30年ほど前、米を減らしアルコールやアミノ酸を添加して、安くて大量にできる酒が主流だった時代に、無添加で高品質な純米酒造りを決意した大木代吉本店の現社長。
戦後の米不足な時代に米を減らし、アルコール、糖類、グルタミンソーダ、酸味料などを加えて造った三倍増醸酒(いわゆる三増酒)が造られていましたが、「添加物に頼らない酒を造りたい」と、薄めても増量できる濃いお酒の研究をしていた研究者の指導の下、有機米を使い濃厚で旨みが強い自然な酒にこだわって、ふくよかな甘みと旨みを持つ濃厚な酒を造りはじめたのでした。
しかし、その間に嗜好の流れが変わり淡麗辛口の日本酒が好まれるようになり、この日本酒はほとんど売れないまま。しかし、その後も大木代吉社長は自分の考えを捨てることなく、30年間このお酒を造り続けたのでした。
そんなある日、社長婦人の洋子さんが、お弁当のおかずにこのお酒を使って料理して持たせたところ、息急ききって帰ってきた息子さんが、
「おかあさん。今日のお弁当とってもおいしかったよ」
と言ったのだそうです。
その日のお弁当で変わったことといえば、このお酒を使ったこと。
以来この日本酒はお料理に使うといいのかもしれないと思ったそうです。
そして、そんな話を、良い食品をつくる会の創設メンバーに話したところ、会のメンバーだった有名高級珍味メーカーで使用して非常に良いと評判になり、この話が口伝えにプロの間で広まって、つぎつぎと、名料亭、名シェフの間で使われるようになったということです。