トスカーナ州北西部、標高1000メートルの広大な渓谷でナチュラルなワイン造りを実践する「マエスタ デッラ フォルミカ」。他では類を見ないブラウフレンキッシュ100％で造るトスカーナ ロッソ「サクリパンテ」です。ブラックベリーやカカオといったスパイスのニュアンス。タンニンが心地よく、非常にエレガントな味わいです。

エレガントな果実感が心地よいブラウフレンキッシュ100％赤

2025年7月、当主アンドレア エルミ氏にお話を聞きました。

「2021年は年産300本のブラウフレンキッシュ100％のワインです。2022年はカベルネソーヴィニヨンとネッビオーロを加え、年産600本に増えます。ブラウフレンキッシュは、ハンガリーを起源とし、オーストリアで有名になった品種ですよね。2022年ヴィンテージは高く評価され、ソムリエ協会で最高評価やスローフードのトップワインに選出されました。エチケットも『ヴィニタリー』でデザイン部門2位を受賞しました。

このエチケットの由来は、1521年に偉大な著述家ルドヴィコ・アリオストがこの地にやってきたことにあります。彼の代表作『オルランド・フリオーゾ』には、アンジェリカという女性を巡って多くの騎士が戦う物語があり、その中で勝者となったのがハンガリー出身のサクリパンテでした。この物語を讃える思いと、ハンガリー原産のブドウ品種ブラウフレンキッシュを用いたことを重ね合わせて、このワインのラベルが誕生したのです。」

2025年7月にサクリパンテ2021ヴィンテージを試飲しました。ルビー色。黒い果実を中心に爽やかさと、やや土のニュアンスを感じる香りです。味わいは繊細な芯のある果実感がエレガントに広がり、タンニンは存在感がありながらシルキーでしなやかです。心地よい果実味が持続します。

樹齢15-20年のビオディナミ栽培で育てたブラウフレンキッシュを使用

単一畑はガルファニャーナ地区カシオ村にある0.3haの規模。標高450mで南-南西向きにある、石の多い多様性豊かな土壌。山の影響を受けた地中海性気候。ブドウはビオディナミ栽培で育てた、樹齢15-20年のブラウフレンキッシュ100％を使用しています。1ヘクタールあたり30hlの低収量で10月中旬に収穫しています。

無清澄で無濾過、SO2は必要最小限で瓶詰め

果皮浸漬しながら18日間、16-24℃でタンクにて天然酵母で発酵。古樽で8ヶ月熟成。無清澄で無濾過、SO2の使用は最小限で瓶詰め。最低12ヶ月の瓶内熟成を経て出荷しています。

マエスタ デッラ フォルミカは、アンドレア・エルミ氏と、その友人マルコ・ラッファエッリ氏が2013年に設立した自然派ワイナリーです。拠点を構えるのは、トスカーナ北西部のアプアーネ山脈とアペニン山脈に挟まれた広大な渓谷。ピサ大学の醸造学専攻で知り合った二人が標高1000mの地で、自然に寄り添った自由な発想でワイン造りを行っています。

この地は、夏は昼夜の寒暖差が大きく、冬は積雪が多く、春は穏やかな晴天が続きます。昔から多様な品種が植えられており、トスカーナの土着品種だけでなく、シラーやガメイ、ブラウフレンキッシュといった品種までも栽培されてきました。当主アンドレア氏はこの地でどうしてもリースリングを育てたいと考え、モーゼルの名門「ゼルバッハ オスター」からリースリングの株を譲り受け、栽培を始めました。

自然に恵まれた素晴らしいテロワールを保つために、ビオディナミ農法を実践しICEA認証のオーガニック認証を取得。栽培と同様に、ワイン造りも最大限自然に近しい手法を実践しています。天然酵母による発酵、樽香をつけないようにタンクや古樽にて熟成、無清澄で無ろ過、SO2は最小限もしくは無添加。品種やブレンドなど自由な発想で醸造し、唯一無二のワインを造っています。