過酷な環境で造られる生産本数わずか800本の稀少なワイン

世界遺産チンクエテッレの村リオマジョーレの造り手ルチアーノカペッリーニが造るデザートワイン「シャケトラ」。平均樹齢50年のブドウを陰干し、ゆっくりと熟成させて造り上げた甘美な味わいで、人々を魅了していますが、生産量が非常に少ないため、イタリア国内でも目にする機会が非常に少ない、希少なデザートワインとなっています。

無農薬の畑で育った古樹を陰干し

ルチアーノカペッリーニの畑は、チンクエテッレの断崖絶壁にあります。現在、1ヘクタールの自社畑と0.5ヘクタールの借り畑でブドウを栽培しています。表土は段々畑を造るために砕いた岩盤の砂利で覆われています。ルチアーノの母ジューリアがおこなっていた無農薬での栽培を厳守。シャケトラにするブドウは、標高150～300メートルにある古いブドウの樹を使っています。

シャケトラにするのは全体の2割程度の最良のブドウ。収穫後3ヶ月程度陰干しし、その後25日間に及びスキンコンタクトを行いながら低温で発酵させます。さらにステンレスタンクで12ヶ月間、ボトルでさらに12ヶ月間熟成させます。

繊細な芳香に富む甘美な味わい

シャケトラは土着品種のボスコを主体に、華やかさが特徴のヴェルメンティーノ、ブレンドを引き立てるアルバローラの3種類のブレンド。微かに赤みを帯びた黄金色でグラスを回すとワインの高い粘性がうかがえます。干したアプリコット、干したイチジクや砂糖漬けを思わせる香りにこがし麦やローズマリー、シナモン、さらにダージリンティーを思わせる香り。口に含むと甘美な果実味とそれを支えるしっかりとした酸味が広がっていきます。魅惑的なアロマに包まれる長い余韻。美しいフィニッシュに至るまで体に染み渡っていく、深い味わい。まさに至極のデザートワインです。

チンクエテッレのひとつ、リオマッジオ―レの郊外ヴォストラで7代に亘ってブドウ栽培を行ってきたカペッリー二家。現当主ルチアーノが2004年に自らのワイン造りを行うべく立ち上げた小さなカンティーナが「ルチアーノカペッリーニ」です。ワイナリーとしての歴史は浅いですが、代々ブドウ栽培をこの地で行ってきた伝統と新たな技術の融合を当初より熱心に進めてきました。協同組合が担ってきたこの地のワイン造りとは一線を画した、大地の天恵と彼の個性が光るワインを産み出しています。

チンクエテッレについて、16世紀の古文書『ジェノヴァ年代記』（1537年）には「チンクエ･テッレは急斜面で不毛の土地ながら、人々が知恵を絞ってブドウを栽培し、ワインを作っている。多くの王侯貴族がそのワインをテーブルに置くことを大きな誇りにしている」と書かれています。今でこそ、チンクエ･テッレの5つの村々は世界遺産に登録され、景勝地として名声を誇っていますが、元来この土地は11世紀に要塞として生まれ、その後、1000年もの間、隣の村との往来にも船を使うという孤立した環境にありました。

人の侵入を拒むかのような切り立った断崖絶壁。ここでのブドウ栽培の困難さは想像に難くありません。ルチアーノカペッリーニは現在1haの自社畑と0.5haの借りた畑で自ら栽培しています。表土は段々畑を造るために砕いた岩盤の砂利で覆われています。母ジューリアが行っていた無農薬での栽培を厳守してる一方、通常テンドーネで整枝されていますが、ルチアーノは、より地表に近く収量管理を行いやすいことからグィーヨへの切替を進めています。シャケトラについては標高150～300mで樹齢の低地にある古いブドウの樹からつくられています。

畑での作業を重視するルチアーノが醸造家として指名したのはこの地で幾多の銘醸ワインを手掛けるジョルジオ･バッチガルピ。24時間のクリオマセレーションの後、個別に低温発酵で果実味を引き出し発酵を行った後はステンレスタンクでのみ熟成を行い、一切樽は使用しません。一方シャケトラは収穫後、11月初旬まで陰干しした葡萄を使用。21日間かけてスキンコンタクトして発酵。その後2年間タンク内熟成を行い更に1年間の瓶熟を行っています。