1975年モンタルチーノで初めてクリュの概念を導入した老舗「アルテジーノ」

「モンタルチーノにおける高品質ワインの歴史を造ったワイナリー」として語られるアルテジーノは1972年の創業以来、エレガントなスタイルを追求。このスタンダードなブルネッロは条件の異なるそれぞれのエリアのブドウを、出来具合や特徴に注意しながらブレンドし飲み心地の良い洗練された味わいが表現されています。

突出した優れたバランスのスタンダード ブルネッロ

2024年10月にアルテジーノの販売部長ミルコ ビリオルジ氏にお話を聞きました。

「2018年のブルネッロ ディ モンタルチーノは非常に親しみやすく飲み心地の良さがあります。ここまでの優れたバランスは、簡単に表現できるものではないと思います。各地の畑のサンジョヴェーゼで造っています。例えば、北の畑は温暖化が叫ばれていても、やはり冷涼でフレッシュで繊細でエレガントな味わいを与えることができます。そこに南の畑の個性も加わっています」

2024年10月にブルネッロ ディ モンタルチーノ2018ヴィンテージを試飲しました。ガーネット色。赤系果実、森の果実、なめし革を感じる複雑で奥行きのある香り。上品でソフトな口当たりで、心地よいタンニンも相まって赤系果実の風味に満たされます。飲み込んだ後もエレガントな余韻が続きます。

異なるそれぞれのエリアに畑を所有、化学的なものを一切使用せずに有機農法を実践

モンタルチーノは小高い丘の上にある町で、ブルネッロの生産エリアはその周辺に広がっています。なだらかな斜面地が東西南北へ続くモンタルチーノはその畑のある場所によって特徴、特に気候条件が異なります。南側は暖かくなる傾向のため凝縮感のあるタイプに、北側はエレガントなスタイルに。収穫時期も北と南では約10日間ほど違いが生じます。アルテジーノはこの条件の異なるそれぞれのエリアに畑を所有、化学的なものを一切使用せずに有機農法を実践しています。ここから毎年、ブドウの出来具合や特徴に注意しながらブレンドし、エレガントなスタイルのブルネッロに造り上げています。

複雑でしっかりとした香りとなめらかな口当たりのブルネッロ

ワイナリーの建物は1441年に建てられた貴族の邸宅で、モンタルチーノ北部のアルテジーノにあります。畑はワイナリーの周囲のアルテジーノとマチーナとモントソーリ、南部のカステルヌオーヴォ デッラバテのヴェローナとピアネッツィーネの5つ。そのうち、モントソーリだけ土壌の特徴が異なるためクリュブルネッロにし、残りの畑からヴィンテージに適した比率を考えてブレンドし、スタンダードブルネッロにしています。だいたいは60％が北部の畑のサンジョヴェーゼを、残り40％は南部の畑のサンジョヴェーゼを使っています。

収穫後、ステンレスタンクで発酵。熟成は5000～10000リットルの大樽で熟成します。大樽のみを使い、バリックは使用していません。果実味やハーブ、スパイスなどのニュアンスのある複雑でしっかりとした強い香り。とてもなめらかな口当たりでタンニンは甘くこなれ、不思議なほどにスムーズに喉をおちていきます。余韻には葉巻やドライフルーツのニュアンスも感じられる豊かさがあります。

ワインガイド評価

『ルカ ガルディーニ』96点（2018ヴィンテージ）

モンタルチーノ北東部の原料のキレの良さをすべて強調した、アルテジーノのこのベーシックなバージョンも注目に値する。イチゴの木の香り、ミントとジュニパーのタッチ。口に含むとバルサミコの香りが戻り、柑橘系のフルーツとオレンジピール。持続性がある。

『ジェームズサックリング』95点（2018ヴィンテージ）

凝縮したヘーゼルナッツ、チョコレート、ダークベリーのアロマに加え、ドライフラワーやドライオレンジのニュアンスもある。しっかりとしたミディアムからフルボディーで、力強いが溶け込んだタンニンを持つ。素晴らしいストラクチャーを持つ。2024年に試してみよう。（2022年12月）

アルテジーノは1414年からの農場を1970年にミラノの企業家であるジュリオ コンソンノが購入し、ワイン造りのみのカンティーナとなったことに始まります。1972年に初めてのブルネッロを瓶詰め、1970年代から90年代に徐々に現在の畑を取得し、2001年に氏が亡くなるまで拡大を続けました。その後、イタリアの有名な薬局会社「アンジェリニカ」を経営していたエリザベッタ ニュディ アンジェリーニが、所有していた薬局会社を売却し、ワインビジネスに着手、アルテジーノを取得しました。彼女は、これまで造り上げてきたアルテジーノの考え方を踏襲し、事業は継承されました。彼女はアルテジーノ以外にもモンタルチーノのカパルツォ、キャンティクラシコのボルゴスコペート、スカンサーノのラ ドーガ デッレ クラヴーレも所有、運営していますが、アルテジーノに関してはワイン造りに関するすべてを設立当時からの責任者であるクラウディオ バッスラに任せています。

クラウディオ バッスラの下、特にブドウ畑の改革に取り組み、現在所有する80ヘクタールの土地のうち44ヘクタールがブドウ畑（うち25ヘクタールがブルネッロ）で、化学的な農薬を一切使用せずにブドウを栽培しています。現在まだオーガニック認定は取得していません。というのも、緊急時に備えて万が一の際に農薬を使わなくてはならないような状況がある場合に備えてまだ、認定の取得を留保しているような状況のためです。

モンタルチーノは小高い丘を中心として東西南北に斜面を持つ地形ですが、アルテジーノの畑は、モンタルチーノの東西南北それぞれの斜面にモントソリ（5ha）、アルテジーノ(15ha）、マチナ(8ha)、ピアネッツィーネ(7ha)、ヴェローナ(9ha)の5つの畑を所有しています。モントソリの畑は最も標高の高い450メートルにあり、土壌はガレストロ（泥灰岩）で、クリュブルネッロ「モントソリ」を造っています。他の畑からのワインは最終的にブレンドされ通常のブルネッロが造られます。モンタルチーノの北側と南側では天候もことなり、南側は気温が高いため、結果収穫も南は北に比べて10日ほど早い収穫となります。南側はストラクチャーがしっかりとしていて、凝縮感があり、北側はエレガントなスタイルといった傾向があります。エノロゴは設立時から勤めていたピエトロ ディベッラ氏が引退後、2006年からパオロ カチョルーニア氏が務めています。パオロは、就任後大樽を取り換えたり、スキンコンタクトの時間を短くするなどの変更を行い、この年から香りがクリーンな感じに変化しています。

アルテジーノは、サンジョヴェーゼ種のワイン造りではモンタルチーノ地方でのリーダー的存在で、評論家のマット クレイマー氏にも「真に検討に値するブルネッロ」と高く評価され、ブルネッロ ディ モンタルチーノの優れた造り手として名を馳せています。また、15世紀に建設されたパラッツォ アルテージ宮殿を所有するなど歴史のある土地にありながら様々な革新を成し遂げてきました。1975年に“クリュ（＝単一畑）”の概念を世界で初めて使用し、1975年にブルネッロとしては最初の単一畑産ワイン「モントソーリ」をリリース。

1977年には、「ブルネッロ・ディ・グラッパ」を造った最初の生産者のひとつとなり、1979年には、当時他のイタリアワイン産地でもほとんど使用されていなかったフレンチオーク樽の使用を開始するなど、数々の新しい取り組みに意欲的に取り組んでいます。