ヴァイラが造る、数百年前に愛されたネッビオーロのオマージュ

バローロ村を代表する造り手ヴァイラが、17世紀に造られたネッビオーロワインのレシピをもとに造り上げたランゲ ネッビオーロ「クレア イルンガ チ」です。当時造られていたようなクリスピーな日常酒を表現しています。イチゴやサクランボに少しミントの香りとフレッシュな味わいです。

あくなき探求心で造られた原点回帰ネッビオーロ

「シルキーなマディラワインと同じくらい甘く、ボルドーワインと同じくらい渋く、シャンパンと同じくらいキレがある」著名なワイン愛好家でもあるアメリカ合衆国第3代大統領トーマス ジェファーソンは、1787年のピエモンテ旅行の際に味わったネッビオーロについてそう記しています。その著書を当主アルド ヴァイラの旧友であるダレル コルティ氏がアルド氏に紹介し、そのあと興味を持ったアルド氏が息子のジュゼッペ氏にも読み聞かせました。ジュゼッペ氏も他の文献から「19世紀半ば以前まではネッビオーロは発泡性もあり、質の高いワインではなかった」と記されていることをずっと気になっていました。

その後、醸造学を学んでいる頃に出会ったのが1606年に当時ピエモンテを支配していたサヴォア家のジャン バティスタ クローチェが書き残した17世紀のワインの醸造レシピでした。それをきっかけに、アルド氏とジュゼッペ氏はかつてのネッビオーロを知るために、まるで実験をするかのようにワイン造りを始めました。翌年の春、彼らはジェファーソンの著書をアルド氏に紹介したダレル コルティ氏と一緒に試飲するために、数本のワインを持ってカリフォルニアへと向かい、ともに分かち合いました。

そして次のヴィンテージから「クラレット JC」とラベルを付けて約3,000本をリリース。名前はボルドーワインを愛したジェファーソンの時代のボルドーワインの呼び名「クラレット」、ジェファーソンの「J」、クローチェとコルティの「C」が由来。ただ、リリース後にボルドーワイン協議会からクラレットを名乗ることを禁止されてしまい、現在の名前に至ります。

現当主アルド・ヴァイラ氏とミレーナ婦人は非常に穏やかでピエモンテは勿論、他の産地の造り手からも慕われる人格者。醸造や栽培の経験や知識を若い世代に伝えることを重視していて、若い醸造家達の憧れの存在にもなっている。現在は息子のジュゼッペも参加し家族経営を続けている。

美しく均整の取れたスタイルのバローロ

『ワインは美味しいのは当然で、“安全”で“清潔”で“美しい”ものでなければならない。』そして、『リンゴジュースを飲んだらリンゴの味しかしてはいけない。同じようにバローロを飲めばネッビオーロの味がすべき。樽由来の甘味や香、そしてタンニンもバローロには必要ない。』現にヴァイラのバローロは美しい均整の取れた酒質で素直にフルーツを感じさせる。熟成と共に妖艶さを増していくがネッビオーらしさは崩れない。発酵はステンレスタンク（一部大樽）で行っている。自然酵母でゆっくりと発酵を進める。タンクのあらゆるところで糖分が二酸化炭素を造り果帽を押し上げることが重要（１日に２回は足で櫂入れを行う）。

ネッビオーロはカベルネやメルローと違い果汁にアントシアニンや色々な要素（香味成分も果皮に多い）を含まないのでこのフォラトゥーラ（櫂入れ）は非常に大切。特に樹齢の高いネッビオーロは収量が落ちるだけでなく、果実そのものが小さくなり、果汁に対する果皮のバランスが若い樹と比べて高くなる。果皮の割合が高くなる訳でより一層フォラトゥーラが重要になってくる。

『果皮比率の高い高樹齢のネッビオーロは多くの要素をワインに与えます。高樹齢であれば過度の抽出も必要なく適度なフォラトゥーラをしてあげるだけでバローロは偉大さを備えます。』アルド氏は様々な挑戦を続けている。醸造学校の卒業論文は“白ワインにおけるマロラクティック発酵”だったそうで、当時憧れていた品種リースリングを植樹。ドイツ系リースリングと古い友人であるマルセル・ダイスの１００年以上の畑から無作為に取った色々なクローンを植樹したそう。

『単一クローンでは複雑味を産まないのは明らかマルセル・ダイスは早くからそれに気付いていた』当初、全く売れなかったというリースリングは今ではランゲ地方だけでも１４の造り手がリリースする人気品種となった。ヴァイラは全ての品種で素晴しいワインを造っている。中でもドルチェットは秀逸。通常は収量が落ちる為３０年程度で引き抜かれるがコステは５０年、フォッサーティも２７年程度と高樹齢。ネッビオーロ同様ピュアで曇りのないワインでチェリーやスミレの香が爽やかに香るエレガントなドルチェットを造ります。