一代で創り上げたイタリア幻のワイン「ミアーニ」

ミアーニの名前は広く知られていますが、実際口にしたことがある人は多くはなく、イタリアワインの中でカルト的な存在として有名であり、地元フリウリでも容易に手にすることはできない幻のワインのひとつとして知られています。一代でこのワインを造り上げた醸造家のエンツォ ポントーニ氏は、イタリアの生ける伝説といっても過言ではありません。

控えめで献身的にワイン造りに向かい合うエンツォポントーニ氏

1980年代にエンジニアとしてのキャリアを離れ、母方から受け継いだ畑にて独学でワインを造り始めて以来、エンツォは文字通り畑に生きています。元々は父と一緒にワイナリーの運営を行なってましたが、1990年代に入り、父の死をきっかけに本格的にワイン造りに没頭するようになります。エンツォ ポントーニ氏がオーナー兼ワインメーカー兼アグロノミストで雇われコンサルタントもいません。世界中でオファーが殺到する希少なミアーニは一見派手なイメージがありますが、エンツォ自身は非常に控えめな人物で、ワインフェアや試飲会には一切顔を見せず、黙々と畑仕事と自らのワイン造りに専念する寡黙な性格だそうです。洗うぐらいでは取れない泥が、割れた爪の中やひび割れた皮膚に入り込んだグローブのようなエンツォの大きな手が、献身的にワイン造りに向き合う姿勢を物語っています。

ブルゴーニュ特級ワインの5分の1以下の生産量！徹底した品質へのこだわり

現在、フリウリの「グランクリュ」と目されるコッリ オリエンターリ地区のブットリオとロザッツォの13haの畑ではメルロ、レフォスコ、タッツェレンゲ、カベルネ ソーヴィニョン、ピニョーロ、シャルドネ、 トカイ、ソーヴィニョン、リボッラ ジャッラが栽培されています。しかしながら、ミアーニの名を冠してリリースされるのは多くても年間12,000本のみ。同規模の畑でブルゴーニュ最高峰の特級ワイン「シャンベルタン」が約61000本の生産量ですから、通常では到底考えられないほど少ない生産量です。

50年を超える古木から産まれる極めて複雑で優雅なワイン

エンツォの「良いワインを造りたい」その一心から、徹底的な剪定とグリーン ハーべストによりフリウリで最低といわれるレベルまで収量を下げ、恐ろしい程厳しい選果で最高のブドウのみが醸造所に入ることが出来、さらにバレル セレクションにより、求める基準に達しないワインは瓶詰をしない徹底ぶりです。50年を超える古木から産まれるブドウの特徴はブドウの粒がとても小さい事です。小さい実ですが、その中に全ての旨みが凝縮され おり、テロワールに恵まれた畑から吸い上げた全ての養分を、小さな粒が全てを受け止めていて、出来あがるワインは極めて複雑で優雅なワインとなります。

ビオディナミ栽培による更なるテロワールの個性の表現

「年を重ねるごとに畑仕事にのめり込んでいった」というエンツォのブドウ栽培には本当に一切の妥協がありません。世間の評価や周囲の評判など気にかけず、畑仕事に没頭する中、ワインも徐々に変化しており、パワーだけでなくフィネスも求めたスタイルへと移行しています。また、更なるテロワールの個性の表現を目指し、十分な樹齢やクオリティに達した地所ではブドウをブレンドせず、個別に瓶詰めするようになっています。「ポンカ」と呼ばれる泥灰土に砂岩が混ざるフリウリを代表する土壌で無農薬ビオディナミ栽培が成されています。白はステンレスタンクでデブルバージュしてから樽で発酵。熟成期間は10～11ヶ月です。マロラクティック発酵の有無は品種によります。メルロは木製の開放桶でアルコール発酵後、バリックでマロラクティック発酵と熟成を行います。

途方も無い凝縮感と驚くべき透明感をもつミアーニのワイン

ワイン造りにおいて「ブドウがワインのクオリティを決定する」とよく言われますが、ミアーニのワインほど、その言葉を実感させられるものはないと言われます。恐ろしいほどの低収量が生み出す途方もない凝縮感とエネルギーに圧倒され、同時に対照的な透明感と爽やかさに驚かされます。優れた畑を買い足し、新たなキュヴェをリリースするなど、世界的な名声を確立した今もエンツォポントーニ氏のワイン造りへの探求は終わることなく続いていくことでしょう。

『神の雫』1巻で登場したミアーニ ロッソ

ただでさえ入手困難なミアーニの中でも、ロッソはとりわけ入手困難です。漫画『神の雫』1巻においてワイン評論家遠峰一青が、西園寺社長に取り寄せさせたのがミアーニロッソで、「血のように濃厚で、凝縮感のあるワインを『サロメ』のよう」と表現しています。

「ミアーニの無い人生など、もはや考えられるはずもないのだ」

『ワイナート』13号では「ミアーニは飲まねばならない。簡単に買えないからと言って放棄するほどミアーニは半端な存在ではなく、またそれで諦める程度の情熱ならば、情けないではないか。ミアーニの無い人生など、もはや考えられるはずもないのだ」と絶賛しています。