サンジョヴェーゼ100%スーパータスカンの原点「モンテヴェルティーネ」訪問レポート

2025/11/20

2025/10/20

モンテヴェルティーネ社 マルティーノ マネッティ氏 タンクレディ ライミッツ氏 Mr. Martino Manetti Mr. Tancredi Reimitz

サンジョヴェーゼ100%スーパータスカンの原点「レ ペルゴーレ トルテ」!創業当時の造りを変えず、唯一無二の個性を守り続ける「モンテヴェルティーネ」訪問レポート

2025年10月、サンジョヴェーゼ100%スーパータスカンの原点レ ペルゴーレ トルテの造り手モンテヴェルティーネを訪問してきました。ラッダ イン キャンティに構えるカンティーナは、創業当時の面影がそのまま残っている、あたたかな雰囲気に包まれていました。

古い仕立ての古樹をそのままの形で残している歴史的な畑

カンティーナに着くとまず出迎えてくださったのが、2021年からモンテヴェルティーネで働き始めたタンクレディさん(オーナーのマルティーノさんの甥)。マルティーノさんはカンティーナの作業が終わったら合流するということで、お忙しい時期に来てしまったな、とちょっと恐縮しました。

そんな私の気持ちを察したのか「今、このタイミングで来てもらったのは本当に素晴らしいですよ。ワインは、ブドウからワインへと姿を変えていっている最中で、カンティーナからはとてもいい匂いがしています」とにこにこと話してくださり、カンティーナ見学がスタートしました。

(最初にカンティーナのすぐ隣の畑についてタンクレディさんが説明してくださいました)


この畑は1982年に植樹した古い畑です。カポヴォルト トスカーノという古い仕立て方になります。1本のブドウの樹から2本の枝を伸ばしていて、それぞれの先端が地面に向くようになっている、つまり頭が下向き(カポヴォルト)なのでこの名前になっています。

1つの枝からは12から14の芽が出て、割と背も高くなります。密植ではなく、ブドウの樹の間隔が広いですよね。これは、将来的な視点も見据えてます。気候がだんだんと暑くなってきているし、雨も少ないとブドウがきちんと成熟するのが難しくなりますが、こうして間隔をあけていることでブドウはゆっくりと育っていき、結果、正しく成熟します。

この畑と、もうひとつペルゴーレ トルテという名前の畑が自社畑の中でも樹齢が高く、レ ペルゴーレトルテはこの2つの古樹のブドウだけで造っています。古樹なので少しずつ寿命が来ますが、新しい樹を植えたりすると畑全体の生育バランスが崩れてしまうので、植え替えることはしていません。

他の畑のサンジョヴェーゼとは違う個性を持つペルゴーレトルテの畑

畑はいくつかの区画に分かれています。このエリアの丘は全般的に大きい石が多くみられるアルベレーゼという土壌ですが、ペルゴーレトルテの畑の土壌はよりやわらかい石があって、鉄分が含まれているので土がスミレ色っぽく見えます。だからペルゴーレトルテのサンジョヴェーゼは他の畑とは味わいが異なるのです。

痩せた土地ではありますが、その分ミネラルが豊富で。そしてしっかりと酸を持つワインになります。果実味が強く、アルコール度数が高くなっても酸がしっかりあることはとても重要なポイントです。

醸造を行うカンティーナと熟成用のカンティーナ

では、カンティーナを見ていきましょう。モンテヴェルティーネには2つのカンティーナがあります。ひとつは醸造スペース、もう一つは熟成スペースです。

区画ごとに別々のタンクで発酵を行います。この時期は、果汁がワインに変化し終わるタイミングになります。発酵の間、1日に2回、タンクの下部から液体をチューブで抜いて上からその液体をかけていきます。タンクの上部には濡れた果皮がかぶさっているので液体は酸化しません。この工程によって果皮から香りの成分などを抽出していきます。

発酵の間、温度管理はしていません。温度管理をしないため、セメントタンクを使います。これは昔からずっとそうです。セメントタンクは温度変化がほとんどないか、あってもゆっくりなので、自然なリズムで発酵が進みます。モンテヴェルティーネのサンジョヴェーゼは果皮が厚く抵抗力があります。だからゆっくりとデリケートに果皮からの成分を抽出していきます。そして、この工程の間、私達は一切果皮には触れません。

発酵は22~25日間ほどです。発酵が終わったらタンクの下部の扉をほんの少し開けてワインを取り出します。ここで最初に出てくる部分を「フィオーレ」と呼んでいます。レ ペルゴーレ トルテとモンテヴェルティーネは、フィオーレだけを使います。

フィオーレを取り出した後、タンク内にはたっぷりと湿った果皮が残ります。この果皮をゆっくりプレスして得たワインがピアン デル チャンポーロになります。

創業当時からの“シンプル、伝統的、手作業”によるワイン造りを貫き、美味しいワインにすることが大事

では次に熟成用のカンティーナをご案内します。この部屋は元々馬小屋でした。1971年~1972年にカンティーナとして改装しました。樽はフレンチオークです。

(さらに奥へと移動)


こちらの熟成スペースはカンティーナの中で一番古い場所で、創業当初はこのスペースだけでワインを造り、熟成させていました。ここがモンテヴェルティーネの始まりの場所、ということになります。この場所は、レ ペルゴーレ トルテだけを熟成させています。一番古い大樽で25年ほど使用しています。

(狭いらせん階段を下りて地下の熟成庫へ移動)

ここはバリックの熟成庫です。レ ペルゴーレ トルテはここに1年間寝かせた後、上の大樽に移してさらに1年間熟成させています。私達は毎年3月にワインの大移動を行います。まず、大樽からボトリングするためにワインを抜き取ります。大樽が空いたらバリックに入っていたワインをそこに移し替えます。そして空になったバリックに(前年に収穫した)一番新しいワインを入れていきます。

バリックはだいたい6年ほど使用します。新樽だけ使うことはなく、年数の異なる樽を色々と使い、樽のニュアンスをワインに与えないようにしています。

見て頂いたとおり、私達のワイン造りはいたってシンプルで、伝統的で、そして手作業です。時間はかかりますが、その結果、美味しいワインになることが一番大切だと思っています。

1971年ヴィンテージのボトルからストックされている圧巻のライブラリー

(更に進むと古いボトルが静かに寝かされているスペースに)

ここは私達のライブラリーです。1971年のボトルからストックして、ここで保管しています。非常にたくさんのヴィンテージがありますよ。そして時々、機会を作って試飲をしています。

最新ヴィンテージと2003年のピアンデルチャンポーロを試飲してきました

(試飲スペースに移動。入り口の上の梁の上にペルゴーレトルテの全ヴィンテージのボトルが並んで飾ってあって見ごたえがありました!)

まず、ピアン デル チャンポーロの2023年です。2023年は暑いヴィンテージだったので凝縮感のあるリッチな味わいに仕上がっています。先ほど説明した通り、プレスした果汁で造っていますが、もともとはレ ペルゴーレトルテとモンテヴェルティーネだったものなので、このピアン デル チャンポーロの中にもその2つが入っている、ということですね。

生産量的には、40%がモンテヴェルティーネ、35%がレ ペルゴーレ トルテ、25%がピアン デル チャンポーロになります。ピアン デル チャンポーロはどちらかというとイタリア国内での消費が多いです。私達の中では一番低価格になるので、それが理由かもしれません。

次はモンテヴェルティーネ2022年です。サンジョヴェーゼに、少しカナイオーロとコロリーノをブレンドしています。ピアン デル チャンポーロとは違いますよね。もちろん、2022年はクラシックな年だったので、そのあたりもこの2つのワインの違いになっているとは思います。

3つ目はレ ペルゴーレ トルテ2022年。現在、販売中のヴィンテージになります。日本にはもう到着して、今、スリーボンドさんの倉庫で寝かせているところじゃないでしょうか?

長い船旅を終えて届くわけですから、ワインはしばらく休ませることが大切です。以前、アメリカに行ったときに届いてすぐのレ ペルゴーレ トルテを飲んだことがあるのですが、全く別のワインでした。日本までは届くまでにもっと日数がかかっているのでその分休ませて欲しいですね。

そして最後に特別なワインを飲みましょう。ピアン デル チャンポーロの2003年です。これは今朝抜栓しました。私達の中ではベーシックでシンプルなワインになるわけですが、こうして飲むと長期熟成ができるワインだということがわかります。このような状態を保っているのは、私達のセラーから一度も動かしたことがないボトルだということも理由かもしれませんが、特に凝縮感が強いワインというわけではなく、軽やかさがあり、しっかりとした酸があるということも大きな理由だと思います。この2003年も、今飲んでもなお酸がしっかり感じられます。そして、私達のワインはどれも塩味があります。これもワインが長期熟成できる理由になっています。

創業者セルジオ氏の友人で画家のアルベルト マンフレディ氏が描いた女性の顔をラベルに採用

レ ペルゴーレ トルテのラベルは、父セルジオの友人だった画家のアルベルト マンフレディ氏によるものです。1982年から毎年、レ ペルゴーレ トルテのために女性の顔のデザインを描いてもらっていました。2001年に彼が亡くなり、1999ヴィンテージからはマンフレディ氏のご家族と一緒に、彼がこれまでに描いた女性の顔の中から選んでいます。ヴィンテージの個性をイメージするような女性の顔を選んでいますね。

そもそも女性の顔に決めたのには2つ理由があります。まず、マンフレディ氏が描く女性の絵を父が大好きだったこと。2つ目は、ワインのスタイルです。骨太でがっしりとしたワインだったなら別の選択になっていたかもしれませんが、レ ペルゴーレ トルテはエレガントなワインです。だからそれに合うと考えたのです。

(並べられたボトルの中に他のデザインとは異なるラベルがありました)
このワインは、この地での50年を記念して造った特別なワインで「ペルゴーレ 50」と言います。2013年ヴィンテージのワインで2017年にリリースしました。750mlを1500本、マグナムボトルを400本瓶詰めしました。一人の女性だけが描かれたものではないですが、デザインはアルベルト マンフレディのものです。

父は、ワインを造ると決めた時、すぐに飲めるワインではなく、長期熟成できるワインを造ろうとしていました。恐らく、今よりもそういうワインを造るのは難しくはなかったと思います。少なくとも20年前は今のこの時期(10月中旬)ぐらいに収穫していました。今は9月末です。暑くなってきたおかげで、レ ペルゴーレ トルテもリリースしてすぐに美味しいワインになっています。

温暖化に対しては、収穫時期を早めたり、葉っぱを残して房に日陰を作ったり、ネットを貼ったりしています。ネットは雹対策でもあります。いずれにしても、そのヴィンテージごとに対応を考えてやっています。2024年は寒かったのでそういう問題はあまりなかったです。2024年はとても美味しいワインになると思いますよ。

レ ペルゴーレ トルテとモンテヴェルティーネのブドウも入ったスタンダード サンジョヴェーゼ

ピアン デル チャンポーロ 2023

ピアン デル チャンポーロ 2023

ピアン デル チャンポーロの2023年です。2023年は暑いヴィンテージだったので凝縮感のあるリッチな味わいに仕上がっています。先ほど説明した通り、プレスした果汁で造っていますが、もともとはレ ペルゴーレトルテとモンテヴェルティーネだったものなので、このピアン デル チャンポーロの中にもその2つが入っている、ということですね。

生産本数が最も多い、ワイナリー名を冠した「モンテヴェルティーネ」

モンテヴェルティーネ 2022

モンテヴェルティーネ 2022

モンテヴェルティーネ2022年です。サンジョヴェーゼに、少しカナイオーロとコロリーノをブレンドしています。ピアン デル チャンポーロとは違いますよね。もちろん、2022年はクラシックな年だったので、そのあたりもこの2つのワインの違いになっているとは思います。

ヴィンテージの個性をイメージするような女性の顔をラベルに採用

レ ペルゴーレ トルテ 2022

レ ペルゴーレ トルテ 2022

レ ペルゴーレ トルテ2022年。現在、販売中のヴィンテージになります。日本にはもう到着して、今、スリーボンドさんの倉庫で寝かせているところじゃないでしょうか?

長い船旅を終えて届くわけですから、ワインはしばらく休ませることが大切です。以前、アメリカに行ったときに届いてすぐのレ ペルゴーレ トルテを飲んだことがあるのですが、全く別のワインでした。日本までは届くまでにもっと日数がかかっているのでその分休ませて欲しいですね。

インタビューを終えて

ワイナリーでお話を聞き、実際にどのように造っているのかを見聞きして、本当にシンプルな造りだと肌で感じました。古い畑はそのままの状態で残し、そこから得られるブドウを小さくて古いカンティーナでワインにしていく。世界中で大絶賛されるモンテヴェルティーネのワインはこうして生まれるのか、と感動しました。

モンテヴェルティーネのワインはもう何年も飲んできて、本当に大好きなワインです。クリーンで滑らかで、エレガントで、いつ飲んでも包容力のあるワインだと感じていました。2003年のピアン デル チャンポーロも本当に素晴らしくて、この日に飲んだ中で一番印象に残りました。「造り方を決して変えるな」という父セルジオさんの教えを忠実に守るマルティーノさんのワインはこれから先も世界中で愛され続けるに違いありません。