ビセルノのトップキュヴェの1つ「イル ピノ ディ ビセルノ」

ボルゲリの北、ビッボーナに拠点を置くスーパータスカンの造り手「テヌータ ディ ビセルノ」。名門アンティノリ家が手掛けるトップキュヴェの1つ「イル ピノ ディ ビセルノ」です。赤いベリー系の果実やコーヒー、リコリス、カシスなどの複雑ながらもエレガントで芳醇な香り。果実味あふれるふくよかな味わいと、きめの細かいシルキーなタンニンで、バランスの良い余韻が続きます。

豊かな果実味とスパイスが溶け合うエレガントなイル ピノ 2021年

2025年3月、当主ニコロ マルツィーキ レンツィ氏にお話を聞きました。

「ワイナリーの名を冠するトップキュヴェ、ビセルノに並ぶ上級ワインのイル ピノ ディ ビセルノです。ビセルノ用のブドウがイル ピノに使われることはありません。その逆も然りです。そうすると両者の味わいが似てしまいますし、どちらかの品質が下がってしまいます。イル ピノは、深みとエレガンスを兼ね備えており、優れたバランスと心地よい飲み口が特徴です。2021年はクラシックなタイプのワインです。2016年や2019年と同様に日照量の多い暑い年でした。リッチな印象があり、今でも美味しく飲めますが、これからさらに変化していくポテンシャルも感じられます」

2024年3月にイル ピノ2021ヴィンテージを試飲しました。濃いルビー色。新鮮な果実とドライフルーツが溶け合う。フレッシュかつジャミーな香り。甘やかさと華やかさを感じます。味わいは全体的にエレガント。黒系果実を主体にした豊かな果実味が広がり、スパイシーさを伴う余韻が持続します。

ワインガイド評価

『ジェームズサックリング』95点（2021ヴィンテージ）

非常に明るく焦点が定まっており、ノーズはアルデンテ・ベリー、オレンジピール、スミレのアロマ。最後はレーシー。歯ごたえもある。今飲んでも美味しい。飲んでもいいし、持っていてもいい。（2024年8月）

オルネッライア、マッセートを産み出したアンティノリ伯爵が実現させた最後の伝説「テヌータ ディ ビセルノ」

「テヌータ ディ ビセルノ」はイタリア最高峰のワインと称される伝説的ワイン「オルネッライア」と「マッセート」を生み出した名門アンティノリ家のロドヴィコ アンティノリ伯爵が自身の最後で最高の夢として実現させたプロジェクトです。

オルネッライアを売却！アンティノリ現当主の兄と兄弟で取り組む初めてワイナリー

ロドヴィコがこのプロジェクトをスタートさせたのは、世界中の羨望の的となっていたスーパートスカン「テヌータ　デル　オルネッライア」を売却した直後の2002年のことです。思い切った決断にロドヴィコは世界中のワイン愛好家から注目を集める訳ですが、彼の兄で、名門アンティノリの名声を築いたアンティノリ家26代目現当主ピエロ アンティノリ伯爵と初めて兄弟で新たなワイナリーを立ち上げます。

「マッセート」の土壌にも通じる偉大な畑で新たにカベルネフラン種に挑戦

テヌータ ディ ビセルノはトスカーナの西部、ティレニア海を臨む北にビッボーナ、南にボルゲリに挟まれたワインの銘醸地、アルト マレンマの丘陵地に所在します。この土地はサン テミリオンとポムロールの特徴を併せ持つ、メルロー種の超高級ワイン「マッセート」の土壌に通じるものがありながら、ロドヴィコはカベルネフラン種の栽培にポテンシャルを見出し、カベルネフランを主体としたワイン造りを行うことを決断します。ボルゲリの地から生み出してきた数々の伝説的ワインと同様、ボルドースタイルに傾倒しながらも新たな挑戦でした。

シンデレラワインを産み出す天才「ミシェル ロラン」をコンサルタントに迎える

この挑戦を成功させるためにロドヴィコが声をかけたのは、「オルネライア」や「マッセート」を一緒に産み出し、フランスの「シャトー ル パン」や「シャトークリネ」、カリフォルニアの「ハーランエステート」等、無名だったワインを一躍高級ワインに引き上げた「シンデレラワイン」を次々産み出した天才「ミシェル ロラン氏」でした。長年の友人でもあったロラン氏はこの申し出を快諾します。ロラン氏をコンサルタントに迎え本格的に

ワイン造りがスタートします。

多種の性質が重なり合う土壌と海から吹き込む風が可能にする突出したワイン造り

45haの自社畑には2001年から2005年の間にカベルネフランを中心にメルロー、カベルネソーヴィニヨン、プティ ヴェルドが植樹され2003年には「インソリオ デル チンギアーレ」のファーストヴィンテージが造られました。石灰質、石が多い土質や、砂質、泥質など、多種の性質が重なり合う土壌とティレニア海から吹き込む冷涼な風や反射光などの好条件が突出したブドウ造りを可能にしています。

トスカーナに始まったばかりの新たな伝説「ビセルノ」

最初の取り組みから実に10年経った2012年、プロジェクト正式発表後、市場は熱狂と共に「ビセルノ」のワインを受け入れ、ワイナリーで寝かせていたバックヴィンテージには世界中のワイン評価誌が高得点を連発し、瞬く間に世界中の一流レストランやソムリエの間で争奪戦となる入手困難な「シンデレラワイン」となりました。オーナーであるロドヴィコ アンティノリ伯爵と伝説のメンバーがタッグを組んだ「ビセルノ」。「トスカーナに新たな伝説が始まった」と年間僅か500ケース程の「ビセルノ」巡って世界中から熱い注目が集まっています。