ポール・ホブスは2013年のアメリカの経済紙フォーブスで『ワイン界のスティーヴ・ジョブス』と名付けられたアメリカワイン界のリーダー的

生産者の1人です。

ニューヨークの北部バッファローに果実農場を営む家に生まれたポール・ホブスのワインとの出会いは、16歳の時に父に飲ませてもらったシャトー　ディケム

でした。思い返せばその出会いが自分がワイン造りに携わるきっつかけになったのではと、ポール・ホブスは語っています。

11人兄弟の中で育ったポールの仕事熱心だった様子をみて、父はブドウ栽培の責任者にしたこともポールの原体験となっています。

その後ノートルダム大学に通っている際に初めて世界のワインを試飲し、そのことがワインの醸造家となるポールの心に火をつけました。

1975年UCデイヴィス醸造学科の修士コースに入学したポールは、その後オーク樽の熟成に付いてフレンチオークとアメリカンオークのワインに与える影響について

研究し論文を発表、当時のカリフォルニア・プレミアムワインコミュニティーの人々に注目を浴びました。

在学中にロバート・モンダヴィ・ワイナリーで働き始め、1978年には正社員として採用され79年には同ワイナリーの醸造家に昇進。その後オーパス ワン チームに配属され1981年には醸造のトップとなります。

その後ソノマのシミ・ワイナリーのワインメーカーとなり、ニューワールド産地への知見を広めた後、満を持して1991年にポール・ホブス・ワイナリーを設立。

1999年には、アンドレア・マルキオリとルイス・バロードとパートナーシップを組んで、アルゼンチンはメンドーサにヴィーニャ・コボス・ワイナリーを設立。同年コボス・マルベックが国際的なコミュニティーの注目を引き、その後もヴィーニャ・コボスをワールドクラスのワインの座に引き上げました。

2000年にはクロスバーンブランドを立ち上げ、現在ソノマに醸造設備を建設、同年12月には、｢Connoisseurs' Guide to California Wine｣(カリフォルニアワイン目利きガイド）でワイン・メーカー・オブ・ザイヤーに選出。

2013年にはフォーブスで『The Steve Jobs of Wine』と評されるなど堂々たる地位を確立された生産者です。

2018年11月のポール・ホブス氏来日時のセミナーでは、40年のワイン造りの自身の歴史を振り返り、それはまさにカリフォルニアワイン黎明期からのお話しとなりましたが、

ロバートモンダヴィもまだ、品質の高いワイン造りについて手探りだったころ、フランスを回り、「フランスでは樽を使ってワイン醸造をしているよ」と言ってフランスから樽を取寄せ、試行錯誤してワイン醸造を試みた話。

オーパスワンの製造のため技術指導に来たフランス人の醸造家達に色々質問をしても、ワイン造りを芸術的なものとして捉え感性や感覚を重視している彼らと、論理的、科学的にワインを造りたいと考える自分たちの間に

大きな考えの違いあると感じたこと。アメリカワインの高品質化を懸念し、技術の共有に積極的ではなかった醸造家達の話など当時肌で感じていたことを回想しながら、

そうやって色々フランスから学び、真似ることから始まったアメリカでのワイン造りが、結局はすぐに、それではだめだということに気がついたこと。土地には土地の気候や土壌があり、独自のカルチャーがあること、それらをすべて理解したうえで、

ではどうやってワインを造るかは、試行錯誤しながら自分たちなりの物作りをしなくては極められないことなどをお話ししてくださいました。

ポール・ホブス氏はまた、ブドウの房ひとつひとつが隣の房に触れたりしないように栽培している話をしながら、「父親が日本に来た際ブドウ農家の栽培を見ていて『日本では大変な手をかけて房同士が触れないように栽培していたよ』という話に

ヒントを得てそうしたんだ」と語られ、特に茶道については、ワインとの共通性を指摘。「必要な成分を抽出するのによく考えられている。茶道は水だが、ワインは、最初は水分、後にアルコールで抽出するところがちょっと違うけどね」

とのこと、日本に定期的に来日することで、その文化からヒントを得られるんだと、特別に認識くださっている様子でした。