワイン(ピンツェーリ、ヴェルデリチャ、モンドゥーラ)は、いずれもクリュシリーズにあたります。それぞれ区画の名前を冠しており、長い時間をかけて研究を重ねた畑だからこそ、独自の名称をつけました。

フナロの哲学は、その土地で育ったブドウの特徴を最大限に映すこと。このクリュシリーズは、その精神を体現したワインであり、他のラインナップ以上にテロワールを強く主張するワインなのです。

フレッシュさが際立つミュラートゥルガウ100%微発泡

ヴィヴール 2022

ヴィヴール 2022

クレメンテ氏:
「アペリティフから食中酒まで幅広く楽しめる微発泡ワインです。ミュラートゥルガウ100%をシャルマ方式で造るワインはシチリアでは珍しいです。フレッシュ&フルーティで豊かさもあります。テラスや夏で食べるフリットやサラミに最適ですね。」
試飲コメント:麦わら色。リンゴなどの白い果実のフレッシュな香り。きめ細やかな泡で、繊細ながらフレッシュな酸が広がる味わいです。

ジューシーな果実感と酸が溶け合う、
シャルドネ100%で造るメトド クラシコ

メトド クラシコ 2021

メトド クラシコ 2021

クレメンテ氏:
「7月下旬に収穫したシャルドネ100%で造るメトド クラシコです。24ヶ月瓶内二次発酵しています。パンや青リンゴなどの要素を持つ持続性のある香りと味わい。綺麗な酸が特徴です。」
試飲コメント:透明感のある麦わら色。ややバターやバニラのニュアンスに黄色い果実、凝縮した果実の香りが繊細に感じられます。レモンなどの柑橘系やジューシーな青リンゴのニュアンスが広がる味わいです。クリーミーな泡と鋭い酸が余韻まで持続します。

フレッシュ&ミネラリーで親しみやすさ溢れるインツォーリア

インツォーリア 2023

インツォーリア 2023

クレメンテ氏:
「インツォーリアは過小評価されている土着品種だと思います。早飲みタイプではありますが、親しみやすい味わいが特徴です。香りは洋梨のニュアンスがあり、フレッシュな酸、ミネラル、塩味が感じられます。食前酒としてや海鮮、シンプルな料理に最適です。」
試飲コメント:やや濃さを持った輝く麦わら色。洋梨や石のようなミネラル感の香りがあります。香り同様の要素を持った味わいで、なめらかな口当たりです。

華やかさとミネラル感が見事に調和
土着品種ジビッボとインツォーリアで造る人気キュヴェ

ガット ビアンコ 2023

ガット ビアンコ 2023

クレメンテ氏:
「ガット ビアンコは、すぐ開けて美味しいワインです。ジビッボ由来の華やかな香りとインツォーリア由来の塩味とミネラルが調和しています。ジビッボだけではアロマティックすぎるため、インツォーリアで甘さを抑えています。夏にぴったりな白ワインです。」
試飲コメント:麦わら色がかった輝く黄金色。華やかで力強い香りが広がり、花や南国果実、桃の印象があります。フレッシュで親しみやすい味わいで、やさしい果実感と酸が心地よいです。

優れた骨格と南国果実が際立つクリュ グリッロ

ピンツェーリ 2023

ピンツェーリ 2023

クレメンテ氏:
「ピンツェーリは、グリッロ100%のクリュシリーズのワインです。ピンツェーリはシチリアの方言で思考や閃きを意味し、幸せを願うワインです。トロピカルフルーツの香りが広がり、複雑味としっかりした骨格があります。ハーブやグリーントーンも感じられます。濃い味付けの魚料理と相性が良いです。」
試飲コメント:透明感のある黄金色。フレッシュかつ熟した黄色い果実の香り。パイナップルのような南国果実が感じられる、フルーティで親しみやすい味わいです。後口にわずかな苦味が現れます。

柑橘類が漂う、複雑で華やかなクリュ カタラット

モンドゥーラ 2023

モンドゥーラ 2023

クレメンテ氏:
「モンドゥーラは、カタラット100%で造るクリュシリーズのワインです。南国果実の要素に加え、ピンクグレープフルーツやオレンジ、マンダリンなどの柑橘のニュアンスがあります。綺麗な酸も特徴です。食前酒や食中酒に向き、複雑味のある料理と合います。」
試飲コメント:淡い透明感のある黄金色。凝縮した果実や酸に華やかさを伴う香り。味わいはなめらかで優しいながら、鋭い酸が感じられます。白い花、柑橘の皮を思わせる複雑さがあり、ジャスミンを思わせる印象もあります。

柔らかく優れた飲み心地のクリュ シャルドネ

ヴェルデリチャ 2022

ヴェルデリチャ 2022

クレメンテ氏:
「ヴェルデリチャはシャルドネ100%で造るクリュシリーズのワインです。メトドクラシコと同じ畑です。黄色い果実やバナナを想起させる風味で、綺麗な酸が持続します。シチリアらしいシャルドネという印象ですね。」
試飲コメント:透明感のある黄金色。黄色い果実やバナナなどの南国果実のニュアンスの香り。香り、味わいともに柔らかさがあります。しっかりとした酸と果実味が調和した飲み心地の良さがあります。

複雑かつフレッシュ&ミネラリーな大樽熟成グリッロ

コッレツィオーネ ディ ファミーリア グリッロ リゼルヴァ 2021

コッレツィオーネ ディ ファミーリア グリッロ リゼルヴァ 2021

クレメンテ氏:
「コッレツィオーネ ディ ファミーリアは大樽熟成のグリッロ100%です。樽由来のトースト香は控えめで、グリッロの良さを活かしたワインです。砂糖漬けの果実やバニラ香が感じられる複雑味があります。食前酒、食中酒、食後酒と幅広いスタイルが表現されています。」
試飲コメント:黄金色。樽由来のニュアンスにフレッシュな黄色い果実やミネラルの香りが溶け合っています。樽由来のバニラや南国果実といった豊かな味わいが広がります。

シチリアを象徴するネロ ダーヴォラ&シラー
軽やかな赤系果実が広がる人気キュヴェ

ガット ネロ 2023

ガット ネロ 2023

クレメンテ氏:
「ブレンド比率や品種は年によって変わりますが、基本的にはネロダーヴォラとシラーが主体です。ネロ ダーヴォラ由来の果実味とシラー由来の黒胡椒やスパイスが特徴で、食前酒や軽めの料理に合います。」
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。赤いベリーのフレッシュな香りが広がります。味わいは香り同様の要素に加え、スパイシーさが加わる印象です。

シチリアでは冷やして魚料理と楽しむ、
ステンレスタンク醸造ネロ ダーヴォラ

ネロ ダーヴォラ 2023

ネロ ダーヴォラ 2023

クレメンテ氏:
「ステンレスタンクで発酵熟成したネロダーヴォラです。現地では冷やして提供するレストランも多いワインですね。チェリーやストロベリー、プルーン、リコリス、レザーの風味が感じられます。酸度の高さと柔らかいタンニンが特徴です。魚にも合わせられる赤ワインで、グリルしたマグロと好相性です。」
試飲コメント:紫色。赤い果実や花、リコリスのチャーミングな香り。香り同様の要素を持つ味わいで、ほどよく複雑で飲みやすさがあります。

フナロが誇るトップキュヴェ
深みと優しさを兼ね備えた樽熟成ネロ ダーヴォラ

オムニス 2020

オムニス 2020

クレメンテ氏:
「標高450メートルのサンタ ニンファのネロ ダーヴォラで造る、最も重要な赤ワインです。発酵はステンレス、熟成はバリックと大樽を半分ずつ1年間行います。オムニスはラテン語で、全てを意味する言葉。より煮詰めた果実のジャミーなニュアンス、トースト、コーヒー、カカオの深い味わいがあります。味付けのしっかりしたジビエ料理など合います。」
試飲コメント:ルビー色。フレッシュな赤い果実や完熟ベリー、コーヒー、チョコなどを感じる複雑な香り。その香りと同様の要素を持つ味わいです。タンニンが存在感を持ちながらも優しく、樽由来の風味と果実感が伴った余韻が長く続きます。

フレッシュで華やか、やさしい甘みが持続するパッシート

パッシート 2022

パッシート 2022

クレメンテ氏:
「畑で2週間天日干しして糖分を凝縮させたブドウで造るパッシートです。酸と果実味を損なわない程度の干し方のため、決して甘ったるいわけではありません。むしろドライに感じるほどです。杏のドライフルーツ、ハチミツ、ナッツ、オレンジの花といった華やかさが感じられます。カンノーリやカッサータなどと相性が良いです。」
試飲コメント:やや淡い琥珀色。フレッシュな黄色い果実とドライフルーツ、ハチミツの香り。なめらかな口当たりで、複雑ながらやさしい味わいが持続します。

インタビューを終えて

親しみやすさと品種ごとの個性が際立ち、さらにコストパフォーマンスにも優れたフナロのワインにはいつも魅了されます。なかでも土着品種ジビッボとインツォーリアで造られる人気キュヴェ「ガット ビアンコ」は、華やかさとミネラル感が調和した味わいで両品種の魅力を存分に感じることができました。

さらに、ブドウの特徴を最大限に映し出した白ワインのクリュシリーズ3種も印象的でした。シチリアの太陽を思わせる豊かな果実味に加え、フレッシュな酸が共通しながら、それぞれに異なる個性を持っています。「ピンツェーリ」はフルーティで心地よい苦味の余韻、「モンドゥーラ」は柑橘系の爽やかさと華やかさ、「ヴェルデリチャ」は優れた骨格を備えていて、各キュヴェの特性が明確に感じられました。