2025/08/27
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パオロ リブランディ氏 Mr. Paolo Librandi
新DOCG「チロ クラシコ」誕生に大きく貢献!古代品種を蘇らせ、カラブリアを世界に轟かせた第一人者「リブランディ」

道なき道を走り続け、
カラブリアを世界に広めた先駆者
当時、父は数学教師や薬局の仕事をしていました。彼が本格的に参画した1975年以降、畑の拡張が進み、より高品質なワイン造りへと方向転換しました。

カラブリア初の『ガンベロロッソ』最高賞トレビッキエリ受賞
この頃から国際品種の栽培も始まり、クリトーネやグラヴェッロといったワインが誕生しました。1980年代から90年代にかけて、それらのワインが『ガンベロロッソ』や『ワインスペクテーター』といったガイド誌で高評価を受けました。
とりわけグラヴェッロは、初リリースからわずか2年で、カラブリア初の『ガンベロロッソ』最高賞トレビッキエリを受賞しました。
この成功をきっかけに、リブランディだけでなくカラブリア州のワインそのものが世界的に認知されるようになり、大きな発展を遂げました。その後は畑への投資も進み、現在は合計240ヘクタールを所有し、そのうち130ヘクタールがブドウ畑です。
スーパーカラブリア「グラヴェッロ」
「リブランディの原点」
挑戦と勇気で切り拓いた、2代目ニコデモ・リブランディ氏
――2006年に初めてリブランディにインタビューさせていただきました。『突撃インタビュー』開始2年目のことです。ニコデモさんが自身のワインを売るために、教師の仕事をしながら車にワインを積み、カラブリアからドイツやロンドンへ向かったという話は今でも鮮明に覚えています。
北欧にも行っていました。いつも「アポなし」です。街に着くと電話ボックスの電話帳を開き、エノテカやレストランに片っ端から電話して飛び込み営業をしていたのです。しかも父は英語が話せず、頼りはイタリア語と少しのフランス語だけ。
北ドイツのハンブルクでは、車いっぱいのワインを運んできた父たちを見て「クレイジーだ」と言われたそうです。しかし、その時の勇気と「クレイジーだ」とされる行動こそが最終的に成功を呼び込んだのだと思います。父は本当に優秀な人でした。そのエピソードこそ、リブランディの原点と言えるでしょうね。
2代目ニコデモ・リブランディ氏
カラブリア初のDOCG誕生
州を象徴する赤ワイン「チロ クラシコ」
土地、ブドウ、文化、料理、言葉――多様性に富むカラブリア
カラブリア州はイタリア南部の半島に位置し、「イタリアの中の小さなイタリア」と表現できるほど多様性に富んでいます。私たちの拠点であるチロは海に近い場所にあり、内陸には山岳地帯が広がり、海と山に挟まれた地形が生物多様性を育んでいます。
北イタリアのようにポルチーニ茸が採れる場所もあれば、マンゴーのような南国果実が栽培される場所もあるほど豊かな環境条件があります。
また、歴史的にさまざまな国の支配を受けてきたため、ギリシャや古代ローマ、アラブ、ノルマンの影響が残り、近代はフランスやスペインの文化もあります。方言や料理など、街ごとに異なる文化が独自に根付いています。ブドウ品種も多彩で、この土地ならではの個性豊かなワインが生まれています。

新DOCG「チロ クラシコ」誕生
カラブリア州を代表する産地の一つが「チロ」です。その象徴的な赤ワイン「チロ クラシコ」が2025年ヴィンテージからDOCGに昇格することになりました。これは、カラブリアを改めて知ってもらう好機であり、重要なワインとして認められる第一歩になると考えています。(ガリオッポ90%以上、マリオッコとグレコ ネロのみ最大10%ブレンド可)
規定上、最低3年の熟成が必要なため、リリースするのは2028年頃を予定しています。現時点では州からの最終通達はまだですが、私たちのチロ クラシコDOCGに相当するワインは条件を満たしており、現在バリックで熟成中です。
リブランディが守り抜いた、
現代カラブリアを体現する多彩な土着品種
私たちは畑を取得後、カラブリアに数多く存在する土着品種の研究に着手してきました。探し集めて植樹した古代品種は、最終的に200種以上に達しました。そのうち8品種が、正式にカラブリアの土着品種として登録されました。
小さな一歩にもかなりの時間がかかります。研究畑がある「ロザネーティ」を取得したのは1998年で、その後27年をかけてようやく適正な区画に適正な品種を植えられる体制が整い、現在に至っています。ガリオッポも、クローン登録までに14年かかりました。
シャトー ムートン ロートシルトのフィリピーヌ夫人が残した「ワイン造りは難しくない。ただし最初の100年だけが大変だ」という言葉は、まさに私たちの経験を言い表していると思います。これからも研究を続けながら微調整を重ね、さらなる品質向上を追求していきます。
ロザネーティの畑
ネレッロ マスカレーゼの親
熟成ポテンシャルを秘めた白品種「マントニコ」
マントニコは消滅しかけた白ブドウ品種です。畑を見つけた時は、数ヘクタールほどでした。私たちは熟成力を秘めた辛口ワインとしてのポテンシャルを見出しました。近年の研究では、マントニコとサンジョヴェーゼの交配によってネレッロ マスカレーゼが生まれたことも明らかになっています。
醸造家ドナート・ラナーティ氏が最高評価
凝縮感とスパイス際立つ黒ブドウ品種「マリオッコ」
マリオッコもまた、消滅の危機にあった品種です。土着品種を求めてカラブリア中を巡っていた際、古木のガリオッポ畑の一角にマリオッコが混植されていることに気づきました。シラーやマルベックのように黒い果実やスパイシーなニュアンスを備えており、色調や凝縮感を補うために用いられていたと考えられます。
さらに、1999年にドナート・ラナーティが醸造家に就任し全てのワインを試飲した際、「赤の中では最も優れている」と評価した品種でもあります。
チロを象徴する歴史的ブドウ品種「ガリオッポ」
ガリオッポはチロ クラシコDOCGに使用する品種です。ピノ ネロやネッビオーロ、ネレッロ マスカレーゼに通じる特徴を持ちます。しっかりとしたタンニンと酸を備えているため長期熟成の可能性を秘めています。古くからこのブドウが大切に栽培されてきたのも、そうした資質ゆえだと言えるでしょう。
ガリオッポ100%で造るチロ ロザート
日常を支え、主役として根付いたロゼ文化
――カラブリアでロゼが親しまれているのは、白ワインを飲む機会が少なかったからですか?
そうです。1960~1970年のカラブリアでは、ワインは栄養源と捉えられていました。多くの家庭が小さな畑を持ち、家で手軽に造れるロゼを栄養として飲んでいたのです。1980年代頃までは、夏でも白ワインを飲む習慣はありませんでした。
加えて、もともと黒ブドウ(赤ワイン)の品質が高い産地なので、クオリティの高いロゼが生まれる土壌があります。他の産地ではロゼが副次的になりがちですが、カラブリアをはじめアブルッツォ、プーリアといった南部では「ロゼワインを造るためにブドウを育てる」という文化が根付いているのです。
カラブリア独自の気候と食文化に寄り添う
食文化も深く関係しています。カラブリアの伝統料理は、辛味や脂身を生かした力強い味付けが多いのが特徴です。海に恵まれた州ですが、魚を日常的に食べるようになったのはここ100年ほどのこと。
それ以前は侵略や荒波を避けるために人々は内陸に暮らしていました。そうして野菜や豚肉を中心とした料理が伝統となり、暑い気候も相まってフレッシュなロゼワインが根付いたのです。
グレコビアンコ100%
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チロ ビアンコ 2024 |
| パオロ氏: 「チロ ビアンコは、グレコビアンコ100%のワインです。カンパーニャのグレコ ディ トゥーフォとは全く異なる品種です。カラブリアは暑い気候ですが、白ブドウの中でも収穫期は遅く、9月下旬から10月にかけて成熟します。土地の個性をよく表す品種で、このワインからは海や地中海のニュアンスが感じられます。フレッシュでミネラル感があり、シンプルで飲みやすいワインです。」 |
| 試飲コメント:淡い麦わら色。黄色い果実や白桃、蜜のような香りにミネラルを感じます。口に含むとフレッシュかつネクターのような果実感が広がり、柑橘系とミネラルが溶け合っています。 |
畑の20%を占めるシャルドネ主体
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クリトーネ カラブリア ビアンコ 2023 |
| パオロ氏: 「私たちが唯一国際品種だけで造るワインで、80年代に試験的に造り始めたシャルドネです。当時カラブリアではシャルドネを飲む習慣はありませんでしたが、今では一番売れているワインに成長しました。約240ヘクタール中50ヘクタールをこの品種にあてているほどです。」 |
| 試飲コメント:淡い麦わら色。フレッシュかつ凝縮した果実の香り。味わいは柑橘系の酸がシャープに広がり、わずかな苦味を感じさせます。 |
エレガントでミネラル感あふれる、
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エフェゾ カラブリア ビアンコ 2023 |
| パオロ氏: 「エフェゾはマントニコ100%のワインです。もともと消滅しかけていた品種で、熟成ポテンシャルを見出して造り上げました。マントニコとサンジョヴェーゼの交配によってネレッロ マスカレーゼが生まれたことも明らかになっています。バリックで発酵熟成し、さらに瓶熟6ヶ月を経てリリースされます。サフランや火打石のニュアンスがあり、ミネラル感も備えています。」 |
| 試飲コメント:輝きを持つ深みのある黄色。パイナップルや砂糖漬けの柑橘、蜜やミネラルの香りが広がります。柔らかい口当たりながら鋭い酸が全体を引き締め、後口にバターやバニラの余韻が続き、深みとエレガンスが溶け合っています。 |
親しみやすくフレッシュな味わい
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チロ ロザート 2024 |
| パオロ氏: 「カラブリアでは最も飲まれているチロロザートです。かつてはセニエ法でしたが、近年は白ワイン同様の造り方のため明るい色調になっています。地元の代表的なペアリングは辛いイワシ料理です。」 |
| 試飲コメント:玉ねぎの皮色。注ぐとベリー系果実のフレッシュな香りが広がります。酸と果実味が程よく調和し、余韻も心地よく親しみやすさのある味わいです。 |
チェリー系果実とタンニンが調和
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チロ ロッソ クラシコ 2022 |
| パオロ氏: 「ガリオッポ100%で造る赤ワインです。5日間のマセラシオンを経て、1年間ステンレスタンクで熟成。手頃な価格で気軽に飲め、ピザやラザニア、ポルペッタなどあらゆるイタリア料理に合います。温度を少し下げても美味しく楽しめます。」 |
| 試飲コメント:淡いルビー色、ややガーネットがかった色調。チェリー系のチャーミングな香りにエレガントさが加わります。味わいも香り同様に心地よく、親しみやすさに加え、綺麗なタンニンが調和しています。 |
マリオッコ&メルロー
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カラオンダ 2023 |
| パオロ氏: 「リリースしてから3年目を迎えた新しいタイプのワインです。マリオッコにメルローをブレンドした、インターナショナルシリーズ。アルコール度数13度と控えめで、残糖も若干残し、メルローの果実感を引き出しているため、カジュアルに楽しめる味わいです。グラスワインや食前酒、バーベキューに最適です。温度は14度ほどで飲むのがおすすめです。」 |
| 試飲コメント:やや深みのあるルビー色。黒い果実の熟した香りが感じられます。フレッシュな酸にスパイス感が加わり、黒い果実の味わいが広がります。 |
樹齢80年以上ものガリオッポを使用
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ドゥーカ サンフェリーチェ チロ ロッソ リゼルヴァ 2021 |
| パオロ氏: 「ドゥーカ サンフェリーチェは伝統を象徴するガリオッポ100%のワインです。所有畑とチロの24農家のブドウを使用しています。農家の中には樹齢80年以上を持つ人もおり、研究や研修を共に行っています。10日間のマセラシオン後、3年間ステンレスタンクとセメントタンクで熟成。豚肉料理と好相性で、酸とタンニンが脂を流し次の一口を誘います。20年の熟成が可能で、デカンタージュでさらに魅力が引き出されます。」 |
| 試飲コメント:やや淡いルビー色。赤い果実や凝縮果実の香りに華やかさと複雑さが同居しています。口に含むと凝縮感と酸がエレガントに調和し、こなれたタンニンが奥行きを生みます。胡椒やリコリスのニュアンスがあり、デキャンタージュでさらに複雑性が増します。 |
12ヶ月バリック熟成のマリオッコ100%赤 |
メゴーニオ カラブリア ロッソ 2023 |
| パオロ氏: 「メゴーニオはマリオッコ100%のワインです。マリオッコは、1999年にドナート・ラナーティが醸造家に就任した際に最も評価した品種でもあります。造り始めた当初はバリック4個分だけの量でしたが、徐々に増やし、現在は非常に注力するワインの1つにまで成長しました。15日間のマセラシオン、12ヶ月のバリック熟成を経て造られます。」 |
| 試飲コメント:ルビー色。凝縮した黒系果実の香りが広がります。味わいはスパイスやシナモンのような甘やかさを持ちながら、明るい果実感が全体を引き締め、エレガントに仕上がっています。 |
ガリオッポ&カベルネソーヴィニヨン
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グラヴェッロ カラブリア ロッソ 2022 |
| パオロ氏: 「グラヴェッロはリブランディの運命を変えたワインです。ガリオッポ60%、カベルネ ソーヴィニヨン40%の比率は今も変わっていません。15日間のマセラシオン、1年間のバリック熟成で造られます。名前は、複雑さを意味するグラーヴェと、ッロという親しみを持つ語尾を組み合わせた造語です。私が初めてグラヴェッロを飲んだ時、ラムチョップやジビエ料理との相性に感動しました。その記憶が今も忘れられません。」 |
| 試飲コメント:濃いルビー色。凝縮した果実や潰した花といった華やかな香りがあります。口に含むと柔らかさと優れた骨格が調和した印象で、樽由来の甘やかさと果実が綺麗に溶け合います。余韻が長く持続します。 |
インタビューを終えて
試飲したチロ ロザートは心地よい果実味と軽快な飲み心地で、思わず何かを食べたくなってしまう1本。イタリアでも地域問わずワインショップでよく見かけるワインです。フラッグシップのグラヴェッロは、凝縮した果実感と華やかさに、樽由来のニュアンスが美しく溶け合った素晴らしい余韻に満たされました。ぜひご堪能ください。













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